防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

ボディガード・用心棒という仕事は高収入

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政界VIPの身辺を警護する警察のSPが、高い能力を有したプロ集団であることに異論はない。ただ彼らは、あくまで「国を守る」という大義名分で動く。任務のためなら、命をさらすことも厭うことはないだろう。

しかし、ボディガードはあくまで商売である。金が目的といっても構わない。金のために体を張る。極道社会ならわからん話ではない。が、ボディガードは世間一般が認めた正業。いったい、どんな神経構造を持ってすれば務まるのか。やはり、報酬の魅力なのか。それとも、危険な状況に身をさらすに価する別の動機があるのか。または意外に我々が考えるほどヘビーな商売ではないのか。

今回、その疑間に迫るべく、ー人のボディガードに話を聞いた。田崎氏(仮名)45才。身長181センチ。空手2段、柔道3段。スーツの上からでも示たどの良さは十分うかがえる、キャリア5年目の現役だ。氏の年収は現在、2千万を超えている。
警察が動けない事案がオレたちに回ってくる

例えばヤクザと揉めてしまった。己の身を守りたい「身辺警護ボディガード」の文字が並んでいるではないか。頼むしかない。多少金はかかるかもしれないが、命あっての物だ。もはや一刻の猶予も許されないところまで、事態は進行しているのだ。

「実際、電話してみればわかるよ。そんなアブナイ依頼、どこかなか引き受けてくれない。ま、断られるか、他の会社にたらい回しにされるか。受けるても、1日40万とか50万とか高い金請求されるのがオチだから。けどウチは違うよ。断らない。とにかく社長がイケイケだからさ」

田崎氏が所属する警備スタッフは200人。約30人いるボディーガードはみな登録制である。

「お呼びがかかったときだけ警護に就く、まあ言や『賞金稼ぎ』みたいな仕事だな。報酬は内容にもよるけど、1日3~5万ってとこじゃないか。5万の仕事が3か月入りゃ500近くいく。悪くはないわな」

登録メンバーの大半は格闘技叫の有段者だ。依頼人を外敵から守るのだから、それも当然。とも想うが、ここまで腕に自信ありのメンバーが揃ったのには少し理由がある。「ウチの社長がT大学の空手部出身で後輩が集まるんだよ。

あの学校は『ー年奴隷、2年兵隊、3年殿様、4年天皇』が常識でね。

警察に就職したT大のOBから仕事が
「ほら、ストーカー被害みたいな、簡単に警察が動けない事案ってのがあるじゃん。そういう場合、こんな会社があるんだけどってウチを紹介してくれるって案配。本当、T大人脈はウチの生命線だよ。オレもT大かって?いや、それが違うんだな」

氏はどういう経緯で仕事に就いたのか。それは28年前。氏がまだ高校生だったころにさかのぼる。

「暴走族の総長やっててね。もうイケイケだったんだけど、あるとき、別の族にメタクソやられて、便器までナメさせられてさ。もう悔し<て悔し<て。それから強くなろうと思ったんだ」

ーカ月後、高校の柔道部の門を叩き、2カ月で黄帯、3カ月で茶、半年で黒、ー年後には2段と見る見る腕をあげていく。元来、ケンカは弱い方ではなかった。

「あと空手道場とボクシングジムにも通った。空手は2段、ボクシングは国体3回戦までいったんだよね。で、気がついたら、今みたいな体になってたってわけ」

高校卒業後は建築会社に就職する一方で、カーレースにハマった。月に数度は鈴鹿サーキットに顔を出し、向こう10年で国際c級ライセンスを取得。海外のラリーにも出場を果たした。人生を証歌していた氏は34才のとき道を踏み外す。

飲み屋で某広域暴力団の人間と知り合い、誘われるまま組織の一員となってしまったのだ。

「遅咲きっつーのかねえ。出世も早くって、金バッヂまで行ったのよ。けど、女房にガキができて目が醒めた。組とは大モメしたけど、どうにか足を洗ったんだ」

父親から、大学時代の後輩が社長を勤める警備会社を紹介されたのがちょうどこのころ。ボディガードに空きがある、という話だった。

「さしあたって仕事も見つからないし、ちょっとやってみるかなって。まあウチの会社じゃ異色だろうな」

要望はうだけ。移動は車にしてくれかくして、田崎氏が就くことになったボディガードという仕事。その説明に、他人の命を守るプロフェッショナルと言ってしまうのは簡単だが、具体的な中身はまるでわからない。ここで、基本的な仕事の流れから警護の実際まで、ボディガードの基本を抑えておこう。

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客から警護の要請があった場合、氏の会社では、まず営業担当が依頼人と直接面談し、詳細を聞く。どんな事情で誰からどんな危険なのか。
で、そこで必ず言うんだ。

『あなたに危険が及んだら体を張って守ります。しかし、こちらから相手には攻撃しませんよ』って。

その原則を外したら、過剰防衛だの傷害だの、オレたちが逮捕されることになるからね

被頼人がこの点に納得すれば、具体的な話し合いに入る。期間、時間、ボディガードの人数。もちろん、客の懐具合とも相談しなはればならない。ちなみに、料金は1時間あたり5千~1万円だ(ボディガードに支払われるのはその約3分の1)。

依頼人と契約書を交わした後、人選に入る。

「選ぶ基準ってのは特にないみたいだね。客が警護されてることを周囲に隠したいなら小さな男、その逆なら相手を威嚇できる大男。その程度じゃないか。オレは運転技術を買われることが多いかな」

次に、仕事に就くボディガード含め3者面談を行い、作戦を練る。客から提出してもらった向こうー週間のスケジュールをにらみ、必要のない約束を取りやめさせたり、シティホテルに住まわせたり。ボディガードが守る立場として要望を出すのもこの段階である。

「オレの要望は1つだけ。移動は必ず車にしてくれって、その条件だけは飲ませる。だって考えてもわかるだろ。狙われるならやっばり町中だし、そこを歩きでもしていればスキだらけじゃん。そんな状態で安全は保障できないよ」

いざ現場に入るときは、事前に地元の警察署に『挨拶』に出向く。どんな事情でどの人物をどの期間警護するので、ご配慮いただきたい。これは万が一、相手と格闘になった際、正当防衛を成立させるための予防線でもある。

装備品として催涙スプレー、手錠、特殊警棒、タイラップ(いわゆる指錠)などをスーツの裏に忍ばせることも忘れない。いくら腕に覚えのある彼らにとっても、最低限の『武器』は必要だ。

「警護の仕方ってのは、始終依頼人にぴったり付き添いながら、周囲に目を配る、としか言いようがないな。車なら追いかけてこないか常にバックミラーを見てるし、車を降りたら降りた依頼人を先導しつつドアの死角をチェックする」

会社へは6時間おきに状況を報告。といっても何も報告すべきものはなく怯えるほど、身に危険が及ぶことなど減多にない。

「何もないに越したことはなくても何もないとは言い切れないだから、警護の間はずっと気を張りつめどうし。肉体より精神麟の方が疲れるよ」

田崎氏が実際にかかわった具体的なケースをもとに、さらに詳しくボディガードの仕事ぶりを見ていこう。
依頼人・ソープ嬢

理由・客の男からストーキングに遭っている

警護期間1~2週間
「おいしいって?冗談言うなよ。依頼人には絶対手は付けないから。それにオレは妻も子もいる40男だぜ。もうそんなに元気もないよ」

異変が起きたのは、警護6日目のことだった。深夜、彼女を自宅に送り届けたところ、マンションの前でストー力ー本人が待機していたのだ。

「彼女の顔が引きつったからすぐにわかった。ひ弱そうな男だったな。もちろん身構えたし、何かアクションを起こしてくれば退治してたよ。けど、そいつは突っ立ったままでさ。おそらく相当ビビってたんだろな。ま、いずれにしろオレのやり方に間違いなかったんだって。彼女からはその後『おかげでストーカーがなくなりました」ってメールが会社に来たよ」

お次は、さらに危険度の高いこんなケース。
依頼人・某総合病院の院長

理由・ヤクザに粒致される可能性があるため

期間1カ月時間(自宅と病院の送り迎え)
ボディーガード氏を含め3人
土地がらみのトラブルが原因のようだった。
①家族を実家に帰す

②送迎用にスポーツカーを用意すること。

①は人質に取られる危険を回避するため。

②はカーチェイスになった場合を想定してのことだ。さすがに院長は首をタテに振った。車は田崎氏の希望を聞き入れ、スープラの6速ミッションを購入。また、その間の自分の住まいについて、シティホテルを利用すると言う。
「命がかかってるもんだもん、れぐらい協力してもらわないと。念のため、ホテルの窓にも絶対にづかないとも約束させたよ」

準備が整ったところで警護が始まる

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田崎氏が特に頭を痛めたのは院内での警護だった。言わずもがな、病院は誰でも自由に入りできるオープンな場所だ。相手が患者に混じって侵入してくるかわからない。自分は車内待機、ー人を院長の警護役、ー人を院内の巡回役とし、トランシーバを通じて送られてくる情報を聞きながら、指示を送るのだ。
しかし、敵は思いもよらぬところからやって来た。病院から依頼大を送り届ける途中、後方より不審な黒塗りの車が迫ってきたのだ。氏は迷わずアクセルを踏んだ。
まずは高速に乗り、時速200キ口でカーチェイス。バスターミナルでスピンターンをかまし、見事に追っ手を振りきった。

「バックミラーで院長を見たら死にそうな顔してたよ。だらしねーよな」

結局、これに懲りた院長は、その後、大人しくホテルで過ごすことと相成った。一方、逆に命を狙われているヤクザもいる。某組織の親分がそうだった。

「おかしな話なんだよね。ヤクザの世界じゃ、親の命は子が守るのが普通じゃない。それをオレたちに頼んでくるってのは、身内からも狙われてる危険があるってことだよな。さすがに気合いが入ったよ」

朝、姉さんの家を出て、組、カジノバー、キャバクラ、愛人宅まで。田崎氏は始終、親分と行動を共にした。

「愛人が何人かいて、泊まる場所もころころ変わる。けど、これが逆にラッキーだった。相手にしてみたら、狙いが定まらないからな」

結局、実際の危険に遭遇したのは一度だけ。親分の乗ったベンツに車が激突してきたのだが、ドライバーは他ならぬ田崎氏である。難なくカーチェイスで振り切った。
現在、氏はー年間限定で、さる政治家のボディガードに就いている。仕事は、省庁間の移動の際、車でセンセイを運ぶこと。通常の警護に加え『見ざる聞かざる』の神経が求められる任務だ。

「いや実際さ、日本がひっくり返るといっか、今にも戦争が始まっちゃうような話がぽんぽん飛び出してくるぜ。でも、オレは単なる運転手だから。なんにも聞いちゃいないよ」
ひとまず取材は終わった。が、このまま国際c級ライセンスの腕を体験しないで帰るのも惜しい。

「よかったら、乗せてもらえないですかね」

「そりゃいいけど、大丈夫?おしっこ漏らさない?」

「だ、大丈夫だと思います」

喫茶店の前から、スカイラインGTRに乗り込む。イグニッションキーが回ると、エンジン音が背中をふるわせた。爆音を上げて発車したGTRが、渋滞寸前の国道を縫うようにすり抜けていく。早くも私の手は汗を握っていた。首都高速に乗り、さらに車は加速を強める。

「あ、あのお…」「なに?」

「1つ…大事なこと、聞き忘れてたんですけど・・」

「なんだよ?言ってみなよ」

「田崎さんは、危険なボディガードなんて仕事、どうして続けてるんですか。やっぱり金のためですか」

「うーん…イヤじゃないからかな」「はい?」

「あんたは物書きだから、文章を書くのも苦にならないだろ」「え…は、はい・」

「オレは、命を張るってことがそんなにイヤじゃないんだ。意外にラクかもしんないな」

命を張るのがラク。なんで、そんな台詞を口にできるんだ。しかも、憎らしいまでにさりげなく、柔和な顔で。車は今、飯倉インターを過ぎた辺りだ。