防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

疎遠な人・親や親戚縁者がいない人のための保証人斡旋業

角谷氏が、なぜこの商売を始めたのかは後述するとして、まず初めに保証人斡旋業がいかなるシステムで成り立っているのかを説明してもらおう。
「保証人を求めている客に保証人になりたい人間を紹介する。大ざっぱに言えばそれだけですよ。ただ、リスクのある客かどうか見極めるのが問題でね」
夕刊紙やインターネットの広告を見た客の問い合わせが日に平均7,8本。基本的に金融の保証は断り、不動産のみを受け付ける。
客と面談し、さらに物件を自分の目で確かめてから保証人のデータを渡す。これでもらう手料は家賃1カ月分だ。そのうちから保証人に2割程度を渡す。印象としては、ずいぶん格安だが。
「こんなもんですよ。うちに依頼に来る客の平均家賃が20万ぐらいですから、仮に月”件まとめれば、それだけで十分でしよ。だってリスクって何が考えられます?家賃の滞納でしよ。そんなの、やり方しだいで防げますからね」
ほとんどの不動産屋は保証金や敷金として2〜3カ月分の家賃を事前徴収している。これを利用すればいい。予め大家に、1カ月でも家賃を滞納した際は連絡をもらえるよう話をつけておくのだ。その時点で異変に気つけば、滞納分も敷金で相殺できる。
仮に滞納したまま居座りを決め込む客がいたとしても、事前に取り交わした念書を持って立ち退きを要請すれば開き直るのは不可能。
なお執勤な場合、それっぽい雰囲気を演出して眠みを利かせばこと足りる。
「商売柄、いわゆる占有屋さんとのおつきあいも多いんですよ。だからその手の問題は彼らの手に委ねちゃったりね。でも、そんなの、数えるほどしかないですよ」
確かに、トラブルさえ回避できればこれほど確実な商売もない。
しかし、角谷氏が言う客の見極めはそれほど簡単ではない。過去には保証人斡旋業者が思わぬ利用のされ方もした。
「オウムの事件があったでしよ。あのとき彼らは保証人斡旋システムを利用して部屋を借りまくってたんですよ」
他にも海外脱出した過激派が国内に舞い戻り、居所を転々と替え潜伏していたケースなどにも紹介屋が介在したらしい。
「今だに宗教団体等は我々とすごく密接な関係にあって、連中とどうつきあうかがそれぞれの業者の器量じゃないですか」
依頼を受ける基準は道徳よい自分の正義
角谷氏の事務所を訪れる客は大まかに三者に分けられる。保証人を探すこと自体おっくうか、親や親戚縁者がいない、もしくはそれらと疎遠な人。孤独を好む女性。
ストーカー撃退などの特殊事情だ。なるほど、両親を早く亡くし、誰とも濃い人間関係を結ばず淡々と生きる人間は私の傍にもいる。
そうでなくても親と不仲であったり、勘当されたり。リストラされるかもしれないという状況で、会社の同僚にも頼みづらいなんて人もあるだろう。
また、プライバシー保持のため、電話しか連絡手段を持たぬ人間は、保証人すら煩わしいのだ。
「誰にも居所を知られたくないっていうのは女性に多いんですよ。で、割り切りが早い。お金で済むものなら済ませりやいいじゃん、みたいな。水商売のコは客にウインクでもすればいくらでも保証人のなり手はいるでしょうが、落ちぶれてるソープ嬢とか、パトロンやヒモをつけたくないっとかね。他人に住まいも知られたくないって人は意外に多い。僕としては外国人も歓迎なんですよ。出稼ぎに来た連中じゃなく、日本でビジネスをやろうって人たち。国民金融公庫なんか、いくら金があっても外人には冷たいですからね。そういう人脈をつかめば、仕事が続々と入るんですけどね」
保証人だけでなく、自分の名前で登記するのも嫌だという場合は、名義貸しもするそうだ。
「実は、保証人斡旋ってのは単なる窓口なんですよ。保証人を頼んだ客が、次は自分の名義じゃない携帯がほしい、架空口座がほしいってどんどん仕事が広がっていく。人間が生きていく上での問題を解決するのがいちばん商売として面白いでしよ」
金融の保証人は紹介しないのが建前だが、客の対応しだいでは引き受けることもある。
「なんていうか、僕は気まぐれなんですよ。ヒアリングの段階で相手の答え方が気にくわないと断るし、電話で一生懸命さが伝わってくれば金融でも「こいつをなんとかしてやらなきゃ」って思っちゃうんだ」
金融の保証人を求めて問い合わせてくる客のほとんどは、多重債務者だ。新たにまとまった額を借り、各社に散らばる借金を返済して一本化を計ろうというのである。
悪徳金融はそこに目をつけ、連帯保証人を付けてくれれば低利で融資しますと誘う。が、金融業者は借金が減らないようシステムを細工。保証人の担保物件を狙う。
「相手の手の内はわかってますから保証人をねつ造しちゃうこともありますよ。僕の正義感っ
てのは世の中の道徳とは少し違う。悪いこともしてると思いますよ。でも、自分の正義を曲げてまでとは思わない」
保証人の名義貸しは割のいいサイドビジネス
それこそいちばん聞きたかった点だ。多少の金が入るとはいえ、誰が進んで見も知らぬ他人の保証人になるのだろう。
「それは秘密です」
最初は口の重かった角谷氏が、やがて思い立ったように財布から免許証を取り出した。氏の顔写真入りだが、名前は別のもの。住所も全くのでたらめという。
「これは依頼人に見せる名刺代わりのシロモノなんですよ。こいつちょっとなめてるなと思ったときに「オレはこんなネットワークもあるぞ」ってデモンストレーションするわけです。」
なるほど。免許証が偽造できるくらいなら、保証人をでっちあげることも可能だろう。通常の物件なら、勤務先への在籍確認がせいぜいだ。もしかして、氏の斡旋する保証人はまったくの架空?
「いや、そんなことありませんよ。ちゃんといます。保証人紹介の広告をみて連絡してくるのは客だけじゃなく、保証人になりたいって人も多いんですよ。保証人を紹介した客が逆にやらせてくださいって言ってきたりね。みんな、割のいいサイドビジネスと思ってるんじゃないですか」
保証人請負人も借金で首が回らない人々が金のために、とイメージしていたが、現実はさっぱ
りと現代的だ。
「一番いいのは公務員とか会社役員とかですけど、実はそんなのどうでもいいんですよ。勤務先なんて有限でも株式でも休眠会社が30万ぐらいで売ってるじゃないですか。うちにもそんなのがありますから、役員登録しちゃうんですよ。
課税証明が必要になったら、修正申告すればいい。役員なら給与所得者じゃないから、所得が多いことにしても減税方法がある。結果的に1万くらい納税すれば済むんです。けど、納税証明まで要求する物件はそう多くない。普通は収入証明ですから給与明細一つで済みます。それもちゃんと作りますよ」
レッキとした公文書偽造だが、角谷氏の毅然とした話ぶりからはなぜか犯罪の臭いがしない。
「我々の仕事は何があっても保証人を守り切らなくちゃビジネスとして成り立たないわけです。だから元々ちゃんとした人物でも1回住所をヨソに飛ばして、そこで住民登録&印鑑証明を発行して、また元に戻すとか、手口はいろいろ這う。究極をいえば浮浪者のオジサンをつかまえてきて
「好きな所に住んでていいよ・その代わりに名前貸してよ」
なんてこともやります。住民票だけ買って、ワケありなら転居させて。そんなのいくらでも方法はありますからね」
そもそも個人事業主や中小企業相手の経営コンサルタントをやつていたという角谷氏。しかし、特にそのための勉強もしていないという。
「僕は一度もまともに組織に属したことないんです。いつも直感的に動いてるだけ。昔から相談を持ちかけられやすくて、借金をなんとかしたいなんて話を解決してやってたんですよ」
独自の正差蔵狸に基づく氏の処世術は、それ以前の流浪の人生で培われた。
出身は北海道。若い頃より独立心旺盛で、高校時代の3年間を通じ、「どくだみ荘」のようなアパートで独り暮らし。ガソリンスタンドでアルバイトして生活費を稼いだ。卒業後、いったんはカーショップヘ就職するが、同棲を始めた女性がいわゆる、その筋が沈めた女だったのだ。
ある日帰宅すると彼女の姿はなく、怖いお兄さんたちが人斬り包丁を持って「どこへ逃がした」と凄んでいた。
そこからどのようにして逃げたのかは記憶はない。気つくと、遥か四国の某県で地滑り防護の飯場に潜り込んでいたそうだ。
その後、全国を転々として人足出しを引き受けたり、布団の催眠商法に手を出したり、人に使われるのはイヤだと会社を興し、一緒に組んだ人間に金を持ち逃げされ、多重債務者にもなった。
バブルの絶頂期には学習教材の訪問販売で大儲け。英会話セットなど何百万もの商品をパンパン売った。そして、それらの仕組みに目が向く。
「それからはブローカーとか情報屋、何をやったのか覚えてないくらい、いろんなことをやりましたね。私、家が要らないんですよ。別にただ寝るだけだったらどこでもいい。道で寝ろってんならそうする方。不動産の保証人を斡雅旗してる僕がいうのもなんだけど、なんでみんな家にこだわるんでしょうね」
家どころか、睡眠時間もいらないと言う角谷氏。毎日、眠るのは2〜3時間とか。時計の針が午前0時を過ぎて、氏のテンションはますます上がっていく。偽造免許証に占有屋。金融関係
にもネットワークがあるとなれば、保証人斡旋などしなくても、もっと金儲けの方法はありそうだが。
「確かに悪いことやろうと思えばいくらでもできますよ。別に世間的なモラルがどうこうって気もないし、そのうち何かやるかもしれない。けど、あくまで一匹狼でいたいんですよ。それを続けるにはバランスが必要なんです」
バランスを保つためにはあらゆることに顔を突っ込む。角谷氏の話はいつしかマル暴絡みとなった。
「情に動かされちゃった客がいるんです。金融の保証人を紹介してほしいって頼ってきた栃木の男性で38才だったかな。小さな会社の社長さん。話を聞いたら人に編され続け、ヤクザにはボコボコにされ、このままじゃ家族ともども死ぬ他ないだろうって状況で。死ぬより悪いことしてでも生きろ」
が僕のモットーですから手を貸したんです。
その男性は運営資金の工面に3百万ほどを街金から借りたのがコトの始まりだった。理不尽な念書を数々取られ、債務は雪だるま式に膨らむばかり。挙げ句、監禁もされたという。
店子保障で家財保険に入っているのを確認した角谷氏は、その男性に知恵を与えた。誰かに部屋を適当に荒させ、「こんなものを取られた」と警察にニセの被害届を出せば保険金が下りると。
仮に総額4百万の被害届を出し半分を協力者に渡しても、何の苦もなく2百万が手元に残る寸法だ。
「それを僕が段取るわけにはいかないから、そういうサジエスチョンをしたんです。知り合いのヤクザを紹介してね。彼はキッチリやりましたよ」
悪を持って悪を制す。角谷氏のヤクザとのネットワークが生きたわけだ。
ただ、保証人斡旋につきまとうダーティーなイメージを払拭したいというのが角谷氏のテーマでもある。氏はひときわ力を入れ、その点を強調する。
「よく道端に連帯保証人なんて捨て看があるでしょう。あれは僕らじゃないですよ。金融が自分のとこに客を引っ張る手段ですから。借りた額の3割から4割は持ってかれる。引っかかったら悲惨でしょうね」
金しだいで戸籍も仕事も世話する
角谷氏の元に押し寄せる多様なニーズは、まさしく現代の縮図と言っても過言じゃない。例えば、今、最も羽振りがいいように見えるネットワーカー。実は彼らは総じて金に困っている。
それでもいい格好をしたい。そこで角谷氏に相談に訪れる。賃借物件はないかと。さらに彼らが高級外車を追加オーダーしてくれば、金融流れの車を手配してやる。
「身内親族から食い潰し、傘下の人間には頭を下げられない、見栄っ張りの彼らは僕らにとってはいいカモですよ。決して彼らと徒党を組もうとは思いませんけど」
あこぎだが可愛い小物ともいえる輩はともかく、よりキナ臭い客の判別法はあるのだろうか。
「勘としか言いようがない。ただ、自分は牽制の話術も持ってますから、胡散臭いと思ったら客が自ら引かざるをえないようにプレッシャーを与えちゃいますよ」
しかし、多少リスキーでも商売になると踏んだ場合は、彼らを約定で絡め取り、マル暴コネクションをフル活用させる算段はある。
「よしんばトンズラされても、あの人たちに探させたら早いですからね。まあ、客の見極めは堅いつもりですから、まだそんな目には遭ってませんけど」
その無頼の積み重ねで磨いた勘、面白い案件を喚ぎつける喚覚が角谷氏の切り札であるが、これが悪巧みよりは善行で発揮されるからおかしい。