防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

紹介屋や整理屋に近い手口で現金をだまし取られた話

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現金一本化をうたう悪徳業者の手口はよく知られている。複数社からの借り入れ金を「当社が低利でまとめて融資します」などと言いつつ、その実態は紹介屋や整理屋で、低利一本化どころかますます借金が膨らむ仕掛けだ。

それぐらいのことは、いくら馬鹿な僕でも知っていた。

「ミナミの帝王」や『ナニワ金融道』でしっかり学習したつもりだ。しかし、まさかこんな新手の手法があったとは。

今年4月、僕の借金は大手サラ金5社合わせて230万にまで膨らんでいた。18のころから世話になり続けた結果だ。

月々の返済金額は7万円。

バイトの給料が12万円。行きづまるのは誰の目にも明らかだった。親に洗いざらい打ち明けるか、いっそのこと行方をくらーますか。いよいよ切羽詰ったある日、アパートのポストにー通の手紙を見つけた。

『サラ金の返済、困難な方。私がまとめて面倒見ます』

悪徳業者に違いない。とは思ったが、失踪まで脳裏に浮かぶ人間のこと、溺れるものはなんとやらで、とりあえずは電話してみることにした。少しでも怪しいところがあれば撤退すればいい。

「とりあえずお越しください」

優しい口調のおっさんが告げた事務所の住所は、偶然にもアパートからほんの10分ほどの場所だった。散歩がてら行ってみるか。

「お待ちしておりました」

ビルの一室のドアを開けると、今まで見たことのないよ。うな美しい女性が中に招き入れてくれた。一奥には痩せたおっさんが座っている。ヤクザっぽい連中ではなく、夫婦でやっているのか。少し安心だ。

僕は男の前に座り、これまでの事情をすべて話した。

「なるほど、そうですか。ではこちらでカードをお預かりして、毎月返済することにしましよう」
ニコやかに笑うオッサンが言うには、なんでも月々3万円を払うだけで、7万円の返済を肩代わりしてくれるらしい。うーむ、これって整理屋じゃないのかっ

整理屋は、弁護士の名前をかたって任意整理を持ちかけ、多額の手数料をブン取ると聞いたことがある。探りを入れてみるか。

「これって任意整理ってやつですかっ」

「ほう、難しい言葉を知ってるね。でもウチは弁護士じゃないので任意整理はできません。困ってる人を助ける慈善団体ですよ」

そんなウマイ話、あるわけがない。どこかに裏があるはずだ。しかし詐欺だという確たる証拠もなし。9割がた疑いつつも、僕はその場で3万円を手渡し、今後の様子を見ることにした。

返済期日に督促の電話がかかってくるかこないか。これは賭けだ。果たして、月末に集中するはずの督促電話はなかった。ちゃんと返済してくれている証拠だ。なんていい会社なんだ

すっかり心を許した僕は、以来、ヒマを見つけては事務所に遊びに行くようになり、ときには一緒に食事するまで夫妻と親しくなった。

4カ月後の夏のある日、バイト帰りに事務所を訪ねると、おっさんが神妙な顔でお茶を飲んでいた。

「どうしましたっ」

「泥棒が入ったんだよ」

「へっ」

「金庫の100万円をやられてしまってな。悪いけど10万ほど貸してくれないか」

「10万ですか」

これまでよくしてもらったことを思えば、貸さないわけにもいかない。僕はもらったばかりのバイト代の半分を手渡した。

そして翌日。

「すまんが、もうー万貸してくれないか」

「いいですけど」

しょうがない、あげるわけではなく貸すのだから・・。こうしておっさんは、ずるずると1週間連続でー万ずつ無心してきた。都合17万円。最初は快く貸していた僕だが、もう手持ちの金がない。

「すみません、悪いですけどもう貸せませんよ」

と、おっさんは途端に鬼のような顔で怒鳴り散らした。

「俺はテメーの支払いをやってきてるのに、テメーはー万ぼっちも出せねーのかー」

怖くなって事務所を逃げ出すと、美人の奥さんから携帯に電話が。

「あの人、詐欺師だから付き合わないほうがいいわよ」
「ど、どういつことっすかっ」

詳しい話を聞くため、喫茶店で奥さんと落ち合う。

聞けば、彼女は奥さんでもなんでもなく、過去に同じ手口でダマされ、親に借金をバーラされたくないからとパシリとして使われているそうだ。

「あなたもこうならないように早く手を切ったほうがいい一わよ」

「ダマされたってどういつことですかっ僕の借金は返してくれてるんですよねっ」

「もう、そんなはずないでしょー」

後日、すべてが判明した。
サラ金業者のデータによれば、ここ4カ月、僕は毎月ちゃんと返済しては、すぐに限度額いっばいまで借りる作業を繰り返していたそうだ。返済額7万円はてっきり利息のみのことだと思っていたが、実際の内訳は、元金充足分が4万で、利息相当分が3万。

つまりおっさんは僕が払った3万と自分の4万の合計7万を返済しては、すくにまた4万を借りていたのだ。これなら懐は痛まない。借金が減らなかったどころか、自分から逃げ出した以上、個人的に貸した金が戻ってくるアテもない。

そう考えると、絶妙のタイミングで、僕をおっさんから遠ざけようとしたあの美女も、やはりおっさんとグルだったのではないかと思えてくる。いったい僕は何を信じればいいんだろう。