防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

警備会社の営業課長の横流し丸投げお小遣い稼ぎ

中堅の警備会社に勤めて16年になる。肩書きは「営業課長」ながら、年収は税込みでわずか四〇〇万。家賃12万のマンションに家族三人を養っていれば、生活はかなり苦しい。月2万の小遺いでも感謝したいぐらいだ。しかし、人間いつ転機が訪れるかわからない。私の場合それは昨年春デスクにかかってきた一本の電話がきっかけになった。

水島真之介(仮名)40才中部地方在住の警備会社社員
「あーどうもどうも。●●製紙です。実は今回、工場に特殊な機械を入れることになりまして。一〇日後から二週間、臨時警備をお願いしたいんですけど二〇人ほど都合つけてもらえます?」

思わずため息が漏れた。なんせ相手は三〇人も掃除のオバチャンを派遣している大得意。引き受けたいのは山々だがそんな短期間で二〇人もの人間を集めるのは不可能だ。しかし体面上、すぐに断るのはマズイ。とりあえず「検討します」と返事を保留した。なんて断ろうか。その晩チビチビ寝酒を畷りながら考えていたらふと邪悪な『絵』が浮かんできた。会社に内緒で●●製紙の仕事を請け負ったらどうだろう。

仕事を黙って受けても社内の連中に勘づかれる恐れはない。次にこれを他社に丸投げする。経営不振の▲▲警備なら三〇〇万円程度で喜んで引き受けるはずだし融通も利く。私には差額の四〇〇万円が残るという寸法だ。実際の現場ではウチの警備服を着せればいいだろう。この忙しい最中なら社の倉庫から制服をパクるのも容易のはず。イケるんじゃないか。興奮気味に手を叩いたところでちょっと待てよと思い直す。金の回収方法はどうすんだ。会社の口座に振り込まれたら(月末締めの翌月払い)手も足も出ないじゃないか。いや掃除のオバチャンと違って臨時警備員の場合給料は日払い。現金の立て替えはムリと小切手を要求すれば向こうも嫌とは言えないのではなかろうか。

値段は七〇〇万円てとこか。業務の流れから丸一晩考え覚悟を決めた私は翌日▲▲警備に三五〇万円で話をつけた後(三〇〇万で話をフッたが足下を見られた)、その足で●●製紙へと向かった。

「お待ちしておりました。どうぞこちらへ」

「は、はい」

《総務課長》の案内で応接室へ通される。緊張で喉がカラカラだ。

「先日のお話なんですがぜひ当社でやらせていただきたいと思いまして」

「本当ですか。いやあ、おたくが引き受けてくださるなら安心ですわ」

話はトントン拍子で進んだ。八〇〇万円と高めに設定した見積書にも、突っ込んでくる気配はない。しかし支払い方法の件に話が及ぶと相手の顔色がにわかに曇った。

「いやあ、おっしゃることはよくわかるんですけど…この不景気でしょ。ウチとしても小切手っていうのはねえ」

なるほど。そうきたか。

「わかりました。では七八〇ってことでいかがです?」「うーん」

「七六〇万。いや、七五〇万でどうでしょう」

総務課長が「かないませんなあ」と苦笑いを浮かべた瞬間、勝負は決まった。稼いだ四〇〇万は半年程でキャバクラに消えた。いま私は二度目のカケに出るかどうか真剣に悩んでいる。