防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

B勘屋|福祉団体の裏帳簿を使う脱税請負人のやり方

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都内某所の喫茶店で、ユニク口のフリース上下に身を包んだ四〇代半ばの男がアメリカンコーヒーをすすうていた。山崎氏(仮名)。差し出された名刺を見れば、福祉団体代表の肩書きが付いている。

「実はオレ、そのスジじゃ少しは知られたB勘屋なの。」

B勘屋ー。税務署に見せる表の帳簿をA勘定と言うのに対し、裏金の流れが記された裏帳簿をB勘定と称す。すなわちB勘屋とは【脱税請負人】のことなのだ。振り返れば、芸能プロダクションに始まり代議士秘書から官僚、果ては野球監督夫人まで。今年も脱税事件がてんこ盛りの一年だったが、山崎氏に言わせれば

「どれも摘発されて当然。お粗末な手口ばかり」

らしい。自ら日本一と豪語する脱税請負人に、闇の錬金術を聞いた。
オレは元々何でも屋でさ、地上げが得意だったののよ。15年ぐらい前は半端じゃなく儲かってたから税務署がうるさくて。税理士や不動産仲間とあれこれ考えてるうち、嫌でも税金関係に詳しくなったわけ。
知ってると思うけど、税金は所得額に応じて課せられるから、隠すなり、架空の経費を計上して利益を縮小すればいい。
裏社会の住人ほど、金の匂いには敏感なもの。山崎氏が税金対策に精を出すうちに、その手腕の確かさは外部の知るところとなり、やがて脱税指南の依頼が舞い込み始める。だが、知識はあうてもしょせんシロウト。安請け合いは、結果的に自分のクビを締めるだけだ。

「だから、ぜんぶ断ってたんだけどさ・・」

ある日、義理をかけてもらうた人間かり話が来たんだ。いや、実はオレ、企業舎弟なんだよ。そこから頼まれたら、四の五の言えないんだよね。そんときは確か、5千万の裏金を作うてくれうて依頼だうた。

けど、考えてもいいアイディアなんか浮かばないわけよ。で、仕方ないから、借金でグルグルになうてる多重債務者を見つけて空の領収書を書かせたの。ー千万円分を書いたら百、2千万なら2百万の報酬をやるって条件でさ。

もちろん税務署が入れば一発アウトだよ。当時は領収書を書かせた人間にはユルかったけど、書いた人間は間違いなくパクられたからね。額がデカイだけに、税務署も必死なんだ。で

も、借金で行き詰まうたヤツらは、後先考えずに目先の金に飛びついちゃうのよ。覚悟ができてる?いやいや、金を受け取うたら連中すぐに行方不明になっちゃうね。ま、とにかくそのときは義理を果たせた。

そしたら、次から次へと依頼が入るのよ。それも断れない相手ばかりかりさ。引くに引けないじゃん。で、いつの間にか脱税屋が本業になうちゃうたうてわけ(笑)。

最初は見よう見まねで、架空のコンサルタント料を計上するってやり方をよく使うたね。例えば、ある会社がある人物に顧問料という形で年間何千万か支払うたことにしちゃうんだよ。

実際に金を振り込んで現金をバックしてもらえば、キッチリ支払いの証拠も残るしな。品物への代金と違うて、情報やアドバイスに価値を付けるうてのは難しいだろ。仮にー億円払うても、会社にとうて有益な情報が得られたら、税務署は不当と判断できないよ。

最初はそれで通うたんだ。けど、そのうち猫も杓子もやり出したもんだから、税務署が対策を講じてきてさ。実際にコンサルタントがどれだけ時間を割いたのか、どんなアドバイスをして、その結果、どうしたかまで突う込んできたから大変だよ。

覚えてないかな、プロ野球脱税事件てあったじゃない。現役の選手が、脱税指南が得意な経営コンサルタントに金を渡したうていうさ。あの一件で完全に終わったよ。f:id:torivian:20190720080601p:plain
ここまでは前フリ、よくいる並みの『B勘屋』の話だよ。けど、オレは、その次の手を考えついたんだ。この商売は、税務薯とのイタチごうこでさ、いかに税制の抜け道を探し出すかが勝負の分かれ目になるのね。

で、何かウマィ方法はないか調べてたら、贈与には税金がかかるけど寄付は無税うてことかわかった。そう、要は福祉をネタにすりゃあいいうてことだわな。元々福祉に携わる人間うてのは、よく心がキレイなんだろうけど、甘ちょろいヤツか多いのよ。

困った相手を助けたいと思う人に悪い人はいないうて信じてるようなね。例えば定価10万円の車椅子があるとするだろ。いくらまけても2割なのに、メーカーに直接行うて「ー人でも多くの人に寄付したいんです」

なんて掛け合うと、原価ギリギリ、半値で売ってくれたりするわけ。てことは、依頼人が車椅子を100台購入して福祉団体に寄付したことにすれば表向きー千万の支出でも、手元には500万の裏金が残るわけ。

他にもやり方はいろいろある。タダでもらった死んだ身障者の介護用具を購入したことにして寄付するとか、定価20万の単車と同じ車種を3万で買い叩いて送るとかさ。名目だって何でもいい。

「交通遺児の方々の通学に役立ててほしいと思うて寄付を考えてるんですが」

て頼めば、簡単に名簿ももらえるかりさ、そういう人たちに30台も寄付すりゃ500万からの金が作れるってわけよ。税務署は辻褄があえば突っ込んでこないよ。もちろん、寄付した事実がなけりゃヤバイだろうけど、車椅子にしてもバイクにしても、実際に寄付はするんだから。

それにさ、寄付を受けなくちゃならない側の心理は微妙なのよ。根ほり葉ほり無神経な質間をすれば、それこそ人権団体に訴えられかねない。税務署はそれが怖いから、福祉に関してはメチャクチャゆるい。アンタッチャブルな世界なんだよね。

福祉は大当たりだうたね。警察も税務署も突っ込めないから、安全だしさ。ただ、ひとつだけ困うたことがあうた。思うように額が出ないのよ。2千万の所得を隠すのに、いうたい何台の車椅子を用意すりゃいいか、考えるだけで頭が痛くなる。

そんなときだよ。何かの用で新潟に出かけて、口シアのブ口ー力ーと知り合ったんだ。物資が不足してるから、タバコでも米でも、とにかく物があれば日本の2倍3倍の値段でさばけるって。そういう国にモノを持っていけば、商いになるのは明らかだよな。た
、普通に売るだけじゃあ面白くない。

「んじゃ、どんな商売をやればいちばん金になるかなあ」

なんて、ブ口ー力ーと話してるうち、そいつが、実は自分はマフィアの一員だと言い出したんだ。しかも自国だけじゃなく、アジアや中東、アフリカに北朝鮮までネットワークを持ってるってさ。こいつと組めば間違いなくデカイことかできる。聞いた瞬間、ピうときたよ

昔さ、タイかどこかの国が大干ばつになって国内の福祉団体が寄付を募ったことあっただろ。現金じゃ役に立たないだろうて、全国から米が集まうてさ。

ところが、いざそれを相手国に運ぶ段になうたら国が関税を払えとかなんとか言い出したわけ。で、大反発が巻き起こうたんだ。

「飢えてる子供を救わないで、税金かけて米捨てさせる気か」

「米を買うとき税金取うてんのに、二重取りする気か」

なんてね。それがきっかけだうたと思うけど、海外への寄付に関しては特別措置として、税金がいらなくなったのよ。オレ、マフィアの話を聞いて、それを思い出したんだ。
欲深い資産家が寄付なんかするワケない

山崎氏は、さうそく準備に取りかかる。まず、平和振興会(仮名)なる福祉団体を設立。継いで、区の広報紙に難民のための募金活動員募集と紹介文を掲載し、応募してきたボランティアを街角に放ち、募金活動をスタートする。

「よく街角にいるだろ。募金箱持うてアフガンの子供達に寄付をお願いしますなんてウロウロしてる連中が。ああいうのを何十人か抱えてるの。世の中には稲祉おたみたいなやつらが結構いてさ、一緒に頑張ろうなんてハッパをかけると無償でせっせと金を運んできてくれるんだ」

半年ほどはその仕事に専念し、集まった金をこまめに交通遺児団体や老人ホームに寄付しては、実績を積み上げていく。事務所は、またたくまに各団体からの感謝状で埋まったそうだ。一方その間、山崎氏は募金にも手を付けず、質素な暮らしを通す。当然、税務署が来ても恐いものなし。

「事務所の経費から何から自腹切うてるのに、あんたらはオレから何を取る気だ」と追い返したという。脱税と何の関係もないような、これら一連の動き。が、実はその陰で着々と準備は進んでいた。平和振興会(仮名)は、『B勘屋』の舞台装置に過ぎなかうたのだ。
「ときどきさ、資産家が死んだりしてー億を福祉団体に寄付しました」なんて記事が新聞の地方版に出てたりするの見たことない?実はその福祉団体ってのがオレんとこなんだけど、これには力ラクリがあうてね。

寄付うてのはカムフラージュなんだ。資産家うてのは欲深い連中でさ、じーさんばーさんが残した金を、そう易々と手放すわけがない。でも、そのまま相続すれば莫大な相続税を持っていかれる。もうわかっただろ。表向き寄付したことにして、うちが後でこっそり全額返してやるの。

言うてみりゃ、福祉に名を借りた、マネーロンダリングってわけだよ。例えばさ、資産家の老人が亡くなる前に依頼が来たとするよな。
現金があればそれをかき集め、ない場合は土地を担保に借りられるだけ借りさせて、うちの団体に寄付させる。仮に3億寄付したら、うちは間違いなく元金分は戻すから、借金という負の財産のお陰で相続税はゼ口。

戻ってきた金を返済に充れば、ほとんど無傷で代替わりできるってわけ。なんでそんなことか可能なのか、いまから説明するから、よく聞きなよ。
口シアや中東でニワトリが高く売れる理由
まずは、寄付金でニワトリや牛、米、コーンなんかを買い込んで、アフカニスタンや北朝鮮、ロシアあたりに送るんだ。もちろん、直接、難民キャンプとかじゃなく、福祉団体を名乗る現地のマフィアを通ず。なぜ生き物を送るかわかる?

うん、もちろん食料うてのはある。たださ、こういうことが考えられないか。例えば、ニワトリー万羽を寄付して、空輸の間に8千羽が死んだうてことにしたらとうだ。不自然じゃないだろ。つまり、その死んだことになってるニワトリを、マフィァ連中が横流しして、闇市で売りさばいた金をバックしてもらおううてわけなのよ。

もっとも、デカイ稼ぎにはなんない。ー万羽送りゃ、まあー千羽ぐらいが死ぬわな。そっから2千羽を難民たちに寄付したら残りは7千羽だ。2万で売っても1億4千万にしかならない。出資者に全額返したとして、現地の連中とオレらが取り半で2千万円ずつ。実費を引けば、さほどウマミはないわな。

で、送り方に細工をするんだよ。

「いついつー羽ー万円のニワトリをー万羽どこに寄付」

てことにして、実際は5千円のを2万羽送るとか。額が一緒だから、領収書に明細を書かなきゃ税務署にはわからないだろ。2万羽送れば、輸送中に2千羽死んで、キャンプに3千羽払ってもー万5千羽が残る。それがー羽2万円で売れりゃ、3億の上がりだ。出資者に丸々ー億円を返しても、現地の連中とオレにー億ずう入るわけよ。ん?ニワトリがー羽ー万は高い?アハハハ。確かにね。でもさ、税務署がもしそんなことを言うてきたら、こう返してやりゃいいんだ。

「食用にするだけじゃなく、長期的に飼育してもらうためにも病気になりにくい種類を送りたいんで。」
なるほど。説明はよくわかる。しかし、ロシアや中東など日本より物価の安い国で、原価より高くニワトリゃ牛が売れるとは考えにくい。戦争やテロなど、何らかの理由で政治家混乱し、経済が破綻しているからこそ人々が住居を追われ、飢えに苦しむ人たちがいるのではないか。
難民がいるからうて、その国が全員貧乏だとは限らないんだ。アフガンだって、飢えてキャンプ暮らしの難民が何千何万といる一方でさ、テレビや映画を楽しんでる連中もいるだろ。つまり、物がないかり質素にしてるだけで、提供してやれば高くても買う層はいるんだよ。まだ信じられない?

そしたら、阪神大震災の時の話をしてやるよ。地震があうた夜、行政がパンを配ったり、炊き出ししたりする前に、フランクフルトを5千円で売りに行うたヤツらがいたんだよ。大阪からスクーターに乗うて駆け付けてさ。

フランクフルトなんて、普段なら3百円も出せば買えるよな。でも、その夜は5千円で飛ぶように売れたんだ。なんでだと思う?別に金が有り余うてる人たちが買うたわけじゃないよ。将来のことを考えればー円でもムダにできないけど、他に食べるモノがない被災者が有り金を叩いたんだ。海外もそれと同じなんだよ。

ていうか、阪神以上に必死だよ。例のブ口ー力ーによると、口シアじゃマーケットがあうても品物が全然ないんだうてさ。マフィアが物流を牛耳って、わざと品薄状態を作ってるらしいけど。とにかくニワトリでも牛でも、日本の2倍どころか5倍10倍で売れちゃうの。
うちには税理士とか、弁護士上がりの人間が4、5人いるよ。ただ、客を見つけるのはそんなに難しくはない。資産家ってのは一般人の百倍は財産管理について考えてるから「ちょうとした節税対策があるんですよ」

なんて振ってやれば、向こうから飛びついてくる。いまは金持ち連中も苦しいから、オレみたいな商売は大盛況なのよ。来年は予約がめいっぱい入ってて、もう順番待ちだもん。客層?代議士とか企業家とか、やうばり普通に脱税したい連中がメインかな。

あとは、相続税で困うてる人間ね。そんなこんなで年にどうだろ、20件ぐらいはこなしてるんじゃないかな。細かく数えたことはないけど、オレの取り分だけで億はいってるし。
長引く不況を背景に、廃業に追い込まれる『B勘屋』が多い中、山崎氏のグループはまさにひとり勝ち。評判がクチコミで広がり勧誘などせずとも、客のほうからコンタクトをとってくることも少なくない。