防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

「年齢を偽っていまして未成年でした」援助交際示談サギ

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裏系の実話誌を中心に・犯罪ネタやシノギの手口を書きまくってきたオレにとって、サギの被害者など単なる甘ちゃんに過ぎなかった。

他人の舌先三寸で大金を奪われるなんてよほどのお人好しかニュースも見ないモノグサだけ?そう思いこんでいた。

が、今は違う。なにせオレ自身が流行りのエンコー示談サギに翻弄され、金を支払う寸前にまで追い込まれたのだ
示談か逮捕のニ択しかない
コトはオレの携帯に、見知らぬ固定電話から留守番メッセージが入っていたことから始まる。

「小田法律相談所の藤本と申します。昨年6月16日に発生した、ある重大な犯罪事件についてお聞きしたいことがございます。ご連絡ください」

重大な犯罪とは穏やかではない。すぐさまリダイヤルすると、男が出た。

「はい。小田法律相談所です」

「留守電を聞いたんですけど」

「ようやく連絡が取れましたね。こちら板野さんの番号でよろしいですか?」

「はい」

「1年以内に携帯のキャリアを変えたことはございませんか?」

「いいえ」

「では、昨年の時点でも、この番号をお使いだったということですね」

「はあ」

「実は、私どもの事務所に、あるご夫婦が相談に来ましてね。彼らの娘さんが板野さんと出会い系サイトで知り合って、性的な交渉を持ったと。ま、売春ですよね。心当たりはありませんか?」

「・・えーと」

思わず口ごもった。昨年の6月といえば、携帯の援交サイトにハマりまくってた時期だ。でもなんで両親がそんなことを知ってるんだ?

「娘さんが、バソコンで日記を付けてましてね。板野さんとのことが書いてあったのを、見つけてしまったらしいんですよ」

「・・・」

怪しい話である。自分の犯罪履歴をパソコンに残した上、相手の番号まで控えておくような女がいるだろうか。

「そう言われましても、私は板野さんに確認してもらうよう依頼されただけですから」「覚えがないですねえ」

「でも、タ力というのは板野さんのハンドルネームですよね」

「え?」

「その娘さんは、板野さんとは新宿のコマ劇場前で待ち合わせたようなんですが」

全身が凍り付いた。確かに、去年の夏コマ劇前で約束した記憶があるぞ。あの女か?「実は、千代さんはサイトでは年齢を偽っていまして、当時17才だったそっなんですよ。つまり児童売春ということになります」

恐怖心を押さえつつ、必死で詐欺の可能性を考えた。援交サイトからデータが漏れたか?いや、1年も前の記録を保存しておく業者などあり得ない。ならば女もグルだったのか?だとしても、なぜ今頃電話をかけてくるんだ。

「あ、ちょっと待ってください。すみません」
突如、電話口を離れた。受話器を通して例の件は別会計だから。相談料扱いで30分5千円ね

などと指示を出しているのが聞こえる。これが演技なら、相当の手練れだ。

「お待たせしました。別件の連絡が入ったもので」

「その千代さんと直にお会いしてみたいんですが」

「それはムリですよ。法律で決められてますから。板野さんが向こうに暴力をふるったりするとマズいでしょう。ご両親も相当に怒ってらっしゃいますし」

「なるほど。それはよくわかります。うんうん。そうですよね」

藤本の機嫌を損ねないようにとものわかりの良い態度を取ってしまう。完全に向こうのぺースだ。
「先方は示談を望んでます。板野さんの誠意を見せて頂きたいと、こう申しておるんです土」

「断ったらどうなるんでしようか」

「刑法によりますとね・・」

ここでどんな講釈を受けたのかは覚えていない。裁判、逮摘、拘留といった単語が乱発されたのは確か、恐怖と焦りのせいで、まるで頭に入ってこない。
一つだけ理解できたのは、もはやオレには示談か逮捕のニ択しか残されていないということだけだった。
藤本によれば示談を飲む飲まないに関わらず、まずは父親の高田氏と話し合う必要があるらしい。先方には番号を伝えておくので、連絡が来るまで待てとのことだ。いったん通話を切り10分、今度は非通知で着信が入った。

「もしもし。弁護士の方からお電話するように言われまして」

怒りを押し殺すように沈んだ声。ド迫力である。

「あの、このたびは」

「弁護士からのお話ですと、示談をご希望だそうですが」

「えっ、まだその辺は決めかねているところなんですが・・」

「決めていない?」

「ええ・・」しばし黙り込んだ後、

「私は刑事告訴するつもりだったんですが、妻が言うんです。『こっちも悪かったんだから、あんまり責めないでね』って」

「はあ」

「いちばん、娘を大事にしてたのは妻なんです。その妻がせめないでって・・」

「・・いや、示談にしても、ちょっと相場がわからないもので」

「そうですね。いま用意できるのはいくらぐらいですか?」

「え?いますぐですか」

「はい。でないとこちらも不安ですから」

「えーと、50万ぐらいですかね」

「それで構いません」

「あの、すぐには、ちょっと」

「そうですよね。うちもどうしてこんな事故に遭ってしまったのか…。初めて出来た子で…大事に育てていたのに・・」

感極まったように泣き出す。が、それでもオレは示談を断り続けた。児童売春でパクられようが、なんら社会的には影響のない浮き草稼業。ならば、素直に己の罪を認めて、略式起訴に持ち込む方が得策だろう。

「わかりました。では、弁護士にその通りに伝えますから・・」

電話が終わって、すぐにまた藤本から連絡が入った。

「板野さん。示談になさらないようですが。本当にそれでよろしいんですか?」

「はい」

「わかりました。では、すぐに裁判所から内容証明が届きますので。心境が変わったときは、いつでもご連絡ください」
結局、5日が過ぎても内容証明は届かなかった。やっばり詐欺だったのか。真偽を確認すべく、奥村法律相談所の奥村弁護士を尋ねてみた。

「間違いなく詐欺ですね。その日のうちに、被告が示談金を支払う事件なんて減多にありません。しかも、板野さんは先方と電話で話しただけですから」

示談とは、当事者か代理弁護人の立会いの下に書面を起こし、署名押印の上で双方が保管しておく慣例になっている。もし弁護士が当事者間の合意だけで話を進めようとする場合は、ニセモノの可能性が高い。

「ただし、我々は電話による示談交渉の権限を持っていますし、依頼人を進めるケースもありますからねえ…」

つまり、ある日突然弁護士が「アナタに援交に関する訴訟が起きています。示談にしますか?」と電話をかけてきても、一概にニセ弁護士とは断定できないワケだ。

では、相手の真偽を確かめる方法は?

「所属弁護士会とその所在地、弁護士事務所の電話番号を尋ねてください」

この時点で返答がないなら詐欺確定。もしデタラメを言ってきた場合は、いったん通話を打ち切り、日弁連の公式サイトにアクセス、右上の「弁護士検索」コーナーに飛んで登録情報を検索する。
「ただし、最近は実在の弁護士事務所を語るケースも頻発しています。もし登録情報が見つかっても、実際にその事務所の固定電話にかけて確認して下さい」
それじゃアンタの両親に払ってもらうから
法的知識がそろったところで、再び藤本に電話してみた。

「先日お電話を差し上げた板野ですけど。やっぱり示談にしていただこうかと・・」「あ、これはどうも。では、事実をお認めになるんですね」

「その前に藤本さんの所属弁護士会と事務所名を教えてくれませんか」
「小田法律相談所ですよ。最初に言っとったでしょう」

「そのお名前、日弁連に登録がないんですが、何故ですか?・」

「…ああ、ウチは団体ですから。事務所とか、そういうモノじゃないんだな」

「はあ?・意味不明ですけど」

「アンタね。そんなしょうもない猿知恵でいろいろ言ったらダメよ。子供とセックスしとるわけなんだから」

「必要があるなら払いますよ。でも、現時点ではそちらの要求は不透明なので、払う気はありません」

「先方にその通りに伝えるけど、いいの?」

「ええ、どうぞ」

「コラァー・テメエはエンコーしたんだろうがーワリィことしたら弁償するって習わなかったかー」

ついに本性を現しやがった。

「テメェ、頭おかしいだろ?お前のメール、全部業者からもらってんだよ。職場に送りつけてやろうか」

「それ、アクセス禁止法に抵触してますよ」

「あのな、業者は犯罪の防止目的で口グを保存してんの。それを公開しても問題はないんだよ」

「じゃあ、ボクがこの電話を録音しても、貴方の脅迫行為を防止する目的なので問題ありませんね」

「…わかった。それじゃアンタの両親に払ってもらうから」

あまりにべタな脅し。援交サイトに実家の連絡先なんて載せるかよ。

「じゃあな。覚悟しとけ」

一方的に通話が切られた。間をおかずにリダイヤルしたが、ひたすら話し中で繋がらない。さすがにあきらめたか。と、思ったオレが甘かった。藤本との会話から約20分が過ぎたころ、なんと、実の父親が電話をかけてきたのだ。まさか・・、

「オマエ、ガキと援交したんだって?」

開口一番、オヤジは半笑いで言い放った。聞けばさきほど、名前も会社名も名乗らない人物から、『オタクの息子さんがウチの娘を傷物にした』と連絡が入ったらしい。が、オヤジは冷静だった。

「名前は?」「アナタの住所は?」といった質間を浴びせまくった上で、電話がイタズラか詐欺だと断定。相手をおちょくる作戦に出たという。

『オレだって援交したいのに、金がないから我慢している。なんでアイツの下半身まで世話しなきゃいかんのだ。息子に払わせろ』
『…では、息子さんの住所を教えてくれませんか』

『アイツの仕事は流しのライターだ。今ごろどの街にいるのかオレも知らんよ』

『・---・-…』

この後、藤本の番号は完全に不通となった。
オレ自身、他人より詐欺に詳しいという油断はあった。が、恐るべきはヤツラの情報収集能力である。ハンドルネームや援交時の口グ、実家の番号まで握られてはスネに傷持つ人間などひとたまりもなかろう。

ちなみに、オレが使った援交サイトに間い合わせてみたところ過去のアクセス履歴を調べてみましたが、データ流出の事実は確認できませんでしたとの回答しか返ってこなか