防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

悪意なき苦情が元極道というだけの理由で恐喝未遂に

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謝罪を求めただけで会社はパー
いくら真面目なカタギになっても元極道の一言い分は聞いてもらえないなんて

私は、この投稿を拘置所の中で書いている。
警察の理不尽な捜査に、強い怒りと戸惑いを覚えながら。
恥をしのんで告白する。私はかつて、ヤクザだった。少年のころから地元では有名な問題児で、気がつけば、まるで当然のように極道の世界に足を踏み入れていた。この先もヤクザとして生きていく。

ぼんやりとだが、そんな風に自分の将来を考えていたように思う。しかし、傷害その他の罪で初めてムショに放り込まれたことがきっかけで、心境に大きな変化が訪れた。それまでの殺伐とした暮らしぶりに嫌気がさしたのだ。もう二度と刑務所になんか入れられたくない。今後は人様に迷惑をかけず、マジメに生きていこう。

その決意は3年後に迎えた出所日でも変わらず、私はムショの門を後にしたその足で
「おまえ、本気で極道から足を洗う気かっ」

除籍届けを差し出す私に、親分が鋭い眼光を放つ。

「はい、すみません」

「極道が力タギに戻るのは大変だぞ。ま、がんばれや」

言われなくても覚悟はできている。おれは人生をもう一度やり直すのだ。かくして晴れて力タギとなった私は、地元企業で営業マンの職を得た。仕事は太陽光を用いた給湯器やボイラーの訪問販売で、給与は完全歩合制。

必死になって働いたところ、入社ー力月目でトップクラスの成績を叩き出した。性に合っていたんだろう。仕事を通じ、太陽光エネルギーの急速な普及を肌で感じ取った私は、やがて独立を画策し会社を立ち上げた。

もちろん、イケるという確信があっての行動で、実際も想像した以上に順調な滑り出しを見せた。市バスのボディやラジオでCMを打ったのが効を奏し、業績はウナギ昇り。社員もみるみる増えていく。幸せの絶頂とはこういつことを言うのだろう。

元ヤクザの自分が社長。若い社員たちと汗水たらして働き、よろこびを分かち合う。このすばらしい生活を手放したくはない。私はそう強く願っていた。
会社を立ち上げてちょうどー年が過ぎた、今年2月下旬。地元のメガネ店で買ったばかりのメガネをかけてケガをした。

2つあるはずの鼻バットの片方が最初から取れているのに気づかず、金具が目元に突き刺さったのだ。あと5ミリずれていたら間違いなく眼球に入っていただろう。すぐにメガネ店に足を運び、店長に苦情を言った。

「今日こちらで買ったメガネ、鼻バットが取れてたんですよ。目元も切れちゃったし、どうなってるんですか?気をつけてください」

そもそもこの店、メガネを購入した時から不信感があった。タイプの違うメガネを4本、計5万円で買ったのだが、その際、フレームやレンズの調整をするのに2時間も待たされたのだ。最初の説明では30分で終わるといっておきながら。
しかし、そのとき私は一言も文句を言わなかったし、今回の鼻パットの件でも、悪質なクレームをつける気はさらさらなかった。

店長から「申し訳こざいませんでした」の一言が聞けさえすればそれでよかったのだ。ところが、

「はあ、そうですか。壊れてたメガネについては返金します。あとケガのことですが、診断書を出してもらえれば治療費は出しますよ」

店長の不誠実な態度に私は呆れ果てた。

「違うでしょっケガなんてニキビ跡くらいのもんだし、病院に行く気なんてないですよ。私はただ店長として、あなたに謝ってもらいたいだけなんです」

「とにかくメガネ代は返金しますので、それでよろしいですか」

意味がわからない。返金がどうとか、治療費がどうとかより、まず謝罪が第一じゃないのか。ダメだ、この男ではお話にならない。

「連絡先を置いてきますから、あなたの上司に電話を寄こすよう伝えてください」

私はメモ紙を店長に渡し、店を後にした。その間、わずか数分の出来事である。

翌日、さっそく担当者から連絡が入り、私はコトの次第を正確に伝え、は事実確認をしたうえで改めて連絡をすると言って電話を切った。
逮捕状を持った刑事が、お迎えにきたのはそれから数日後のことだ。容疑は恐喝未遂、その場で逮捕となった。突然の出来事に面食らったとはいえ、この時点ではまだ心に余裕があった。当然だろう。私は恐喝などしていないのだ。何もやってないのに捕まる道理はない。しかし、取調べが始まるや、徐々に自分の置かれた状況がわかってきた。「正直に言えよ。店長さんを脅して金を取り上げようと思ったんだろっ店長さんはそう主張してるぞ」

「違います。謝ってくれって言っただけです」

「ウソつけ。前科持ちの元極道がそれだけで済ませるはずがねーだろ」

いくら容疑を否認しても、まったく信用してもらえないのだ。結局、店長の言い分が100%採用されて立件。法廷の被告席に立たされるハメになったのである。逮捕の影響は、会社にも及んだ。仕事のいっさいを仕切っていた、社長が不在のため、会社は無期限休業状態になり、社員の大半は去っていった。事実上の倒産である。

弁護士の話では無罪の可能性は80%のようだが、失ったものは二度と戻らない。
悪意なき苦情が、元極道というたったそれだけの理由で、簡単に犯罪に仕立てられてしまう現実に、私は呆然とする他なかった。判決が下されるのは、7月23日。見事、無罪を勝ち取ったあかつきには、必ずやボイン酒に参加するつもりだ。それが絶望のふちに追いやられた私の、現時点で唯一の楽しみである。