入学と同時に、親からー台20万円もするパソコンを買ってもらった。
第一志望の約束とはいえ、賛沢な褒美である。高校に行ったらもっと勉強せいよ。無言の叱叱激励が肩にのしカカる。しかし、殊勝な心がけでいた切も数週間足らずだった。親の心子知らずとはよくいったもので、間もなくボクはバソコンで遊ぶようになる。
インターネットゲームにハマったのだ。このゲームの魅力は、ネット上で多数の敵と戦闘を繰り返し、自分のキャラクターを育てていくところにある
それも、ただ戦かうでなく
「他の誰かが操るキャラとの情報交換や共同作業で、特定の相手を痛めつけることも可能」
仮想体験とはいえいつしかボクはゲームに飽き足らなくなり、大人たちが集っチャットルームに出没。ここで1人の会社員と知り合ったことで、クラッキング(悪質なハッキング)。生活に埋没していくのだった。
〈他人のパソコンが覗けるソフトを知ってる?>
カフェチャットと呼ばれる、酒場を模したサイトに出入りするようになつたのはー年の秋である。慶応大学生を演じたボクはすぐに常連入りを果たし、アンバダなる男と知りあう。ネット上のことだから真偽のほどは定かじゃないが本人が言うには、メーカー勤めの天才会社員らしくともかく、彼とはやたらウマがあつた。お互い、アングラと呼ばれるネットの怪しい世界に興味があったからだろう。
クラッキングはド素人でも、簡単に扱えることがわかってきた。しかも、その性能がハンパじゃない。ターゲットのパソコンにいったん侵入させてしまえば、操作が可能なのだ。壁紙の変更やハードディスク、メールの覗き見に始まり、レジストリ(パソコンの、ソステム中枢)の破壊までウィルスが除去されない限り、完全な乗っ取り行為ができてしまう。こんな危険なツールが出回っていいのかe
驚嘆する一方で、ボクたちはすぐに壁にぷつかった。〈結局、ソアトの使い方がわかってもIPが抜けないと意味ない。IPが判明もないことには、いくら標的に『B』を仕込んだところで遠隔操作もクソもないのだ。さらに問題がーつ。操作可能時間だ。
どうやら、標的がインターネットに接続している間しか行えないらしい。やっばり大変そうですね、そうだなあ。バレたら大事だし、やめたほうがいいかもな
実際、この行為が発覚すれば新聞沙汰になること必至。ボクの親は泣きわめき、ランバダは社会的信用を失うに違いない。不正アクセス整正法だか何だか知らないが、クラッキングに対する世問の風は予想以上に厳しいのだ。すっぱり計画を中止するのが正讐と、結論を出した矢先、ランバダの頭にーつのアイデアが浮かぶ。
だったらさ…、チャット仲間を狙ってみないか?
2人でタッグを組み、1方が会話を引き伸ばし、もう一方がパソコンのデータを盗む。共同作業なら可能。ボクらは危険をかえりみまさっそく練習を開始した。
月末、いよいよ実行日がやってきた。ターゲットは決まっている。チャット常連のKだ。年齢30ま自称ボンボンだとヌカすこの男。場の空気が読めず、いつも周囲から浮きまくっていた。そのくせ、金持ち自慢したりするから鼻持ちならない。これ以上の標的はなかろう。
問題はKのパソコンにどうやって仕込むが。ボクとラジバダは一芝居打つことにした。〈イクトくん、最近、おもしろいネットゲームを見つけたんだ〉
「えっじゃボクに送ってくださいよ」
「じゃあ、送るよ」
言うまでもなくゲーム『B』のこと。ヤツがそれを欲しがれば、作戦はほぼ成功したようなものだがー
一ちょーだい、ちょーだい
ランバダボクにもください
Kは柏子抜けするほどアッサリ引っかかった。たちの悪いウソをついだことに少々心を痛めながら、ボクとランバダは計画を進めていくおかりました。今から2人に曽るので、添付フアイルをクリックしでください
10分後、Kがチャットルームに戻ってきた。
ランバダさーん。さっきのゲームなんですが、ダブルクリックしでも何も起きません一ファイルが壊れてるのかな
成功だ。ダブルクリックして、何も起きないのは、『B』が潜り込んだ証。ココから先はボクの出番である
さっそく作業にとりかかった。その間、ランバダはチャットでKと話を続ける。
緊張感とともにボグははじめに画像フォルダへ。ここには、ネットからオトしてきたエ口画像などがぐそのまま保管されている可能性が高い。ヤツには、どんな隠れ性癖があるのかそれを確かめてやる
男の全裸写真だ。ビジネズホテルの大型鏡に映る自分を撮影している。写真はKが自らを撮影したものに違いない。つい先日、ヤツが自慢していた、買ったばかりので撮影したんだ。
他にも、家で猫を抱きながらイチモツを勃起させたやつやワイングラス片手の寒い座位姿など、計10数枚を発見。いやあ、初っ端からオイシイ画像。
※この記事はフィクションです。防犯、防衛のための知識として読み物としてお読みください。実行されると罰せられるものもあります。