他人の名前で精算のシステムを悪用し、タダで沖縄旅行を楽しむ夫婦
私の知人に、毎年、夏に必ず沖縄旅行に行くTという夫婦がいる。エア代を含めた料金は、アジア1高いとまでいわれるほどの沖縄リゾートだ。コツコツ金を貯め嫁を旅行に連れていくとは殊勝な心がけ、と常々感心していたのだが、先日、Tと酒を飲んだ折、驚きの事実が発覚した。
なんと、その沖縄旅行、費用は航空チケットを除き一切かかってないというのだ。
「ポイントはいくつかあるんだけど、まずはホテルの料金を後払いにさせることだな」リゾートホテルと名が付く場所なら、予約客にデポジット(預かり保証金)を求めないが、直前予約の客だけには請求してくる可能性がある。
宿泊予定日の3カ月も前から予約を入れておけばほぼ間違いなく後払いになるらしい。ちなみに、T夫妻、当然のように偽名を使い、連絡用には身元不明のプリ携まで用意しているとか。
「ホテルにチェックインしたら、すぐにロビーで、適当な家族連れを物色するんだ」
目的は他でもない。一般的なリゾートホテルは、客の名前と部屋番号で食事や買い物ができる部屋付けシステムを採用している。そこで泊まり客の中から、自分たちの身代わりになる家族連れを探し、その名前で施設内のレストランや土産屋を利用、客が清算する前にトンズラするというのだ。
が、どうやって他家族の名前や部屋番号を聞き出すのか。Tは言う。狙いは、家族連れの子供。口ビーから一緒にエレべータに乗り込み話しかけるのだ。
『ボク、かわいいね、いくつかなっ』
『5才』『お名前はっ』
『ヤマダタロウー』『元気だねー。太郎君は何泊するのっ』
『ハハ、3泊なんですよ」
最後は、たいてい横にいる両親が答えてくれるらしい。結果、相手が、自分たちの滞在期限の翌日以降まで宿泊することがわかれば、ターゲットに決定。工レべータを一緒に降り、何げに部屋の番号を確認する。
ちなみに、方法としては、荷物に付いたタグで名前をチェックしたり、まれにベルボーイが持っている鍵で部屋番号を確認することもあるという。こうして、T夫妻は寿司屋やステーキハウスで食べ放題、土産物屋でも名産品や高価なアクセサリーを買い漁る。精算の際は、相手の名前と部屋番号を記入するだけだ。
しかし、さほど簡単にいくものなのか。精算時、漢字でフルネームを書く必要はないのか。ならば、それをどうやって知る
またホテルによっては、部屋の鍵を提示して初めて、部屋付が有効になるところもあるのでは
「沖縄のホテルで俺たちが泊まったホテルに限って言えば、サインはぜんぶローマ字でOKだね。鍵だって、見せろなんて言われたことがないよ」
脱出に関しては、相手がチェックアウト予定の前日までに、サンダル姿で軽く外出を装い、そのまま抜け出す。荷物は、それまでに何度かに分け空港のロッ力ーに運び出しているらしい。聞くだにあきれる、大胆な犯行。私の警告も無視し、Tは今年も沖縄ヘリゾートへ繰り出す。