防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

典型的な紹介屋の手口

今年、他人に成り済まし、複数の消費者金融から金を借りていた男Y(37)が詐欺容疑で逮捕された。Yは数々の仕掛けを駆使しては巧みに他人をだまし、ー億以上の金を搾取。逮捕されるその日まで、稼いだ金で豪遊する日々を送っていた。ー年10カ月に及ぶ犯行期間でYが引っかけたカモは、借金にまみれた主婦たちだった。
「ダンナさんの保険証を貸してもらえませんか」
Yは南池袋のマンションの一室に「コスモライフ」といっ名の会社を設立、事務員ー人と運転手を雇い入れた。部屋を借りる際には知人の名前をかたって契約し、名刺も別人の名前で刷りあげる。準備が整ったところで、次のようなチラシを作成した。

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これを新聞の折り込み広告へ定期的にまいたところ、カモが大量に押し寄せてきた。「主人に内緒で金を借りているけど、返せるメトが立たない」

「すぐにでもお金がほしい」ほとんどが、切羽詰まった主婦たちである。なんでそんなに金が必要なのかね。まあ、世の中そんなものか。それにしてもオレには時代を読む感覚があるよな。Yは一人ほくそ笑む。そして、あるときは電話口で、またあるときは会社の応接セットで、主婦らに次のような誘い水を向けた。

「ここで改めて融資を受けるより、低金利に借りかえるか、借入れ先を一本化する方が支払い金額を減らせますよ。どうです。その方が効率的でしょう?」

典型的な紹介屋の手口である。ワラにもすかる思いの主婦が首を縦に振れば、いよいよ本題へ。"審査をする"と称して、ダンナ名義の健康保険証や源泉徴収、印鑑などを貸してほしいと申し出るのだ。
「1日か2日で返しますよ。大丈夫、貸したところでどうこうなるもんじゃないですから」もちろん、融資する意志も資金もないが、債務整理というもっともらしい口実は主婦の目をそらせるに十分だった。こうして集まった必要書類を持ってYは消費者金融へ駆け込む。あとは言うまでもなかろう。名義人に成り済まし、ー回につき数10万円単位の融資を受けて一丁上がりだ。
融資額に満足いかなければ、年収ー千万円以上の勤め人が通常100万円まで借入れ可能になることを利用し、ニセの源泉徴収票を作って金を引っ張った。実はY、この事態をあらかじめ想定し、タコ焼きチェーンの「アップス」とコンピューターソフトの仕入れ販売会社「ケイエッチエス」という会社まで設立していた。言うまでもないが、ここも社員ー人、2人のダミー会社。実際の業務はいっさい行われてない。

さて、このまま返済を怠れば、サラ金から名義人に督促電話が入り、犯行はすぐにバレる。が、Yはぬかりなかった。パクった金の中から利子だけは支払い続けたのだ。こうしてターゲットにした消費者金融は10数社、200支店。約ー億円の金を搾取したYは、「夢の生活」にふける。妻と別居中だったのをいいことに、目白の高級マンションにー人で暮らし、週3-4回のキャバクラ通い。週末には、北海道や沖縄、宮崎などヘバカンスにでかける豪遊を楽しんだ。
次々に主婦を編すことに成功したはいいが、このまま借金を続ければ利息だけでも莫大な金額に達する。いずれ破綻するのは明白だ。Yの場合は今年初め、消費者金融大手A社の某支店への支払いを滞らせたのがきっかけだった。約束の期日に返済のなかった支店から、名義人へ督促の電話が入る。当然のようにこんな答が返ってきた。

「金なんて借りてませんよ」この報告を受けた本社がさっそく調査を開始したところ、20以上の支店から筆跡の似た申し込み用紙が出てきた。その日時を追って来店した客のモニターピデオをチエックすると、いつも同じ姿の男が映っているではないか。A社がすぐにこの人物を要注意人物と認定、各支店に手配書をバラまき、警戒を強めたのは言うまでもない。

一方、Yはすっかり感覚が麻癖したのだろうか。いつもの手口で主婦からせしめると、A社の支店ヘノコノコと現れ、30万円の借入れを申し込んだ。支店は「要注意人物のご来店」と色めき立ったが、とりあえず貸付けを実行、笑顔で送り出す。ー人が尾行し、コスモライフに入っていくYを見届ける。

そして、会社の実態などを詳しく調べた結果、Yの詐欺行為に確信を抱いたのである。こうなればジ・エンドである。A社が本所署に被害届けを出し、Yはまもなく御用と相成った。逮捕直前のYは、まさに自転車操業だった借り入れ件数は膨張し、利子を払うだけで精一杯。かといって一度覚えた生活レベルを簡単には落とせず、リスクを省みずに主婦らを力モりまくっていた。一時は、雇った社員の給料も遅配する有り様だったという。それが災いしたのか、ガサ入れ後、社員らはYの余罪を示す証拠(他人名義のサラ金カードなど)を捜査員にチクる。結果、余罪が次々に判明した。

本所署の取り調べに、Yはこう答えている。

「以前、働いていた経営コンサルタント会社で経理の仕事に就いておりまして。そこで、資金繰りのテクニックをびっちり学んだんです。最初は多量債務者を助けるため、仲介手数料を取ってきちんと業者を紹介するつもりだったんですよ。でも結果的には食っていけなくてね」そして

「犯罪になることはわかっていました。こんなこと、そろそろやめようと思っていたし、捕まったのはいい潮時です」

と意外にもサバサバした表情で続けたという。強がりと思えなくもないが、危うい綱渡りだったことは自覚していたようである。
Yの供述で出てきた「仲介手数料」業務、いわゆる、紹介屋で元力士がパクられる事件もあった。

兄が経営する金融会社を手伝っていたが、多重債務者の実態を特集したテレビや新聞を見たのをキッカケに、紹介屋グループを設立する。

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「ライン」や「タウン」といった複数の業者名を使い、ダイレクトメールを多重債務者に送り付ける。債務者リストは名簿業者からー人分20円から100円で購入したものだ。手口は驚くほど単純である。電話なとで申し込みがあるとまず「当社では無理なので他社を紹介する」と断る。その上で、客の住所を参考にタウンページで適当な金融業者を探し、「話は通しておくから」と紹介を装い手数料を要求するのだ。

「助かった、融資してくれるところが見つかって」

本当に紹介されたと思い込んだ客は、融資額の30%を超えるバ力高い手数料をアッサリ払ってしまう。中には「状況を確認したいから、融資された額を口座に振り込んでみて」と言われ、全額をだまし取られたというお人好しまでいたらしい。別の紹介屋に手数料をだまし取られたことかあるという30代の男性は言う。

切羽詰まって往生しているところに「大丈夫、確実なところを紹介しますよ」なんて言われれば、相手が神様に見えちゃうんです。手数料払うんだったら自分で業者を回ればよかった、なんて後の祭りなんですよね