防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

どういう個人情報が詐欺グループに悪用されるのか

個人データの売買はれっきとしたビジ不ス
巷にはびこる悪質な詐欺の数々。本特集を読まれた方なら、もう気づいているハズだ。いま流行りの詐欺には、どれもその成否に、あるアイテムの存在が大きく関わっていることを。個人情報である。

念のため説明しておくと、ここでいう個人情報とは以下の7項目のことを指す。

・名前

・性別

・住所

・年齢(生年月日も含む)

・家族構成

・職業構成、勤務先、学校名

・メールアドレス

例えば、ホストクラブのオーナーなど第三者を装った人物が登場する新手のオレオレ詐欺ではストーリーの展開上、ターゲットの年収、勤め先、家族構成などの情報が必要不可欠だし、不特定多数の相手かり力ネをダマしとる架空請求なら、最低限、住所、携帯番号、メルアドのいずれかがないことには成立しない。
つまり、悪質な犯罪から身を守るには、情報流出を止めれば簡単なワケだが、残念ながらそれはほぽ不可能と言ってよい。なぜなら、今や個人データの売買はれっきとしたビジネスとして確立し、いたるところで簡単に漏洩し続けているからだ。

例えばファミリマートの会員18万2780人の住所、氏名、メルアドが漏洩し話題になったが、同様の事件が相次いでいる。流出元は企業だけではない。ハローワークや役所、変わったところでは結婚相談所かりも情報は漏れている。

一説には、すでに国民の大半のデータが、何らかの形で巷に出回っているとも言われる現在の日本。詐欺師にとっては、まさに天国といっていい状況なのだ。
どういうものが詐欺グループに悪用されるのか。架空請求屋のメンバーA氏は言う。「よく使うのは、名簿屋から買ってきたリスト。有料の出会い系サイトでユーザー登録してる連中のだよ」

リストにはー枚につき約30人の携帯アドレス、ハンドルネーム、使用日が一覧表になっており(住所、氏名は不明)、情報料は鮮度によって異なるらしい。

「過去ー力月以内に10回以上同じサイトを使ってるヤツは現客と呼ばれて、ー人あたま300円くらい。それ以下の頻度や過去にー度だけ入ったことがあるものは過客といって10分の1の30円が相場かな。俺たちはそういう情報を毎月数万人分、まとめて仕入れるんだ」

そのリストを元に、架空請求屋かどのように詐欺行為を働くのかは周知のこととして省く。むしろここで疑間なのは、なぜ名簿屋が出会い系ユーザーの情報を所有しているかだ。都内の名簿業者は言う。

「簡単ですよ。いろんなサイトの管理会社が、自らウチへ持ち込んでくるんです。コレ買ってくんないって。場合によっては、逆にこっちからお願いすることもありますし。」

情報入手のルートは名簿屋だけとは限らない。組織によっては偽の出会い系サイトを立ち上げ、自力で個人情報の入手に励んでいるところもある。今回、取材に応じていただいた別の架空請求屋、B氏のグループがまさにそれである。サイトの仕組みは驚くほと単純だ

同サイトに入り、中の無料登録ボタンを押した途端、ターゲットのHN、メッセージ、女のコとのやり取りはもちろん、画面に書き込んでいないハズのメルアドや携帯番号までホストコンピュータに記憶されてしまうのである(現在は閉鎖中)。

「コレ、知り合いのSEにタダ同然で立ち上けてもらったんです」

前出の援交示談サギで、筆者坂野氏の携帯番号が詐欺師に割れてしまったのは、恐らく同様のサイトが他にもたくさん出回っているからなのかもしれない。

「ま、とにかくラクショーですよ。なんせ名簿屋からリストを買う必要かない上に、使用済みの情報は知り合いのグループに売り飛ばせますからね。そのアガリだけでも多いときで300万くらいになってんじゃないすかね」
さらに、架空請求屋の他にデリヘルオーナーという顔を持つB氏は、コツコツ貯めた店の個人情報まで悪用しようとたくらんでいる。

「まあ簡単に言っちゃえば、恐喝ネタですよ」

顧客リストには、住所、氏名、電話番号、特徴、利用歴(利用日時&指名した女のコの名前)、そして車のナンバーまでが事細かに記されている。これを上手く使えば、次のような電話が何本でも可能となる。

『●●警察地域係の宮本といいますが、こちら三上さんの携帯電話でよろしいでしょうか?アナタ先月のにデリバリーヘルス利用しましたよね?そのとき相手した女のコ、中学生だったんですよ。つまり淫行条例違反の容疑がかかっておるんですけどね」

血の気引きまくりの相手。そこへさらに逮捕だなんだと追い打ちをかけ、その上で『示談も可能です』と言えばどうだろう。コ口っとダマされる者がいておかしくはない。だが、疑間である。自分の店の客をカモるということは、すなわち己の首をしめることにもなりかねない。すぐに足がつくとは考えないのか。

「全然問題ありません。もともとそのデリヘル、営業の許可なんて取ってないモグリ店だし。やばくなったらソッコーでトンズラかますだけですよ」

奇しくも都内の無許可店が軒並み摘発を受けている折。B氏が行動を起こすのも、そう遠い未来ではないかもしれない。
ヤミ金、サラ金データがオレオレ詐欺に
主に出会い系のユーザー情報を使う架空請求に対し、オレオレ詐欺では、サラ金やヤミ金などの顧客データを重用するのが特徴だ。最近大ブームの劇場型オレオレ詐欺(警官、弁護士なとの第三者を装った人物が複数登場する)でも、重要なのはいかにリアルな作り話で相手をダマすかにある。

そのためにはターゲットの家族構成や勤務先、年収などを把握しておかねばならない。オレオレ詐欺犯の中に廃業した元ヤミ金業者か多いのはまさにそれか理由で、同詐欺事件の被害額が爆発的に増えたのは決して偶然ではない。

さて、ここで新たにc氏に登場いただく。氏は現役バリバリのヤミ金業者であると同時に、過去数度オレオレ詐欺を行った経験がある人物だ。

「最近は人身事故を装って示談金を巻き上げるパターンが大半だけど、俺らが使ったのは偽装誘拐。成功したのは2回だけで、計130万くらい稼いだかな」

氏か使うのは、本業であるヤミ金の顧客リスト。ここには力ネを借りに来た本人のデータ以外にも、審査と称し相手から聞き出した家族の名前、携帯番号、年齢などが詳しく載っている。

まずはこのリストを元に自宅へ電話。ターゲット(多くの場合、母親)に自)子(娘)の実名を口にし、誘拐したと告げる。そして、冷静な判断力を奪ったところで身代金を要求。初めに額を2、3千万とふっかけるのは、本当の目標額をこれなら安いと感じさせるためだ。
「この段階で一気に要求額を50万まで下げてやれば、ほぼ100%成功する。わかりました、すぐに振り込みますってなワケよ」

銀行までの道中は、母親の携帯にかけ、通話を続ける。言わずもがな、警察や子供との連絡を遮断するため。一方、自宅の固定電話へは氏の仲間がかけ、こちらも常に話し中の状態にしておく。まったく持って巧妙な手口。改めて、連中にとっていかに情報か重要かおわかりだろう。

とはいえ、C氏によると、オレオレ詐欺には金融系以外のルートも頻繁に使われているという。これは人かり聞いただけだからと断った上で、「医師会名簿みたいな、いかにも金持ちが載ってそうな紳士録。携帯会社の顧客データを使ってる連中もいるみたいだぜ」

また最近では、旅行代理店からのデータ漏れを危倶する声も上がっている。海外旅行中の家族を誘拐したと偽るオレオレ詐欺が増えているのだという。
あらゆる場所で流出し続ける個人情報。その憂うべき現状に対し、本当になす術はないのだろうか。

「個人情報保護法」なる法律により、本人の了解なく、個人情報の流用、売買、譲渡などの行為に規制がかかることになった。むろん、違反した場合は刑罰も科せられる(6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金)。

ただこの法律、情報の持ち主が苦情処理機関または当該事業者に訴え出ない以上、実効性はない。つまり、本人が漏洩の事実に気づかぬ限り、業者が罰せられることはないのだ。結局、我が身は自分で守るしか道はないのである。