防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

女子中学生に売春させていた援デリ業者が捕まる

三沢(仮名48才) は典型的な駄目オヤジだ。定職も持たず、毎日プラプラと歌舞伎町界隈でクダを巻いていた。
転機を迎えたのは2 年前の夏。飲み屋で知り合った高橋と名乗るアヤしい男との会話が三沢の運命を変えた。
「いまどんな仕事してんの?」
「いやあ、恥ずかしいんだけど何もしてないんだよ。なんかいい仕事ない? 金もなくなってきちゃってヤバいんだよ」
「そうだなあ、手っ取り早く援デリなんてどう?元手もかかんないし、かなり稼げるみたいよ」
「援デリ?何それ」
「聞いたことない?要はエンコー女を集めて客に紹介するんだ。で、金は折半。女にとっちゃ自分で客を探す手間が省けるし、危ない目に遭う可能性も少なくなる。その気になりゃ女とヤレるし最高だろ?」
「デリヘルを経営するわけ?なんか大変そうだなあ」
「そんな大仰なもんじゃないよ。必要なの携帯だけだしさ」
「へ—。でもさ、どうやって女とか客を集めるわけ?」
「ったくしよ一がねえなあ。大サービスで教えてやるよ。いろいろやり方はあるんだけど、まず女はさ…」
違法性プンプンのヤバい話だったが、背に腹はかえられない。三沢は高橋から詳しいレクチャ—を受けると、意を決して準備に取り掛かった。
まずはネットなどで複数の身元不明のトバシ携帯を入手。次に自己紹介ペ—ジ作成サイトプロフに女性名でニセ登録し、こんな文言を織り込んだ。
女の子限定でお仕事を紹介しています。年齢は問いません。女性を装ったのは警戒心を解くためだ。掲示板にも同様の書き込みをし、反応を待つ。

と、どうだろう、続々とメ—ルが来るではないか。もちろん仕事がエンコーであることを明かすと大半は逃げていったが、興味津々の女性も少なからずいる。高橋のアドバイス通り、渋る相手には2、3力月もすると着る物も変わってくるよと返信すれば、驚くほど簡単になびいた。
客が取れそうな若いコを選んで確保した後は客探し。これもいたって単純だ。出会い系サィトに女性のフリをして

新宿で会える人募集

などと書き込むだけで、驚くほどメールが返ってくる。男性客が指定した時間に都合のつく女をブッキングして,仕事をさせその後で女と落ち合い金を受け取れば一丁上がりだ。いざやってみれば、面白いほど簡単にコトが運んだ。

三沢は途中から、歌舞伎町で知り合った小山田( 仮名23才) と、家出中にプロフを見て応募してきたミサ20才を仲間に引き入れ、女の送迎やサイトへの書き込みなどを3人で分担するようになった。
久しぶりに恩人の高橋と酒を酌み交わしたときも、三沢はすこぶる上機嫌だったという。
「いやあ高橋さん、アンタ天才だよ。こんなに簡単に稼げるとは思わなかったわ。今日はオゴらせてもらうよ」
「いいっていいって。別に俺が考えたやり方じやねえしな。こういうのは目先の利く人間がとっくにやってんだ。アンタも稼げるうちにどんどん稼いだ方がいいぜ。もし女が足りなくなったら、知り合いのスカウトあたりから調達してやるよ」
「何から何までありがたいわ。高橋さんもやればいいのに」
「オレは他にいろんなシノギがあるから大丈夫だって。肝心なのは、くれぐれもサツには注意することだよ。とにかく目立たないようにするのが一番だからな」
高橋のせっかくの忠告も、三沢の耳には入らなかった。さほど商売は順調に続き、スタ—卜した夏からの約1 年間だけでなんと3360万円ほどを売上げている。
客の料金は1 回2、3万で、女との取り分は5対5にしていたから純利益はおよそ1700万円。駄目オヤジから一気にセレブの仲間入りである。ブランド品で身を固め、我が世の春を謳歌した。だが、幸運はそう長くは続かなかった。
9月12日のことだ。三沢は新宿の喫茶店で仕事を終えた力オル(14才) や手伝いの小山田と落ち合い、労をねぎらっていた。
「お疲れだったね。今日はどぅだった?」
「チョ—きめえの。なんかクンクン匂いかいできたり、すつげえしつこく舐めてきたりさ。1 回だけって約束なのに『もう1 回やらせろ』とか言うヤツもいたし。マジむかつくよ、ああいうオヤジ」
「そうかそうか、そりや大変だったな。はい、んじゃ今日の給料な」
「あんがと。次は若い人にしてよ」
やがて三沢は「用事がある」と先に席を立ち、残つた2 人もしばらくダべった後に店を出た。そのときだつた。
「ねえ、ちょっと話を聞かせてもらっていいかな?」
「は?」
「こういう者だ」と、男は警察手帳を示した。新宿署の刑事だった。
「その店のお客さんから、『援助交際の会話をしている男女がいる』っていう通報があったんだ。キミ、中学生だろ?この人とエンコ—してたの?」
「ちがうよ、そういうんじやないしい…」
「なんかの間違いじやないっすか」
「こんなホテル街のそばでウロついてりゃ不審だわな。まあいい、とりあえず署まで来てもらえないかな」
絶体絶命である。やはり人目に付いてはダメなのだ。2 人は口裏を合わせる余裕もなく、別々の部屋でたっぷりと事情を聴かれることになった。
カオルは最初シラを切っていたが、百戦錬磨の刑事にかなぅはずもない。渋々エンコ—していたことを認め、三沢や小山田のことも話してしまった。

一方の小山田は、「カオルはただの知り合い」と押し通し、その日は解放された。小山田から報告を受けた三沢も「カオルはヤバいかもしれないけど、オレらは平気だろ」とノンキに構えていた。トバシ携帯を使っているからアシは付きにくいし、斡旋しているだけだから罪に問われることもないだろうと考えたのである。
だが、やはり世の中は甘くない。
警視庁は三沢や小山田が援デリを運営していたとにらみ、本部の少年育成課を投入して内偵に乗り出した。カオルのエンコー事案を詰める一方、カオルや小山田の携帯電話の履歴を丹念にたどり、関係者の任意聴取でゴリゴリと詰めては全容解明を急いだ。
そして児童福祉法違反( 淫行) と売春防止法違反の疑いで小山田を逮捕に持ち込む。淫行は実行行為者だけでなく、させた方も罪に問われるのだ。
小山田の供述で裏を固めた警視庁は三沢と配下のミサの逮捕に踏み切った。組織解体である。三沢は逮捕前日までしぶとく商売を続けていたといぅから執念深い。
三沢の携帯を分析した結果、援デリに所属していたのは4 0人以上と判明。しかも、ほとんどが1 6〜1 8才の少女たちで、中には1 5日間で2 5人を相手にし、3 5万6千円のギャラを得た1 6才の女子高生もいたというから驚きだ。
いまや堂々たるメジャーフーゾクの援デリだが、それだけに警察当局のマ—クは厳しい。2 月には運営していた大学1 年生が神奈川県警に逮捕され、3月には別の援デリ運営で風俗店員が同県警にパクられている。今後も「出る杭」として狙われ続けることだろぅ。
ちなみに、昨年夏に大阪府警に逮捕された援デリ運営男は「出会い系サィトの女性の書き込みの大半は援デリ業者」と供述していたといぅから、利用者は「シロー卜が釣れた」と喜んでいる場合ではなさそうである。