防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

駐車違反放置や模擬刀の携帯ストラップで逮捕もありえるぞ

多くの子供と同じようにプラモデルが好きだった。どちらかと言えば、作ることより、なるべくたくさん集めることが目的だった気がする。コレクター体質なんだろう。中学に入るころには、ナイフやモデルガンなどの武器に強い興味を持ち、買い集めたコレクションを部屋の棚に飾るようになった。社会人になり、自分のお金を自由に使えるようになると、その趣味にさらに拍車がかかっていく。

ミニチュア模型にはまりだし、フィギュアや武器などの区別なく、自分がカッコイイと思うデザインのミニチュアものを見つけると、手当たり次第に購入した。全種類をコンプリートしたくて、箱ごと買うなんてこともしばしばだった。そのせいで俺の部屋はカオスな空間になったが、初めて部屋に来た友人たちが必ずと言っていいほど驚いてくれるのがうれしかった。

30代になってすぐ、ネットで面白そうなアイテムを見つけた。のこぎりやナタ、刀などの刃物を型どった、かなり精工な作りの携帯ストラップだ。カッコイイじゃん。一発で気に入った俺は、すぐさま3種類全てを注文した。携帯ストラップに魅かれたのは初めてのことだった。届いた商品を携帯に付けて、友達たちに自慢した。

「これすごいだろ。本当に切れんだぜ」
「そんなのぶら下げてたら危ないじゃん」
「大丈夫だって、ちゃんと鞘もあるし」
「邪魔じゃね?」
「ぜんぜん」 
普段からシルバーや数珠のようなアクセサリーをジャラジャラ身に付けて歩いているので、これぐらいかさばっても平気だ。そんなある日のこと、俺はいつものように新宿のバーに出勤するため、往来を歩いていた。
「すみませーん、ちょっといいですか?」
2人組の警官に声をかけられた。
「すみませんけど、荷物みせてもらってもいいですかね?」
「はいはい、どうぞどうぞ」
素直にカバンを開き、ポケットから財布と携帯を取り出して手渡した。
「何だこれ。ダメだよこんなの持ってたら」
「え?」 
警官が買ったばかりの携帯ストラップをつまんでいた。
「いやいや、それストラップですから」
「ストラップでもなんでも、この大きさだと銃刀法違反だよ」
数センチにも満たないのに?こんなのカッターナイフよりも短いだろうが。
「だっておまわりさん、携帯ストラップですよ」
「言いたいことはわかるけど、ダメなものはダメなんだよ」
「いやいや、ちょっと待って…」「はいはい、じゃ、詳しい話は署で聞きますから」何を言っても聞き入れてくれず、パトカーで近くの警察署まで連行されてしまった。取調べ室では、3人に囲まれた。
「このノコギリね、なんでダメかっていうと、刃渡りが5・5センチ以上で…」
なんでそのストラップが違法なのか、優しそうな顔をした警官に長々と説明された。数年前に銃刀法が改正され、とにかく小さい刃物でも正当な理由なく持ち歩くと違反になるんだとかなんとか。知るか、そんなこと。
「放棄してくれたらいいことにするから。申し訳ないんだけど、没収させてもらいます」
「ええ?結構高かったんですよこれ。弁償してくださいよ」
「残念だけどあきらめて。今回は注意ってことで終わるから。本当は逮捕されてもおかしくないんだよ」逮捕もありえると聞き、二の句を継げなかった。
 
京都というところは車での移動に不向きな町だ。細い路地や一方通行ばかりで、駐車場が少ないわりに違法駐車には厳しい。だから20代のころから、どこへ行くにもスクーターを足代わりに使ってきた。
毎日の通勤はもちろん、近所のコンビニに行くときもスクーターだ。車体が小さいので手軽に乗れるし、自転車が置けるスペースさえあれば、どこにでも駐車できる。短い時間なら、店の前の道路に停めても切符を切られたことはないし、歩道の上だとしても、自転車の横に停めておけば、咎められることはない。運転も真面目な方なので、飲酒運転はもちろんスピード違反もほとんどせず、免許証はずっとゴールドのままだった。
昨年の春。近所のレンタルビデオ屋にDVDを借りに行った。その店舗はマンションの一階にあり、目の前の歩道にはいつも利用者の自転車や小さなバイクが停めてあるのだが、その日はいつもより客が多いのか、一番端っこのわずかな隙間しかスペースがなかった。
仕方なく、隣の敷地に少しはみ出すかたちでバイクを停めて店内へ。十数分後、バイクに戻ると、駐禁切符がハンドルに貼られていた。くそっ、やられた!生まれて初めての駐車違反だ。監視員が目ざとく見つけたらしい。
せっかくのゴールド免許がこれでパーか。ハンドルに貼られた切符は、すぐにクルクル丸めてポイ捨てした。こんな罰金、ほっといてもどうってことないだろう。何週間か過ぎ、自宅に封筒が届いた。「放置違反金納付書」と書いてある。罰金を払うための用紙だ。めんどくさい、たかが9千円程度、無視しておこう。それから半年が過ぎたある日のこと。携帯に見知らぬ番号から電話がかかってきた。末尾が110ってことは、ひょっとして…。
「山科警察署の交通課の者です。秋山さんいらっしゃいます?」
「はい、僕ですけど」
「覚えとるかな。●●(住所)なんだけど、そこに二輪のスクーターを停めたのが駐車禁止になってんねんけども。これ、出頭してもらえる?」
9千円のためにわざわざ出頭すんのかよ!こんなことなら払い込んでおけばよかった。あ〜めんどくせー。2日後、山科署へ赴いた。
「秋山です。交通課の方から電話もろうたんですけど」
「ちょっと、ここで待っててもらえますか」 
係の人に案内され、取調室みたいな部屋に通された。しばらく待っていると、おまわりさん2人が登場し、違反切符の控えを出してきた。
「これ覚えてる?」
「はい、覚えてます」
「まだ払われてへんからね」
「はい、ドタバタしてちょっと忘れてたんですよ」
「ああ、そうかー。しゃあないなー。で、悪いけど秋山君、逮捕するから」
「え!?」
「いま9時13分な」
「いや、ちょっと待ってください」 
ガチャ。金属製の黒い手錠を両腕にはめられ、腰ヒモもつけられた。
「なんで逮捕なんですか?」
「うん、払ってないから、仕方ないねん」 
部屋の外に出ると、俺以外にも3人の男がいた。ヤンチャそうな若い男とオッサン、そして爺さんだ。4人でぞろぞろと指紋押印と写真撮影を終えて、取調室に戻る。そこで30分ほど待たされ、再び手錠をはめられて護送車に乗り込んだ。まさかバイクの駐禁でこんなことになるなんて。簡易裁判所に腰ヒモと手錠姿でゾロゾロ入っていくと、事務手続きしていた他の客たちが我々の方を見てぎょっとしていた。たぶん、重犯罪者だと思われたのだろう。
「駐車違反ですね。覚えてますね。今日お金もってきてますか?今から支払ってもらえないと泊まってもらうことになりますから」
俺はなんとか手持ちの金で払ったが、酒気帯び運転で30万以上の罰金を食らった爺さんは、そんな金を持ってるわけもなく、呆然と立ちつくしていた。