防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

ヤクザの車におかまをほっちゃった・トラブル起こした時の対処法

ここは、新宿・歌舞伎町。あなたは喫茶店で、コーヒーを飲んでいます。さあ、友人との会話もがぜん盛り上がってきました。と、不注意にもコーヒーをこぼし、隣の人の服にかかってしまいました。「すいません」と爽やかに謝罪するあなた。おや、しかし、相手の風体が尋常じゃ…。アンラッキーーヤクザですー

ズキューンと悪寒が走り、顔面蒼白。そして、あなたは薄れゆく意識の中で思います。この後、法外なクリーニング代を請求されんだな。で、拒否すると、湾の底で魚のエサにされるかもしれない、こりゃーエライこっちゃーー。
いささか強引な例だが、我々にとって、ヤクザが暴力の象徴であることは、動かしがたい事実だ。早い話が、努めてかかわり合いを避けたい人種であることに間違いない。しかし世の中、一寸先は闇。図らずも、前記のごとく、こちら側の非でヤクザとトラブったらどうなってしまうのだろう。頭にはどうしても恐怖のイメージしか浮かんでこないが。

「そりゃ誤解ゃ。オレたちがトラブルに遭ったとき考えるんは、それがナンボになるかってこと。シロート相手じゃシれてるがな。しょーもないモメゴトに割いてる時間があったら、そのエネルギーを企業の追い込みに向けるって」

今回、取材に協力してもらった3人の現役ヤクザの中の1人、A氏(Y組組員、35才)はそう説明する。氏によれば、施行された暴力団対策新法(以後、暴対法)の縛りがキツく、ヤクザと名乗っただけで逮捕されてしまうご時世では、滅多やたらにムチャはできない。つまり、実入りの小さいシロウトへの追い込みは、リスクを考えると割に合わないということなのだが…。

とはいえ、このケースはやはり外せない。一般人に足を踏まれたり、コーヒーをかけられたヤクザがどう反応するかは、実に興味深いところだ。

「そんなことで怒らへんって。普通に謝ってくれば、それ以上何も言わへんよ」

体裁を重んじる彼らにとって、シロウト相手にキレるのは、あまりカッコのいいものではないという。チンピラと一緒にするなとのお叱りも受けた。ただし、忘れてはならないのが、ヤクザも人の子だということ。ムシのいどころが悪ければ、体裁も暴対法もあったもんじゃない。怒り狂って近づいてくる場合も十分あり得る。そうなったら仕方ない。とにかくその場からダッシユして逃げ出すのがもっとも現実的だ。これは、当のヤクザが保証している。

「こっちがいくらムカツイてても相手が走り出したら、それで終いやわね。こっちも必死になって追っかけるのはメッチャ恥ずかしいし、よしんば追っかけてもすぐに飽きてしまう」(B氏。A氏の兄弟分)

万が一、囲まれて逃げられないょうなら携帯で110番しょう。恐らく凶悪な形相でまくしたてられるだろうが、警察が到着するまではじつと我慢。その間、とにかく「すいません」を繰り返し、相手と極力ことばを交さないようにする。何しろ、ヤクザは話術に長けている。下手に会話をして、ポロっと自分の身元がバレれるようなことがあればアウトだ。後日、どんな難癖をつけてユスってくるかわかったものではない。

ヤクザの車におかまをほっちゃった
これは、一般人がヤクザとのイザコザに巻き込まれるパターンで、もっとも現実的なケースだ。逆に、ヤクザにとっては、大歓迎のアクシデントに違いない。車の修理費はもちろんのこと、治療費に慰謝料と、多額のカネを請求できるチャンスなのだ。この場合、カマを掘られたヤクザが欲しいモノはただーつ。加害者の拇印が押され、

「この事故の一切の責任は私が取ります」

と書かれた念書である。なぜなら、これが書かれた瞬間、両者の間に契約が成立したことになり、保険屋が一切介入できなくなってしまうのだ。後は地獄が待つのみ。ヤクザは、必ずと言っていいほど、医者や車屋の知り合いがおり、突如事故の後遺症が発症したという診断書や、常識の範時を飛び超えた修理代の見積もり書が自宅に送りつけられる。極端な話、不注意に書いた念書一つで、家が崩壊しかねない事態を招いてしまうのだ。

これを逆に考えれば、加害者としては、念書の要求をガンとして拒否すればいい。が、ヤクザは、相手の弱みをメシのタネにする人種。何度も言うように、ことば巧みに攻めてくる。B氏は言う。

「念書を書かさんことには始まらんからね。

「あなたもな、仕事で忙しいかもしれへんけど、だれのせいでこうなったんや。保険屋を通すならそれでもええけど、交渉が長引くし、掛け金だって高くなっていいことあらへんで」

くらいいえば、断るヤツはあんまりおれへんわな」

すなわち、加害者がすべきことは、事故を起こしたら、とにかと警察に知らせ、保険屋と連絡をとることだ。念書や示談書の類を書けと言ってきたら、とりあえず現場から一旦離れよう。

この際は、

「本当に申し訳ありませんが、すぐに保険屋が来るといつので、そちらと相談してください」

と言っておけばいい。これで、向こうが腕を掴んで離さないようなら暴行罪が適用される。また、現在の保険にはPAP(自動車総合保険)や自家用自動車総合保険という、示談交渉の代行サービスが付帯しているものが大半である。これを上手く利用し、交渉の一切を保険屋に任せるのが無難だろう。ここで万全を期すため、見舞いに行くのも有効な手だ。交渉は保険屋に任せっきりでいいが、道徳的なケアは当事者にしかできない。花束を持って、マメに病院へ顔を出すうち、加害者に対して情が湧くこともあろう。何より、こちらの誠意が伝われば、再び起こるかもしれないトラブルの予防につながるのだ。

ヤクザとのトラブルに別のヤクザで解決しようとする

意外に思うかも知れないが、これはヤクザとのトラブルを解決する際の絶対タブーだ。よっぽどの親友なら別だが、知人程度で、信用してはいけない。ヤクザの助っ人のおかげで、いくら問題が丸く収まっても、新たなトラブルのタネになるだけである。味方と思っていたヤクザに法外な報酬を要求されたり、逆に無理難題な依頼(クスリや拳銃の預かり、違法商売の手伝い)を強要されかねない。

しかも、問題解決が失敗し、話がこじれでもしたら、目も当てられない事態が待っている。当の本人は、騒動の責任者として、双方のヤクザから「家の2、3コが潰れる」くらいのカネをムシりとられ、最悪の場合、寂しげな山の中に埋められることだってあるのだ。再びA氏。

「まあ、いくらシロートでも、向こうから頼って(ヤクザに)近づいてくれば、力モにせんとも限らんわね。状況によっちゃ、相手のヤクザと裏で組んでデキレースやってまうこともあるし、親が力ネもってりゃ、詐欺まがいのことでもやって、有り金巻き上げてしまうかもしれへんし。まあ、イケルって思たらなんでもありや、基本的には」

…ヤクザとは、かかわってはダメ、付き合ったらなおダメ。とりあえず、これだけは確実に言えそうだ。