防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

精神障害を利用して借金人生を生きる人間

オレが精神に異常をきたしたのは今から3年前、専門学校卒業後に入った自衛隊生活が5年目を迎えたころだ。2つ年下の婦人自衛官に恋をし、ストーキング行為を始めたのである。すでにフィアンセがいた彼女を、勝手に恋人と思い込み、朝から晩まで30分ごとに電話攻撃。挙げ句、デートを断ることに腹を立て、宿舎の便所で手首を切って自殺未遂をしでかした。我に返ったのは病院に閉じこめられて1カ月後のこと。いざ冷静になると彼女のことは頭から消えたが、そんなオレを担当医は霜神分裂病と診断したのである。
今思えば、確かに狂っていたとしかいいようがない。特に原因は思い当たらないが、強いていえば刺激のない駐屯地生活が妄想を引き起こしたのだろう。退院後、オレの居場所はなかった。自衛隊に精神障害者は要らないらしい。上官の遠回しな除隊勧告に従い、すっぱり自衛隊を辞めた。25才のときだ。

それでもオレは前向きだった。専門学校で身につけた情報処理技術を活かし、自分を派遺する人材会社を設立、某有名企業との契約にこぎつけた。時給3千円、月50万の報酬は破格の条件だ。しかし、自衛隊でのぬるま湯生活に慣れていたオレに、1人で社内用パソコンプログラムを作る作業はかなりのストレスになった。会社が終わるやパチンコ、風俗をハシゴする毎日。1万2万だった軍資金が5万10万になると、当然のようにサラ金通いが始まった。

当初、借りてはマメに返していたことで信用が付いたのだろう。間もなく融資限度額が拡がり、あっという間に多重債務者となった。クレジット2社、サラ金5社で合計400万強。月の返済は利息だけで6万に膨れ上がる。このままじゃ先がない…。追いつめられたアタマに浮かぶのは、こんなはずじゃなかったという限みばかり。〈隊に残っていれば、国家公務員として安定した生活を送れたのに…。

クソ、これもすべては病気のせいだ。あの医者が認定した精神病のお陰だ。こうなりゃ、徹底して精神障害を利用して生きてやろうじゃないか
風俗の領収書を接待費と計上し控除
精神障害者に、障害者手帳や年金が付与されることは、以前、買いあさった精神病の専門書で知っていた。オレは自衛隊で共済年金を払っていたし、もちろん初診日も入隊中だ。資格は十分、ある。問い合わせてみると、案の定だ。自衛官は国家公務員ゆえ、申請すれば年に70万ほどの年金が65才まで支給されるという。これを放っておく手はない。さっそく診断書を書いてもらうため近所の精神科へ出向いた。

「あんたはうつっていうより分裂かな。前のとこは何て言った?」

診察室で医者がオレに聞く。それを判断するのがお前の仕事だろ、と口に出かかったが、かろうじておさえる。屈理屈こねて、病気じゃないといわれたら元も子もない。「確か、精神分裂病って言われた気がするんですけど・・ハハ」

とりあえず気が弱そうに笑ってみる。

「ま、精神障害ってのは一生、治らないからね」

え、ど、つい、つこと?

「精神障害には明確な基準などないんだ。骨折や風邪なら検査すればハッキリわかるけど、人の心を計るモノサシなどないからな。つまりさ、この病気は症状がよくなっても完全に治ったかどうかなんて誰にも決められないのよ」

なるほど。オレだって、自分が病気だと感じたのはあのときだけ。
しかし、そんな生活も2年目を迎えるころから回らなくなった。昼からパチンコ、ソープとハシゴ。サラ金の限度額までめいっぱい借り夜どおし遊んで朝方寝るのだから、間に合うワケがない。

金を返せと取り立てが押しかける毎日。メシ代にもコト欠くとはまさにこのときのオレだ。親に泣きつこうにも、こんな身の上じゃ、親の方が泣きたいぐらいだろースとりあえず、日銭を稼ごうと、飲み屋で知りあったミナミ(仮名)を呼び出した。以前、睡眠薬を売ってくれと頼まれたのを思い出したからだ。そのときは聞き流したが、考えてみればオイシイ話じゃないだろか。手帳があればタダでクスリをもらえる。それをヤツは1錠1千円で買ってくれるというのだ。しかし、ミナミは、オレが何軒か病院を回って集めた睡眠薬に渋い顔を見せた。

「あれ、内丸さん、ハルシオンが10錠しかないよ」

「え、でもその白いのもキツイ睡眠導入剤だって言ってましたよ」
「そうかもしれんけど、やっぱハルシオンじゃないと、食い付きが悪いんだよな」

ヤツがいうには、一般的に睡眠薬ーハルシオンというイメージがあるため、他の眠剤は買い手がいないのだという。

「ハルシオンか、ウルタミンとか赤玉とかさ、その辺の有名どこじゃないとな。今日はとりあえず1万にしかならないな」「……」

がっくり肩を落とすオレに、ミナミが言う。

「そんなに困ってるなら協力してやるよ。いい手があるんだ」「え?」

「とりあえず、オレんとこに住民票移せ。借りたのはサラ金だろ。そんなのしばらく逃げてりゃ踏み倒せるよ。今の部屋を引き払えばサラ金は住民票を取ってオレんとこくるから、追っ払ってやるよ」

ミナミの有り難い申し出に感謝しつつ、オレはさっそくアパートを出て、家財道具を愛車のマーク2に積み込んだ。そして向かった先が区役所の福1祉課。こうなりゃ、生活保護をもらうしかないと考えたのだ。

「事業に失敗して、借金取りに追われてるんです。アパートにもいられないんで、いまは車で生活してる有様で・・」

普通なら、働けと言われるのがオチだが、オレには伝家の宝刀、障害者手帳がある。「働きたくても働けないんですよ」

窓口のおばさんは同情的な眼差しでオレを見ながら言った。

「生活保護を受けるには定住所が必要なんですよ」

「いえ、住民票はちゃんと友人のトコにありまして・・」

「でも、そこに住んでらつしゃらないんですよね」「まあ、ええ」

「それですと残念ながら・・」

車で寝起きしていると強調したのが裏目に出てしまった。住む家がないからこそ保護を受けたいのにおかしな法律だ。1時間近く粘ったが、おばさんは親元に帰った方がいいと繰り返すばかりだった。
精神病院に入るため睡眠薬で自殺未遂

何か助かる方法はないものか。
重い気持ちで本屋に入り、福祉関連の書物を立ち読みしていると、光り輝く一文が目に飛び込んできた。精神病院を出ても帰る先のない人問を救済するためグループホームという共同住宅施設が増えていま芝これだー本屋を飛び出し、すぐさま近くのホームへ車を走らす。

「あの、ここに入居するにはどうしたらいいんでしょう・・」

借金の理由は別にして、正直にいままでの事情を話した。と、対応してくれた職員は、「空きがありますからどうぞ」と満面の笑み。なぜ、こんなに親切なんだろうと思ったが、その答は入居手続きのときに明らかになった。てっきり自治体の施設と思っていたら、有志のボランティア団体が運営しているため、家賃がかかるのだ。毎月2万5千円+食事代1万5千円は払えないことはないにしても、入居時には部屋代の他に敷金として2カ月分、さらに光熱費だなんだと10万円近くも要る。

「とてもそんな金はありません」
「…そうですか、まあ、とりあえず今晩はここに泊まってってください」

優しいことばに甘え、6畳ほどの個室に腰を落ち着ける。ここがダメなら、他にタダで潜り込めるとこを探さないとな。地域生活支援センターは宿泊できないし、残るは病院か。入院しちまえば、タダでメシも出る。かと言って、自分から「入院したい」と申し出るのはおかしいし…。

いや待てよ。自殺未遂をやらかせば救急車でかつぎこまれて、ソク入院じゃないか。簡単だよ。手元には、ミナミに売った残りの眠剤が50錠ほどあった。オレは死なない量を確認した後、それを一気に口に放り込んだ。
ベッドの上で気つけ生活保護が下りてい

目覚めると、予想どおりそこは精神病院のベッドだった。閉鎖病棟に入れられたのは計算外だが、ま、この際、賛沢は言うまい。自殺未遂ぐらいインパクトあることをやれば、勝手に回りが動き出す。タダで暮らせるだけで万々歳なのに、病院のケースワーカーがわざわざ「入院日に遡って生活2保護の申請をしときました」と、報告に来るのだから笑いが止まらない。病院で事故の事情を聞かれたホームの人が、生活苦で自殺を図ったと説明したらしい。

お陰で入院費用はお国持ち。その上、生活費として毎月2万7千円のお小遣いまでもらえることになった。とりあえず、これで生活は保障される。となれば、残るは借金問題だ。おそらく元金だけで600万を超えてるはずだから、利息を足せば700や800はいく。どうすりやいい・・

それとなく、医者に相談すると、すぐに区役所のケースワーカーが病室にやってきた。何て切りだせばいいんだろう。迷ってると、向こうが先に口を開く。

「借金のことですね」聞けば、生活保護申請のため移した住民票を追いかけ、取り立てが病院まできたらしい。が、そこはプライバシーを慎重に扱う精神病院きっちりと追い返したそうだ。