防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

他人になりすまし保険証でサラ金から金をパクる輩の手口

サラ金から金をパクる.取り上げられてきたベーシックな犯罪だが、その際、必要不可欠ともいえるアイテムが身分証明証だ・それを所持する人間が、記載された当人と同一人物だと証明され、初めてサラ金は金を出す。
そこで、よからぬ連中は一計を案ずる。他人の保険証を盗み本人に成りすましたり、免許証を偽造したり。
しかし、プロの目は簡単に欺けない。融資の際に行われる様々な確認手続きの過程で偽装が発覚する危険は決して低くない。
では、それが確かに当人の身分証でありながら、当人自体が架空の人物であった場合はどうだろう。
まどろっこしい言い方で恐縮だが、オレが手にした保険証は、本物であって本物じゃない、まさに魔法のアイテムだったのである。
1年前。近所の居酒屋で、遊び仲間Kの就職祝いを開いたときのことだ。

「しかし、オマエも仕事見つかってよかったやん」
「うるさいわ。これでも正社員やぞ。尊敬せい」
「なんちゅう会社やったつけ?」
「○○(某家電メーカー)の工場や。簡単やったど、面接受けただけでその場でOKやもん」
「ええかげんやのう」
「資格も職歴も適当に書いたのに、全然突っ込まれへんしな。世の中甘いわ・ワハハハ」
Kと別の仲間が交わす会話を聞きながら考えた。バイトを辞めて半年、パチプロ生活にも飽きを覚えていたころだ。そんなに適当な面接ならオレも受けてみようか。
最初はその程度だった。
その夜、改めてKの話を思い出してみた。資格も職歴も適当。つまり、会糾時側は履歴書賑書かれた内容など確認しないということだ。
ならば、ウソ八百並べてもOK。極端な話、違う名前を書いてもバレないんじゃなかろうか。実はオレには、誰にも言ってない秘密があった。生まれ故郷の四国で車のローンとサラ金、合わせて300万の借金を作った挙げ句、ぜんぶまとめてバツくれ、大阪に
逃げてきたのだ。実家には今も督促が入ってるが、絶対居場所を教えないよう、親に言い含めてある。まったく、とんでもないバカ息子だ。
むろんブラックリストに名前が載るお尋ね者だから、これ以上借金はしない、できるわけもない。サラ金の追っ手から逃れられただけでも十分だ。
しかし、オレにもまだチャンスはあるらしい。Kの言うとおり、面接に応募してきた人間の履歴、さらに本人確認を行わないなら、別人に成りすましても入社可能ということだ。そして、そこで会社が発行してくれる社会保険証を手にサラ金に行けば…。素晴らしい。素晴らしすぎるではないか。
同じダマすとしても、これが他人の保険証や偽造保険証を使った場合だと、サラ金が融資の際、必ず行う勤め先の在籍確認に小細工が必要になるだろう。が、本物の社会保険証であれば何も心配は要らない。だって、オレは正真正銘、その会社の社員なのだ。
問い合わせが来ても

「××はただいま席を外しております」などと、相手が納得するに十分な回答を返してもらえるのである。さあ慎重に絵を描いてみよう。
まずは、名前、生年月日、現住所、職歴がすべてデタラメな履歴書で面接に臨み、適当な会社にもぐりこむ。会社から社会保険証を頂く。そこには、履歴書と同じ架空の情報が記載されるはずだ。
別人に成りすまし、サラ金で融資を受ける。何社からどれほどシマめるかは定かではないが、少なくとも200万はいきたい。
金はもちろん返さない。借りまくった後は早々に退社する腹だ。督促が会社に来たところで、知ったこっちゃない。どの道、履歴書にはウソの情報しか記載してないのだ。オレに辿り着くのは不可能だろう。
待て。一つネックがあるぞ。自宅の電話番号はどうしようか。対会社的にはデタラメでもよかろうが、サラ金は会社の在籍確認同様、自宅にも確認の電話を入れるかもしれない。そこでもし「現在使われておりません」なり、見知らぬ他人が出たら一巻の終わりだ。どうせなら、一般電話は引いて携帯だけということにするか。いや、学生ならいざしらず、自宅に電話もない社会人を、会社はもちろん、サラ金が信用するとは考えにくい。やはり、ここは何かしらの番号を用意しておく必要がありそうだ。
考えた結果、電話帳に記載されている適当な企業のFAX番号を自宅のそれに住っことにした。留守の際は、FAXに切り替えているとでも言っておけばいいだろう。
ただし、番号を決めたら、住所はその市内局番に近い所番地にしておかねば不自然だ。
さて、他に抜かりはないか。あるのかもしれんが、オレの頭じゃわからない。とにもかくにも、正社員として会社に入り、社会保険証をゲットするのが先決だ。
さっそく、オレはコンビニで買った「ガテン」で、会社選びに取りかかった。
狙うは、社会保険完備の建築事務所だ。卒業後、就職したのが地元の小さな建築事務所。入社直後に些細なことで直属の上司とつかみ合いのケンカとなり、退職を余儀なくされたが、そこでの経験を面接でアピールしたい。
むろん、会社の名前やキャリアはウソを付くとしても、多少なりとも知識のあるジャンルの方が受け答えしやすいだろう。
あとは適当でいい。出身は、昔の彼女の実家があった岡山県倉敷市××町。生年月日も彼女の誕生日をいただこう。乙女座のへビ年だな。
名前は、この週刊誌に載ってるヤマダナオキでどうだ。山田直樹。
いや、尚喜にしとくか。自宅の番号はあらかじめ探しておいた某ホームセンターのFAX番号。面倒くさいから現住所もその番地をまんま使い、最後に大野荘203とでもしときやいいだろう。
何から何までデタラメな履歴書を、大阪市内の某建築事務所に送って1週間。

「昼間出ていることが多いので、連絡は必すここへ」と番号を記していたオレの携帯に、電話がかかってきた。2日後の午後1時、面接試験を行うので来社願いたいとのことだ。さぁいよいよ本番である。
当日。オレは髪を七三に分け、友人に借りたコナカのスーツを身にまとい面接に挑んだ。外見から与える印象は重要ポイント。なるべく好感度はアップしておきたい。
な’に、どうせ面接自体は何も突っ込まれやしない。しかし…。
「山田尚喜さん…。じゃあ履歴書にもありますが、改めてご本人から経歴を教えていただけますか」
テーブルを挟み、目の前で4人の男がオレに注目していた。主任、部長、堂携に社長。おいおい、なに勢揃いしてんだよ。勘弁してくれって。
「ハイ、××工業高校を卒業した後、○○設計事務所という所に入って主に事務所や店舗などの設計を手がけていたんですが、もっとやりがいのある職場を求めて先月大阪に出てきました。その点、御社は…」
緊張しながら話すオレに常務が突っ込みを入れる。
「○○さんには、昔、知り合いがいてね。まだ、△×商事さんとは取引あるの?」
△×商事?なんだよソレ。余計なこと間くなよ◎
「あ、はい。確か、今もお付き合いさせていただいてるかと…」
「ヤマダ君…CADは使えるんだよね」

今度は主任だ。

「ハ、ハイ。以前の会社でもやってましたかり、心配ありません」

もういいって。どうせ採用してもすぐ辞める人間に、そこまで聞いてどうすんだ。

「では、具体的に教えてほしいんですが・・」

主任が身を乗り出したとき、オレは覚悟を決めた。通るわけないやんけー
自分でも何が評価されたのか、さっばりわからない。あれだけシトロモト口になったら不採用、とっとと他の会社を探そうと思っていたところ、面接から2日後、予想もしない合格通知が携帯に届いたのである。まったく、節穴かよ、アンタら。

思わずこぼれる笑いを、どうしても止められない。しばらく大人しく仕事して、保険証が与えられたらサラ金回り。がっぽりツマんんで、とっとと逃走。それを繰り返していけば……。人生安泰。いやあオレは天才じゃねーか。
僅かながらも経験があるだけに、職場でもまずはソツなくこなせた。同僚、上司の受けも良かったように思う。しかし肝心の保険証がなかなか出てこない。入社してそろそろ2週間になるといっのに、どないなっとんねん。

「主任、歯医者に行きたいんですけど」「うん?」

「あの、保険証は・・」「ああ…そうかあ。もうちょっと待ってくれ、山田君」

はよせんかい、はよ。オレはこんなカッタルイ職場、一刻もはよ辞めたいんじゃ。それに、その山田君って言い方。オレは島村やちゆーねん。呼ばれても気つかへんちゆーねん。どうにも居心地の悪さを感じつつも、さらにハッタリ社員生活を送ること2週間。ようやく待望の保険証が手渡された。

ハハハ、完壁やないか。さっそく、オレは実践に移すことにした。最初は、事前に審査で「30万円まで融資可能」との回答が得られていたプロミス。無人契約機はオレに融資を許すのか。
「いらっしゃいませ。緊張してらっしやいます?」
機械の前に座ると、いきなり壁の向こうから若い女が話しかけてきた。緊張してるかって?そんなもん、してるに決まってるやろ。
「当社は初めてのご利用で?」
「え、はい…」
「旅行か何かですか」
「いえ、この前パソコン買ったんで、アビバに通おうかなって」
「ああなるほど」
特に怪しまれてるようには感じない。いや、怪しまれるわけがないではないか。ここにいるのはブラックリストに載った島村敬じゃなく、真っ白けの山田尚喜なのだ。手を震わせる必要はない。汗なんかかくことないんだ。
「30万円までご融資可能ですね」
女の声が聞こえ、続いてヤマダナオキの名が刻み込まれた力ードが差し出された。どうやら、オレは事を成し遂げたらしい。
後は一気だった。
翌日アイフルに電話で事前審査を申し込むと、これまた30万まで融資可能とのこと。ところが、実際、契約機まで足を運べば、さらに枠が広げられるという。
「山田尚喜様ですね。データを見たところだったんですが、50万円ぐらいまで融資可能かと」
バカやの、そんなに増やしてどうすんねん。なになに、今月はキャンペーン期間?いま枠を広げた方がお得?そうかいそうか
い。んじゃ遠慮なく、お言葉に甘えさせてもらうわ。こうして、オレは1週間で、計
7社から金をかき集めた。ディックで他で借りられてますねと断わられ、アコムで「なんですか、この借り方は」と説教までされたが、それでも250万円シマめればヨシとしよう。
オレが「一身上の都合を理由に会社に辞表を提出したのは、その3日後のことだ。

現在、オレは別の建築事務所で働いている。「西岡保志」名義の保険証が手に入るまで、あと2週間。もう少しの辛抱だ。

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