防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

示談するしかない状況に!あえて警察を介入させる当たり屋の手口にご注意を

俺は当たり屋でメシを食ってきた。刑務所の中で知り合った男から、これまでにない斬新な手口を教えてもらい、出所後、忠実にそいつを実践していたのだ。
 すでに当たり屋稼業から足を洗った今、手口を公開することにためらいはない。むしろ防犯知識として皆さんのお役に立つなら幸いだ。
 本来、当たり屋という犯罪は、走っているクルマにわざと体を接触させ、その場でドライバーに慰謝料を要求するのが基本形だ。つまり、警察に介入する余地を与えず、スピーディーにコトを終えてしまうのがセオリーなのだ。しかし俺のやり方は逆に、警察を介入させる。具体的な流れはこうだ。犯行現場となるのは駐車場のあるコンビニで、そこの防犯カメラに映っているであろうクルマに狙いをつける。
 で、ターゲット車が動き出した直後に物陰から飛び出し、車体に軽く接触して転倒するのだが、この一連の動作で特に俺が気を遣っていたのは、クルマに体をぶつける直前の自身の行動だ。防犯カメラを常に意識して、自然な形で“不注意な歩行者”を演じる必要がある。いかにも当たり屋が犯罪のタイミングを計っているような素振りは命取りなのだ。
 うまく転倒した場合、ターゲットは当然、血相を変えてクルマを降りてくる。そして言うだろう。
「大丈夫ですか?」
 従来の当たり屋はここぞとばかりに負傷をアピールするが、俺はここでこう答える。
「あ、全然、たいしたことないんで」
 安心したターゲットが運転席
に戻ったら、立ち去る車両にこちらが声をかけているような仕草をしておく。
 お次はその場で110番で警察に連絡だ。
「今ひき逃げに遭いました。相手には『軽傷だから大丈夫』って言っておいたんですけど、すぐに念のため連絡先だけでも聞いておこうと思ったんですよ。でも声をかけたら、無視して逃げちゃって」
 さらに、
「あと、事故現場がコンビニの駐車場なので、たぶん、防犯カメラに相手のクルマが映っていると思います」
 おわかりだろうか。犯行直前、極力、自然な歩行者を演じていたのも、去り際のクルマに声をかける仕草をしたのも、すべては防犯カメラをこういう形で活用したいがためだったのだ。
 ひき逃げで通報すると警察はただちに動く。防犯カメラに映っていたナンバーからクルマの所有者を割り出し、早ければ当日、遅くとも2日後くらいには警察から「相手の所在が確認できた」と連絡が入る。
 ここで重要なのは2つ。
 ひとつはこの時点でターゲットが完全に容疑者の立場になっていること。被害者(俺)がひき逃げされたと言った以上、警察はそれを完全に信じる。痴漢の被害者の言い分を警察が信じ切り、加害者とされる人物を一方的に疑う構図と同じだ。ましてこの場合は防犯カメラの映像もある。去り際に被害者を無視して逃げ去ったと思うのは100%確実だ。
 次に、俺が加害者の運命を握っていることも大きい。ひき逃げ事故の場合、被害者が警察にケガの診断書を出してはじめて事件化されるが、示談が成立し、被害者が診断書を提出しなければ加害者はお咎めナシとなるのだ。
 ちなみに、加害者がひき逃げ事件で有罪となればダメージは計り知れない。被害者がごく軽傷の場合でも5年以下の懲役または50万円以下の罰金で、さらに免許も取り消しに(欠陥期間は3年)。
 この状況下で俺が警察にこう言ったらどうなるか。
「あまりコトを荒げたくないので、加害者の方には、もしそっちがその気なら示談に応じてあげるよと伝えてください」
 こんな寛大な処置を袖にするバカなどいない。みな尻尾を振って示談を求めてくるわけだ。そして、この先にある示談交渉の場でもたいていは俺が有利となる。
 なぜなら通常の示談交渉の場には必ず手練れの保険屋が出てくるが、診断書を出してない、つまり警察が事故と判断しないケースでは保険が適用されず、当事者同士が話し合うしかないからだ。
 ならば、こちらは相手の力量に応じてふっかけるカネの額を決めるまで。ちょっと面倒臭そうな相手なら10万ほどでちゃっちゃっと手を打つが、世間知らずのネーチャンや年寄りなら30万、40 万のカネをガンガン請求する。いずれにしろ、ターゲットにされた人間は、俺が警察を味方につけた時点で抗う術などないのだ。
 最後にこの当たり屋の手口から身を守る方法を。人身事故を起こしたら、相手の負傷程度に限らずただちに警察を呼ぶこと。ありきたりの答えで申し訳ないが、それが結局、当たり屋のすべての手口を無効化してくれるのだ。