防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

ゲームの違法コピーの海賊版は買った方も処罰

編集部に、異色の電話があった。相手はなんと18才の少年で、桧山リョウ(仮名)と名乗った。

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「海賊版CDで食ってるんですけど、ネタになりますか」

期待はしてなかったが、海賊版CDとはあまりに拍子抜けである。裏DVDに偽ブランド、コピー関連の話は本誌でも散散取り上げており、すでにネタの価値は無きに等しい。ま、子供の考えることだ。《食ってる》といっても小遣い程度だろう。しかし、その予想は見事に裏切られた。18才にしては幼い声に耳を傾けるうち、彼の末恐ろしい商魂が浮き彫りになってきたのだ。

彼、リョウがこの2年間で得た収入は1600万。しかも、それは一切の危険がない、実に楽チンな裏仕事だった。数日後の都内某喫茶店。約束の取材場所に現れた彼は、ジャニーズ系のマスクをした紛れもない18才だった。
借りたソフトでコピー三昧。12才で50万を稼ぎだす
プレイステーション(以下プレステ)って知ってますよね7う。ソニーのテレビゲーム。
ボクはそのコピーソフトの、仕入れ、宣伝、販売すべてー人でやってるんですよ。収入は、毎月だいたい60-70万ってとこかな。まあまあでしょ。今の主力商品は別なんですけど、それは後回し。とりあえずコピー品がいかにして売れるのか、力ラクリから説明しますね。

プレステの場合、普通のゲームは新作で5-6千円、『ドラクエ』とか『ファイナルファンタジー』の人気作品は7-8千円します。高校生や大学生じゃ簡単には手が出ませんよね。そこで、ボクが10本1万円で売ったらどうなります?答は言わなくてもわかりますよね。

ただね、バカみたいにコピーすればOKってワケじゃなく、ひと工夫必要なんです。それにはまずプレステの構造を簡単に理解してもらわなきゃならないんだけど・・プレステって単にコピーCDを入れただけじゃ動かないんすよ。複製品か正規品か、本体にチェツク機能があって、それをクリアしなくちゃならない。そこで必要になるのがモトチップっていうツール。香港人が開発したんですけど、これをプレステ本体にハンダ付けしただけで、コピーソフトが使えるようになるんですよ。まったく香港の人間は頭いいっすよね。
あえて説明するまでもないが、ゲームの複製、販売は著作権に反する違法行為である。彼の言うモトチップ、不正競争防止法の改正により法に抵触することとなった。見つかれば、逮捕は免れない。果たして、リョウはいつどんなキッカケでこのビジネスを思いついたのか。話は彼が12才、中学ー年生時にまで遡る
ちょうどスーファミ(ファミコンの後継機)全盛時代で、力セットはー本ー万円くらいだったかな。アキバ(秋葉原)でスーファミ用のマジコンを買ったんです。マジコンってのはコピー機のことで、4万円もするんだけど、本体に取り付けるだけで高価なカセツトの中身が丸ことフロッピーディスクにオトせちゃうんすよ。フロッピーなんてー枚30円かそこらでしたからね。学校の友だちからカセット借りまくりっすよ。あっという間に200枚くらいになったかな。そのうち友だちにも怪しまれだしまして。

「リョウ、ゲーム返すのやたら早くない」って。そりゃ、そうだ。コピーしてるだけで、遊ぶヒマがない。で、ある日、親友の杉山くんにコッソリ教えたら、学校中に知れ渡っちゃって「オレも、オレも」と頼まれる度に、アキバまで足を運んでましたよ。

同時にフロッピーもー枚500円で売り始めましてね。手元に何百枚ってあるから、孫コピーするだけ(笑)。とうだろ。軽く50万ぐらい儲かったかな。なんせ先輩、同級生関わらず、毎日ひっきりなしに注文かありましたから。けど、それもせいぜい2カ月くらいのもんで。ひと通りソフトか出回ると、注文がピタリと止まっちゃいました。

理由は学校の連中がひ孫コピーをし始めたからっすよ。12才の子供がわずか2カ月で50万を稼ぎ、潮時と見るやスッパリ手を引く。鮮やかなヤリ口だが、その後の行動は、やはり中学生だった。

大金握りしめて秋葉原に出向き、ファミコンのin1カセットを買う。読者のみなさんはおそらく初耳だろう。in1カセットとは、ファミコンやゲームボーイの力セットの中に、少なくとも5~6本、多くて100本のゲームが収められたバリバリの海賊版だ。

そんな怪しいグッズを求めて秋葉原を徘徊しているうち、リョウは後の人生を変える1冊の本と出あう。PLAY、AsiA仮名アジアを始めとしたゲームの裏情報が満載された同人誌である。
超、ビビリましたよ。だって違法だった『in1カセット』の紹介記事なんかも載ってるでしょ。言ってしまえばマニアな世界なんですよね。で、この辺の感覚は一般人には理解されないんスけど、ボク、同人誌を作っていた秋山さん(仮名)って人のファンになって、本が発売される度に手紙を出してたんですよ。そしたらある日突然、『PLAYAs-A」からDMが届いて。秘密厳守できる方のみで、発売間もないプレステソフトの、リストが載ってるんすよ。たしか3本4500円だったかな。ああ、こりゃコピー品だなって、すぐにピンときました。ソッコーで買いましたよ(笑)。けど、さっきも言ったとおりプレステにはセキュリティがかかってるでしょ。

『MoDcH-P』がないとコピーCDが動かない。実は当時はそれに代わるツールがあったんですけど、ボクのプレステじゃ型番がズレてて使いものにならない。あ、言い忘れましたけど、プレステって型番があって、それぞれセキュリティシステムが微妙に変わってるんすよ。だからボクのやつだと新しい方法でも編み出さない限り動かないんです。でも、それからーカ月ほど後に、偶然その方法を発見しちゃったんスよね。

で、それを『PLAYAs-A』に投稿したら、秋山さん直々に「オレの家で実践してくれないか」って依頼がありまして。いやー、スゴかったっすよ、秋山さんのアパート。海賊版の力セツトやコピーCDだらけなんです。それも100とか200のレベルじゃなく、千単位。そんなオタクな人なのに、見た目はイケてんすよ。

いわゆるデブ眼鏡のアキバ系じゃなく、普段はクラブのDJとかやってんです。それよりなにより稼ぎっぷりがハンパじゃない。海賊グッズの違法売買だけで2億くらい貯金がありましたからね。それもわずか3年の間に貯めたんだから、まだ23才なのにゴツイでしょ。信用してます?この話。大マジっすよ。秋山さん、女と暮らすために5千万のマンションまで買ってましたから。しかもそれ、口ーンじゃなくて現金ですよ、現金。
ま、結局、その彼女には風俗通いがバレて逃げられちゃうんですけど。とにかくそんなスゲー人に

「香港の業者に桧山くんの技術を持ち込んで、ツールの開発にあてていいかな」

なんてお願いされたもんだから、ボクもすっかりのぽせちゃってね。このとき自分の生きる道を決心しましたよ。
その後彼は中退、秋山氏の仕事場に潜り込む。若干16才。巷の高校生がクラブ活動や勉学に勤しむなかで、リョウは1人冷静な計画を企てる
秋山さんに隠れてプレステのコピーCDを売ろうと思いましてね。そのためには同人誌の発行が欠かせない。内容は『PLAY-AS-A』をアレンジしたもので、狙いは秋山さんの“客“です。怪しいモノ大好き人間が揃ってんだかり、これ以上の市場はないってワケで、図々しくも『PLAYAs-A』に、自分の同人誌の発売まで掲載してもらいました。

次に予定してたのがDMの発送です。同人誌を注文してくれたお客さんに商品リストを送りつけるんです。でもコレ、冷静に考えたら相当ヤバイ。見知らぬ人間にボクは違法CDを売ってますよってバラすようなもんじゃないですか。で、六法や判例をコト細かに調べたら、著作権関係は親告罪とわかった。つまり、ソニーや任天堂、スクエアなどに告訴されなければ平気らしいんですよね。その点、個人の売買なんてそうはバレないからまず安心。ただ、可能性がゼ口でもない。

そこで、購入者からは秘密厳守の念書とハンコをもらうことにしたんです。なんでそんな面倒なことをするかっていうと、法律によれば、海賊商品と知りながら売り買いした者は、両者ともに処罰されるらしいんすよ。それを客にキッチリ認識させれば、チクるバカなんていないでしょ。で、残るは肝心の仕入れなんですが、さすがに秋山さんから盗むワケにはいかない。そこで海外まで買い付けに行くことにしました。場所はタイです。
パソコンケースに隠して成田の税関を突破

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平成11年3月、リョウは10万円片手に秋山氏と氏のバイヤー仲間3人で一路タイを目指す。16才の初めての海外旅行がタイへ違法品の買い付けとは常識外れだが、怖いモノ知らずの彼は到着当日からサパーレックと呼ばれる市場で買い漁る。
いやー、実際、タイはスゲーとこっす。サパーレックの前に、パンティーププラザやマーブンクロンという市場を回ったんですが、海賊版CDの嵐なんです。

例えばフォトショップっていうソフト。これ、日本で買うとたしか7万円くらいするハズなんですが、現地では300円です。ナメてるでしよ。肝心のプレステはー枚90円くらいだったかな。500枚を同じ店で一気に仕入れました。そうするとー枚70円に値引きできるから、お得ってなワケで。あ、そうそう。このとき現地のブローカーと知り合いになりまして。

中国系のチャィ(曾)君っいうんですが、彼、ドでかいマンションのオーナーでベンツを乗り回してんすよ。なのに、ただゲームが好きだからって理由でコピー屋やってんの。ワケわかんないつしょ。そのチャイ君にバンコク市中を案内されながら、夢のようなー週間を過こしまして。残る問題は帰りの関所だけ。そう、成田の税関です。なんせボクら一行だけで3-4千枚の海賊CDを持ってるでしょ。

その他にも、違法グッスの山だから、バレたらヤバヤバ。で、これをどう隠すかなんだけど、当時一番メジャーだったのは、パソコンケースに詰め込む方法でした。フタを開けると、千枚くらい詰められるんすよ。パソコンなら、外して中身まで覗かれませんから。あとは、秋山さんから、税関の前のトイレに荷物を抱えたまま絶対に入るな、って言われてました。係員が不審者をチェックしてるみたいなんですよね。ま、いずれにしても、ボクはまだ16才でしたから。楽勝でスリ抜けられましたよ。
帰国後、リョウはさっそく販売にとりかかる。客は昔からのゲーム仲間20人。400本の在庫は3週間で底をつき、手元に40万の金が残った。諸経費を差し引き利益は25万である。彼はこの金の半分を次の仕入れに回す。そして、まもなく念願の同人誌が完成する。原稿、デザイン、校正のすべてをー人でこなし、お見せするのも恥ずかしい出来らしいが、初回に刷った300部はすぐに完売。増刷分の200部と合わせると500冊売れた。こうして新たな顧客獲得に成功した彼は、2カ月後の11年5月、再び秋山氏とタイへ飛ぶ。
ただ、この年の12月に秋山さんとはケン力別れしました。今さら悪口を言いたかないですけど、金にチョーだらしなくて。何度も平気で約束を破るし、さすがにキレちゃったんですよ。タイや香港のコネは開拓してあるし、17才になりー人でやってく自信もある。

で、実家に帰ってしはらくはコピー販売に力を入れてました。ただ、プレステだけじゃ売上げは30万もいかない。地元のゲーム屋のオヤジをエ口CDでたらしこんで、フライング販売(発売日前に売ること)で最新作を入手したり、タイから郵送してもらったんだけど、どうにも頭打ち状態なんですよね。

そこである日、事業を広げることにしたんです。エミュレータ(昔のゲームをパソコンで動かす)ソフトやエ口CD、工口ゲー・与ワケわかんないでしょうけど、客層をオタクに絞り、CDを作ったんです。といっても、マニアックなゲームデータをギュウギュウ詰め込むだけの単純作業です。ー日もあれば楽勝かな。
これがバカウケしちゃって、ー枚5万でも飛ぶように売れた。多いときで月100万は稼いだかなあ。オイシイ顧客ってのは今も常に20人くらいいて、毎月10万20万とお布施してくれるんですよ。で、独立して2-3カ月経った頃かな。タイに住んでる金子くん(仮名)っていうバイヤーに一緒に商売やらないかって誘われまして。

彼は現役の某工リート大学生なんですか、とある企業のバンコク支店長も務めてて、23階建てマンションの最上階に、現地の愛人と暮らしてるっていう。半信半疑でマンションを訪ねました。そしたら、もうビックリですよ。同じ23階の部屋に案内されて、

「今日からここに住めよ」だって。しかも、そこ、パソコンから海賊CD数百枚、タイの郵便私書箱まで、すべて揃ってんすよ。バンコクからネット経由で日本人にコピーCDを売ろうっていう腹なんでしょうね。でも、イキナリこき使われるのもイヤだから、「香港で新しい仕入れ先を開拓してくれたら、やってもいいっすよ」と条件を出した。彼、ソッコーで飛びましたね。
それを見て、ああ香港なんだなあ、と。ボクもここで愛人と暮らすのも悪くないなあ、なんて考え出したんですけど、でも結局、その夢は実現しなかった。金子くん、香港に行っても遊ぶだけで、何もしないんすよ。それから何力月後だったかな。現地のブローカーからメールが届きました。

金子君、ベランダから落ちて死んじゃったよって。冗談でしょ。と思ったけど、急いでチャイ君に確認してもらったらこれがマジ。投資した200万が、ー円も回収できなくて途方に暮れたみたい。それでクスリに手を出したもんだから一ですよね。毎日金子君にタイの愛人が怒りまくって、ベランダから突き落としたって話です。即死でしょうね。
結局、コピー商品と企業のヤリトリっていたちごっごなんすよね。片方が規制をかければ、必ず片方が抜け道を見つけ出す。デジタルデータで複製不可能なものは、この世にないっすから。基本的には子供にも容易にやれるし、アジア各国では野放し状態でしょ。。
ただね、所詮は日陰商売なんですよ。秘密を守れる客と、仕入れ先をキッチリ抑えとかなきゃ。なんでそんな基本的なことがわかんないんでしょうね。にわか商法はケガのもとってやつですか。ボクみたいに小学生のころから鍛えておかないと。

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