防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

小さなトラブルに悪用される少額訴訟制度

私自身がトラブルメーカーなのか、それとも周りに素行の悪いヤシが多いからか、年がら年中モメごとだらけだ。
自分から誰かに喧嘩を売るようなことは少ないが、その反面、因縁付けられただの、事件に巻き込まれただのは日常茶飯事。不道徳な暮らしを送っていれば、こうしたトラブルは避けて通れぬようだ。ところで、ひとたび問題が生じたとき困るのが、いかに後始末を付けるか。わかりやすくいえば、いかに首尾良く金に換えるかということだ。
金になるトラブルが比較的スムーズに解決するのに対し、金になりそうもないトラブルの交渉は難航する傾向にある。相手が、些細な問題としてとらえ、なかなか交渉の土俵に乗って来ないからだ。むろん、脅して決着を付けるという方法もないわけではないが、実入りとリスクを天秤にかけて考えれば馬鹿馬漣しいだけ。たかだか十数万円の恐喝とやらで捕まりたくない。
では何もやらずに放っておくのかというと、あいにくそこまで私は善人ではない。頂くものはしっかりと頂く。しかも、合法的な方法によってだ。そう、裁判所に訴えるのである。

悪党が裁判所に助けを求めるのか…などと笑ってはいけない。使えるものは何でも使うのが悪党の流儀というもの。実際、企業恐喝などでメシを食ってる連中は、しっかり裁判所を利用しているものなのだ。
皆さんは「少額訴訟制度」なるものをご存じだろうか。最近の例でいうと、悪徳不動産屋が、引っ越しの際に修繕費の名目で敷金を返さないトラブルが頻発、これを簡単かつ敏速に解決する手段として新聞やテレビなどで紹介された裁判システムだ。
知ってのとおり、普通の裁判は、金と手間と時間と労力がかかる。よほどの大金が絡み、もはや裁判所に訴えるより他にないなら話は別だが、通常は誰しも裁判などに関わりたくない。
結果、裁判所はますます庶民にとって縁遠い存在となり、引いては一般市民が正当な権利を主張することすら困難になっていくのだが、さすがにこれではよろしくないと、民事訴訟の大幅な簡素化を目的に作られたのが、少額訴訟制度だ。
では、この少額訴訟が普通の裁判とどこが違うのかというと、これはもう基本のルールからして全くの別物。なにしろ1日で決着が付くのだ。いきなり裁判が始まって、その日のうちに口頭弁論を終えて、判決が言い渡される。長くても2時間はかからないはずだ。まったくもって便利なことこの上ないが、一方、少額訴訟には通常の裁判にはない制約がある。
一つは、訴訟対象が、金銭を要求する場合のみに限られている点。具体的には、敷金を返せとか、貸した金を返せとか、損害賠償しろとかいった類はOK。逆に不動産を明け渡せなどの訴えは認められない。
また、1人の人間もしくは法人が1年間に起こせる少額訴訟の件数は10件までと決められている。これはサラ金などか債権回収のため少額訴訟を乱発するのを防ぐ目的があるようだ。
そして、ここが重要なのだが、少額訴訟では金額の上限が決まっており、これが30万円まで。かなりキッイ制約だ。
例えば交通事故で軽く接触してムチウチになったとしよう。定石どおり、保険金を巻き上げるあの手この手を使えば、どう考えても70万円は頂ける。これは治療費だの休業補償だのを除いた、純粋な慰謝料としての額だ。
仮に保険会社が代理人として弁護士を立てたとしても、それだけの金額がもらえるのだから、当然裁判をやっても同程度の金額は出る。これでは少額訴訟の出る幕はない。
喧嘩などで誰かに殴られて怪我をした場合も同じようなもの。医者に行って診断書をもらい、これまた定石どおりの金を巻き上げる手法を駆使すれば、30万円で収まるわけがない。さらに、人妻に手を出して情事が発覚ともなれば、もう一桁上での話し合いになるだろう。
と、このように一度金絡みのトラブルが生じた場合、それを少額訴訟で解決できる場面は想像以上に少ない。
つまり、少額訴訟は前記したとおり、大した問題ではないものの面子にかけても金は頂きたい際に利用するのがいちばん賢いやり方なのである。
ちなみに、訴訟費用は請求金額5万円につき500円。満額の30万円請求でも、たった3千円と格安だ(プラス通信費などの名目で5千円程度を予納する必要あり)。
さて、私が初めて少額訴訟を使ったのは数年前、まだ制度ができたばかりのころだ。
ある日、暗い夜道を歩いていたら、目の前から無灯火の自転車が走ってきた。よく見れば、どこかの小僧が偉そうな態度でふんぞり返って自転車に乗っている。
なぜかカチンときた。たまたまその日、イヤなことがあり気分が悪かったせいだろう。とにかく、私は何気なくその自転車にぶつかってみることにした。
もちろんモロにぶつかっては、こちらも怪我をするし、相手も転倒したりして大変だろうから、あくまで軽く接触。

相手はポカンとした顔をして私を見ている。酒でも飲んでるのか、思考が回らない様子だ。そこで、すぐさま携帯電話から110番。いくら相手が自転車でも、これはれっきとした交通事故だ。
まもなくやって来た警官に事情を説明する。当然、すべて相手が悪いの一点張りである。と、コイッがまた素直に、無灯火も飲酒も認めやがる。

ならばこの場はとりあえず収めるかと、一筆書かせた上、身元を確かめ解放したやった。
しかし、ダダでは済ませないのが私のやり方。翌口から肩が痛いと病院に通った。診断書を取るのは当然。1週間後、肩がまだ痛いくまで軽く接触し大袈裟に後ろにと言い通し、いわゆるリハビリを認めさせた。
やはりより多く、かつ確実に慰謝料をふんだくるためには、治療期間がモノを言う。この点においてリハビリは、治療期間を伸ばす絶好の手段だ。
ただ注意しないといけないのは、治療費と慰謝料の関係だ。少額訴訟の請求額は30万円までだから、治療費に25万円もかかれば、慰謝料の理論的上限は5万円となってしまう。それでは少しもおいしくない。ケガの部位や程度にもよるが、週1〜2回病院に通ったとして、2〜3カ月程度がちょうどいいのではなかろうか。
ちょっと話が逸れるが、勘違いする読者がいるといけないので書いておく。一般的には損害賠償というのは利益にはならない。こちらが損失した分を相手に払ってもらい、穴埋めするだけなのだから、何かイカサマでもしない限りこれで儲けるのは無理だ。
儲けになるのは、いわゆる慰謝料だけなのが普通。よって、いかに沢山の慰謝料を頂ける方法を考えないと、民事裁判で儲けるのは難しいと言ってよい。
さて、そろそろ通院も飽き、決着を付けるかと思い立ったところで作戦開始。簡易裁判所に行って、少額訴訟での裁判の手続きを取った。これは誰でも書けるくらいに簡単だ。
それから待つこと数カ月、いよいよ裁判の日がやってきた。こちらの準備は万全。事故証明の書類に、医師の診断書、病院から貰った治療内容の詳細に、医療費の領収書。その他もろもろの「証拠」が揃っている。
さすが小沢は悪いことにはマメだな…と思うなかれ。少額訴訟という短期決戦では、その日のうちに証拠を提出し、こちらが正しいことを裁判官に認定してもらわないと、裁判で負けることがある。
逆に言えば、いくらこちらが正しくてもそれが通らない場合があるところが、無理やり超短時間で問題を解決する少額訴訟の恐ろしい面でもあるのだ。
とはいえ、裁判の結果は、言うまでもなく私の圧勝。ちゃっかりと満額を頂いてきた。相手は呆気にとられていたが、少額訴訟の何たるかを理解せずに、のこのこ裁判所に出っ張ってくる方がバカなのだ。
参考までに言っておくと、少額訴訟は裁判というより調停に近い雰囲気だ。行われるのは法廷ではなく、小さなテーブルが置いてあるだけの部屋。客観的には、何かの会議みたいな情景だ。
そして短時間1本勝負のためか、裁判官が矢継ぎ早にいろいろと質問してくるのに面食らう。あらかじめ予想される質問には、説得力のある答を用意しておいた方がよさそうだ。
ただ、どうも裁判官は最初から判決を予想し、それを裏付けるために質問している向きも感じられる。見方によっては、一方に肩入れしてるように思えなくもない。
また、最終的に必ずしも判決を言い渡されるわけではないのも少額訴訟の特徴だ。多いのは「こういった条件で和解しませんか?」
と言われるケース。裁判官自身も少額訴訟はかなり強引な制度であり、判決を言い渡しにくいとでも思っているのだろうか。もちろん和解を拒否すれば、当然判決を言い渡してくれるのだが。
ここまで読んで、少額訴訟を悪い金儲けに利用できないか考えてる人も少なくないだろう。
この場合、やはり「証拠」が一番の問題となるので、それを証明しやすい手口を選んだ方が得策だ。わざと喧嘩して、ケガを装って病院に通い、慰謝料を巻き上げるのもいいだろう。警察が入れば、相手も記憶に無いとは言えまい。もっともこの場合は、最初にそこそこ高額の慰謝料を請求しておいて、それでダメなら少額訴訟と、保険的意味合いで活用した方が良さそうだ。

※この記事はフィクションです。防犯、防衛のための知識として読み物としてお読みください。実行されると罰せられるものもあります。