防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

開き直って借金返さなかったらどうなった

わずか10万円が数百万に

20才のときにレイクでわずか10万円を借りたのが、すべての始まりだった

社会人2年目の遊びたい盛り。最初はちょっとした小遺い程度につまんだつもりが、返済と借入を繰り返すっちにいつしか枠が広がり、変な意識が芽生えてしまう。目一杯借りなきゃ損だ。自分には借りる権利があるんだから

まったくおめでたい思考回路だが、これ、この世界に足を踏み入れた者に共通して見られる現象らしい。すぐに限度額一杯まで借り尽くした僕は、お次は「アコム」と次々足を運び、1年と経たぬうち目ぽしい業者すべてのお世話になっていた。

債務額およそ300万。こうなると、手取り15万そこそこの給料では、毎月の返済日を乗り越えることすらままならない。地獄へのドロ沼、自転車操業の開始だ。どこか他に融資してくれるところはないかと、田舎からはるばる東京に出て、「日立信」「三和ファイナンス」といった中堅業者の門まで叩き始める。もはやこの時点では自分がいくら借りているのか計算するのも面倒くさくなりただただ次の返済日までに金策に走る日々。元来、サラ金業者の定める月々の返済額には、利息プラス元金が含まれているが、当時は利息分だけ返すのがやっとこさだった。

それでも僕の偉いところは、真面目に返済し続けた点だろう。いや、裏を返せば、だからこそ悪循環に巻き込まれていったのだとも言える。ちゃらんぽらんな性格なら、返済のために新たな借金を作るなんて律儀な真似はしなかったはずだ。

突然イヤ気が差した。今やどの会社だったかも思い出せないが、あるサラ金の返済日に金を作れなかったことで、僕の中の何かが壊れたのだ。(ああ、もうジャマくさい。やめたやめた、もう返すのやーめた)どうせ今のまま利息だけ返済し続けたところで完済は永遠に無理。

まったく返済しなくても、完済は不可能。どうせ同じ結果なら、1円も返さないほうがいいんじゃないのか?実に好都合な理屈をこねた僕は、その日以来、借金のことを一切忘れて生活することに決めた。もうこんな人生やっとれん。サラ金社員の給料のためにせっせと金策に走るなんて、そんなバカげた話あるかよ。もちろん返済予定日の翌日には、勤務先にしっかり督促電話がかかってきた。

「あ、山本様ですか。こちら〇〇の××支店ですが・・」

「はいはい」

「ご入金の方が遅れてまして・・」

「ごめん。ちょっと忙しいから、またかけ直して」

「何時頃がよろしいでしょうか」

「いや、わからないけど。そんじゃね」
この際、のらりくらり生返事を繰り返すしか策はない。幸い、借金程度でコソコソすべき社風じゃないので、何度かけてもらおうがこっちは平気だ。他の業者も返済予定日の翌日、あるいは2、3日後に、職場に同じような電話をかけてきたが、すべて暖味な返答でうっちゃるしかない。

こちらが忙しいと答えれば、無理強いはしてこないものだ。勤務中では相手にされないと考えたのか、同時期、自宅にも連絡が入り始めた。僕は両親と同居しており、電話には母親が出ることが多い。そこでとりあえず家族には、個人名で僕宛にかかってきた電話に対しては、

「いないし、いつ戻ってくるかもわからない」と応答するよう依頼した。保証人でもない家族に「返せ」とはさすがに言ってこないだろう。また、うっかり僕が出た場合は、義理の弟を装って撃退することに。
「裕さんですか?」「いえ親戚の者ですけど」

「あ、裕さんはいらっしゃいますか」

「おりませんけど」

「いつごろお戻りでしょうか」

「わからんけど、何の御用で?」

「いえ、またかけ直します」

簡単なものだ。

彼ら彼女らが電話をかけてくる時間は、サラ金規制法の範囲内。早朝や深夜に起こされることはないので、それほど苦にはならなかった。休日にリンリンうるさいときはモジュラーを引っこ抜くだけだ。

遅延金額はどんどん上がるが電話連絡をうっちゃり続けることひと月ほどで、今度は各社から「通告書」という名の督促状が自宅に届き始めた。

このままの状況が続きますと、ご返済が難しくなります。放っておくと、どんどん利息が増えるから今よりもっと困ることになりますよ、返済してくださいね。

なるほど、おっしゃるとおりだし、そう言われれば一刻も早くキレイな体になりたいとあせるのが人情というのだろう。しかしこんな段階で引き返すなんて、考えるだけでもバカパカしい。いまさらコツコッ返済なんてできるわけがない。もはや借金は利息でたっぷり膨らんでいるのだから。完全無視だ。
定期的に届く督促状にはときにこんな脅し文句も含まれていた。法的手段に訴えます法的、法的…。よくわからんが、何かスゴク厄介なことに巻き込まれそうな雰囲気ではある。が、これも無視するしかない。金がないんだから、ジタバタしようがないじゃないか。こうして僕の机には、ろくすっぽ読まれることのないハガキが山のように積まれることとなった。

律儀にも、各社とも「遅延金」の額が毎回数万単位で上がっていくのがおかしかった。払えないんだから、上げるんじゃなくて下げるべきだろうに。
取り立て屋は紳士的な男ばかり
思うに、このゼロ金利時代に暴利のサラ金業界が好調なのは「家に怖い人が来たらどうしよう」と、債務者が必要以上に恐れてしまうからだろう。僕もそうだった。電話や督促状をうっちゃるのは簡単だが、正念場はここからのはずと、覚悟を決めていた。ところがこれが開き直ってしまえば、何も恐れることはないのだった。いくら相手が強面の屈強そうな男だとしても、払えないものは払えないのだから。殴られようが刺されようが、金はないのだ。自宅に最初にやってきたのはスーツ姿の折り目正しい男だった。強面、屈強どころか、むしろ一般のセールスマンよりも腰が低い。

「山本様、お支払いの方なんですが・・」

「いや、言われても、ぜんぜんお金ないしねえ」

「返済のご計画だけでも、お聞かせいただけないでしょうか」

「計画も何も、金がないんだもん」

「はあ・・」
時間にしてわずか3分。しつこく食い下がるでも、わめくでもなく、男はおとなしく帰って行った。たったこれだけで終了だ。
招かざる訪問者は、僕の記憶にある限り3業者3人。みんな「取り立て屋」のイメージからは程遠い紳士的な男ばかりだった。
財布の中身を覗いてくるでも、ドカドカ上がって金目の物を物色するでもなく、玄関口でボソボソしゃべって帰るだけ。僕が不在のときに来た男も、親が

「今は留守なので出直してください」

と対応すれば、すごすご退散したらしい。ちなみに、親に対し電話では個人名を名乗っていた彼らも、この段階では社名を告げ、サラ金の督促だとはっきり口にしたようだ。今後、僕と同じ方法を試そうと考える人も、親バレは覚悟すべきだろう(職場には個人名電話しかかかってきていない)。
「現在2社から借りてますね」
会社に電話をすれば「忙しい」と受話器を置かれ、家にかけるといつも釜仕。訪問しても、金はないと開き直られる。そんな調子に業を煮やしたか、業者も攻め方を変更してくるように
なった。たとえば電話に関しては、義理の弟を名乗る僕に、こんな小細エを仕掛けてくる。

「中学の同級生なんですけど、クラス会のことで連絡を取りたいので」

「同僚でよく一緒に食事したんですけど、今どこにいるんですか?」

社名は名乗らないのでどこの者かは不明だが、ときには男、ときには女が、なんとかして連絡を取ろうと姑息なマネをしかけてくる。払え払え一辺倒の督促が、「分割や低利などの相談にも乗る」と、和解案での懐柔に変わっていったのも、揃った対応だった。例えば50万円の借金が現在利息を含め70万に膨れ上がっているとすれば、せめて50万円分だけでも1万円×50回払いで支払ってくれないかという、一種の歩み寄りだ。どの業者の提案も、少し無理をすれば飲めないこともないものばかりだったが、僕にはその「少し無理をする」ことすら苦痛でしょうがなかった。このままチンタラと督促をかわし続け、向こうがあきらめるのを待つ。それしか道はないのだ。
支払いをストップしてから、今年で4年目に突入する。あれだけしつこかった電話攻撃もすっかりやみ、今現在も督促を続けてくるのはわずか2社のみだ(今後のこともあるので社名は伏せておく)。

法的手段に訴えたところもないらしく、裁判所からの通知など1通も来ない。給与の差し押さえ?強制執行?まったくなーんにもなし。これは、もう敵があきらめたと考えていいのか。それとも間を置いて、また追いかけてくるのか。気になって、最近あるサラ金で借金できるかどうか試してみたことがある。結果はバツ。やはりブラックリストに載ってしまったことは間違いないようだ。ま、しょうがないだろう。しかし僕は担当者のこの台詞を聞き逃さなかった。

「現在2社から借りていらっしゃいますね」

2社つまり、2社にしかないのだ。