防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

都内某所のラブホテルでデリヘル嬢をレイプしたのは誰だ!?

繁華街でデタラメなエンコービラをバラまいた男、家族と車を傷つけたひき逃げ野郎、ビデオカメラに映っていた空き巣…。本誌では、こうした、犯人を追いかけるプロセスとその結果をしばしば掲載しているのだが、やはり基本は「捕まえてナンボ」。事件を解決してこそ、世間に紹介すべきだとは思う。

けどね。未解決なものはオクラに入れてしまっておくべきかというと、そうでもないような気もするんですよ、私としては。まあゴチャゴチャ言ってもしょうがない。最初に断っておくが今からご紹介するこの事件、ハッキリいって未解決のままである。解決の見通しもいまだついていない。ただ、恥を忍んでいわせてもらえば、世の中にはこんなにも不可解な事件が起こりうることを読者のみなさんにも知っていただきたいのである。いやホント、もうワケがわかんなくて頭を抱えちゃってるんですよ。
阿倍と名乗る男が編集部に電話をかけてきたのは、今年4月半ば、昼過ぎのこと。彼はおもむろにこんなことを切り出してきた。

「実は昨日、やっかいな事件に遭遇してしまいまして」

「え、どういつことですか」うーん、なにから説明すればいいのかなあ」聞けばこの阿倍氏、都内でデリバリーヘルスを開業しており(届け出済)、日々、車で女のコの送り迎えを行っているという。事件が起こったのは、今年4月13日の午後のこと。常連客の受付専用の携帯に、非通知で電話がかかってきた。

「いつもは番号通知してきたヤツしか受け付けないんだけど、うっかり電話取っちゃって。そいつ、前に遊んだことがあるっていうんでOKしちゃったんですよ。声からしてまあ30才くらいかな。ただホントに普通で、何を話したのか全然覚えてないくらい」

ラブホテルの中にいるというその客に、さっそく店の看板娘・レイコを派遣。彼女には次の予約も入っていたため、阿倍氏と店のスタッフである岡田クンは、送迎用の車をホテルのすぐそばに停め待機していた。
デリヘルでもホテトルでもそうだが、女性はホテルへ入ると同時にいったん店に電話をし、部屋番号と支払い(ほとんどが前金)を伝える。このときもレイコはさっそく電話を入れてきた。とりたてて異常はありませんでしたね。まったくの普通。代金もちゃんと払ってたようだ。そして、終了間際にはもう一度確認の電話。これが通例だ。
ところが本来プレイが終わるべき40分を過ぎてもなかなか連絡が来ない。心配になって電話をかけてみたところ、「今入ってます」とレイコの声が聞こえてきた。

「ウチの店の合図なんですけど、非常事態のときは「入ってます」っていうのが決まりなんですよ。こりゃ大事だぞって」

血相を変えて岡田クンがホテルの中に乗り込む。フロントからマスターキーを強引に奪い、部屋に突進した彼が目にしたものは・・縛られて泣きじゃくってたらしいんですよ、レイコが。

「レイプしようとしてたんでしょうね?」

阿倍氏の話によれば、男とレイコがホテルの部屋に入り、先に彼女がシャワーを浴びようとしたところを突然、男が後ろから襲いかかってきたという。結果、彼女は腕に手錠をかけられた状態で男に本番を許してしまったらしい。唯一の救いはそんな非常時にも彼女が機転を利かせて対処したことだ。射精後、一瞬目をそらしていたスキに、ちょうど鳴った阿倍氏からの連絡を受けSOSを出したのだ。ー人で乗り込んで行った岡田クンは、当然のように男に殴りかかったが、しばらく格闘した末、結局非常口から逃げられてしまったらしい。
「その後、ウチの店の携帯に連続してものすごい数の非通知電話がかかってきたんですよ。完全な営業妨害。もちろん、そっちの番号はかえましたけど、岡田も顔をケガしちゃったし、レイコの方は中出しまでされちゃって、本人大ショックですよ。私としてもどうにも許せなくて」

「犯人の特微って覚えてますか」

「んーん、レイコと岡田が言うには、黒い服を来て身長は170センチくらい。顔はサ工ないオタク風って感じらしいんですけどね。まあ似顔絵が描けるほどは覚えてないみたい」

阿倍氏は、警察に被害届を出す気はさらさらないといつ。どうせサツにかけこんだところで、マトモに取り合ってはもらえませんよ。デリヘルでレイプって言われても

「本番やってんのかって逆に不審がられるし。それに、どうしても見つけだして個人的に復讐したいって気持ちがあるものですから。レイコのためっていうのもありますけど」

本音を言えば、事件はまず解決不可能なんじゃないかと思った。取り逃がしてしまえば後の祭りだろうに。

「いや、それがね。犯人が残していった荷物がありまして」

なんと。とっくみあいの末に岡田の手を振りほどいて逃げた際、犯人は自分のバッグをそのまま部屋に置き忘れて逃げたらしい。

「この中身ってのがスゴイんですよ。ま、手がかりになりそうなものもあるんで、とにかく一度見てみませんか」遺留品から犯人探しをやってみようというわけか。素人にできるかどうかはともかく、見る価値はありそうな気もする。

私はその日のタ方、彼と会う約東を取り付けた。実際に顔を合わせた阿倍氏は、電話での印象と同じ、ごく普通の男性だった。見たところ、30代半ばあたりか。風俗業者というより、渋谷で洋服屋でもやってそうな雰囲気だ。

「で、そのバッグっていうのがこれです」

阿倍氏はそう言うと、黒いショルダーバッグを目の前に置いた。ビニール製の、学生が使ってそつなありがちなものである。

「ちょっと開けてもいいですか」ジッパーを開け、中のものを取りだす。なんすか、一瞬息を飲む。まず、未開封のウェットティッシュ、ジッポのライター。これはまあいいとしよう。次にピンク口ーター。これだっアダルトショップなどで簡単に手に入るし、ラブホテル内でもよくうっている。そう珍しいというわけでもない。

私の目を真っ先にひきつけたのは、2つの手錠だった。レイコの手を縛ったものとほぼ同じ、銀色のワッカである。$Mの趣味がある人間ならともかく、こんな事件が起こった後では何に使うかおよそ見当はつく。相手の手足の自由を奪って、好き放題犯すために持ち歩いていたのだろう。

「こんなのも入ってたんですよ」

阿倍氏が差し出したその物体は、手に持ってみるとずしりと重く、先っぽの方にはクワガタのような2本の小さな歯が出ている。スダンガンだ。

「たぶん、8万ボルトくらいのやつでしょうね。知り合いに聞いたら、結構強力だって言ってました」さらに、催涙スプレーに女性用のパンティストッキング、防犯フザーまでも入っている。いったい何者なんだ。
さらにバッグの中には、犯人を特定する上でかなり頼りになる遺留品が2つ残されていた。そのひとつが24枚撮りの使い捨てカメラである。あんな卑劣な野郎だから、マトモなモノを撮っているとは思えない。レイコが写ってるかもしれません。確かに、その可能性は高いですね。でも、ラブホテルって現場を考えれば、もしかしたら鏡にヤツの顔が写ってるかも」

「だといいんですけど」

逆に、マトモな写真でも手がかりになるような気もする?例えば、友人や職場の仲間同士で撮っていた場合被写体の中に犯人がいることだって考えられるのだ。

「なるほど、わかりました。ちょっとこのカメラ、貸してもらえますか。2時間くらいしたらまた電話します。」

私はさっそくこれをセルフ現像屋(自分で焼ける)に持ち込んだ。プリントを現像液に浸す。と、徐々に輪郭が浮かび上がってくる。明らかに人間の形・・・

ん?しかも女の裸か。うわあ、なんだこれ。見えてきたのは、手錠をかけられ、大股を開きながらラブホテルのベッドで悶える女の全裸写真だった。が、投稿系雑誌やナンパハメ撮り写真に見られるような能天気な写真はそこにはなく、表情は悶絶というより苦痛と恐怖に満ちている。明らかに嫌がるのをムリやりポーズを付けさせているようだ。女の歳は22、23才くらい。一応、ほっぞりしていてスタイルはいいが、特に美人といっわけでもない。これがもしやレイコなのか。期待していた犯人の姿は写っていない。結局、すべてホテル内で撮ったとおぼしきこの女の裸だけだ。再び、阿倍氏のもとへ駆けつけ、写真見せる。

「これ、レイコちゃんですか」

「いや、違うなあ。レイコじゃないですね、間違いなく。ウチの店にこんなコはいませんよ。しかし、他でもこんなマネやってたんですね」

阿倍氏は残念そうに咳いた。女がどこの誰だかすらわからない。これじゃお手上げだ。しょうがないかな。

「でも、宗像さん。まだコレが残ってますから。こいつがなければ、さすがに私もあきらめてましたよ」使い捨てカメラに続き、犯人特定の重要なカギを握る第2のアイテム。それは携帯電話だ。ヤツはもっとも忘れてはならないものを残していたのである。「電話帳のメモリがあるでしょ。このラインナップが見れば見るほど不気味なんですよ。」
阿倍氏がニヤニヤ笑いながら、ディスプレイを見せてくれる。

「それちょっと貸してもらうってことできませんか」

無理な申し出とわかっていながらも、とっさに頼んでみた。

「この中のどこかに電話するときはいってもらえます?それだったらいいですよ」

犯人の携帯を彼から預かった私は、一礼してその場を去った。何が自分をここまで引きつけるのかわからない。が、とにかくいても立ってもいられないのだ。

会社に戻って問題の携帯のメモリをチェックしてみる。登録件数は、メモリいっぱいの約497件とりあえず、「ミキ」という名で登録されていた携帯番号に電話をかけてみた。この女が犯人と接触したことがあるなら、何か情報が得られるかもしれない。

「もしもし」出たのは、やけに若い女。声からしてまだ10代か。

「もしもし、ミキちゃん?」「え、誰?」

「そっちに表示されてる番号に見覚えある?」「んーん」「ちょっとオタクっぽい」「……なんとなく、わかる」「名前覚えてる?」「わかんない」

「実はさ、オレ持ち主じゃないのね。この携帯のヤツと会ったことある?」

「ー回しか会ってないよ」「それってエンコーとか?」「え、どっちでもいいじゃん」「乱暴されなかった?ヘンなコトされたでしょ」「……」

この後、よくよく話を聞いてみればこのコ、なんと高校3年生。どうやら援父でー度だけ関係を持ったようだ。

「でも、半年くらい前だし、あんまり覚えてないの。ってゆーか、もうあわないもん」
他にも女性の名前をいくつつけて電話をかけてみたが、尋ねてみると、みな覚えていないと答えるか、黙り込んでしまう。まあ、レイコや写真の女と同じようなことをされたと思って聞遅いはあるまい。彼女らに直接会って話を聞いでみたい気もするが、犯人特定につながるかどうかは疑間だ。自分だって、女子高生とエンコーしろと言われれば、身元を明かすようなマネは絶対にしないだろう。女に手錠をかけて写真を撮るようなヤツがそんなヘマをやっているとは考えられないのだ。
その翌日、携帯からは犯人の奇怪な行動ぶりを示す登録先が次々と見つかった。

以下は、その中の一部である。論布市××(市内の某地名〉なぜか登録者名の欄に調布市某所の番地が残っていた。調べてみるとこれ、某テニスクラブの番地。犯人がここに通っていたということか。いや、つけ回していた女のデータなのかもしれない。お客様相談センター都内の大手メーカーのカスタマーサービスの番号がいくつか登録されていた。メカ関係にうるさいヤツか。

〈朝まで生テレビ、視聴者の意見の受付〉

わざわざこんなのを携帯にメモリしておくあたり、よほど投稿マニアというか、イチャモン好きの体質であることが窺える。

〈YSP〉

電話してみたら、オートバイショップだった。ってことはバイク野郎か。さっそく店の人間に犯人の外見的特徴を伝てみたが、有力な情報は得られず。

〈三鷹のスナック〉

念のため、常連客の中にこんなヤツはいなかったかと、店のママに犯人の背格好を伝えてみるとそういえばそんな人も来ていたわねえ。でも、連絡先まではわからないとのこと。
登録者の中に、鈴木Hという名前を見つけたのは携帯を預かって5日目のことだった。見たところ、取り立てて怪しい要素もないが、それでも堆構番号が2件、一般回線がー件登録されている。まずは携帯の方にかけてみた。

「もしもし、鈴木ですが」

中年男の声だ。「鈴木Hさんですよねえ。」「ええ、どちらさん?」

「あなたの自宅って、031××××ー〇〇〇〇(鈴木名義でメモリに残っていた鈴木の自宅)じゃないですか?」

「なんで?あなた、誰なんですか」

相当不審がられている。ムリもない。とりあえず、彼には事情をかいつまんで話してみるか。

「…というわけで、犯人の携帯にあなたの名前と番号が残っていたわけですよ。心あたりありませんか。ないはずないんですけど」

焦り気味で詰間する私に、彼が反論する。

「正直言って、何が何だかさっばりわからないですよ。知らない人間の携帯に自分の名前が入っていたのも気味悪いですよ。だいたいオタクさん、何者なんですか」

演技なのか、本心なのか、鈴木は、寝耳に水を繰り返すばかり。確かに、少々間の抜けたリアクションから察するに、犯人といつよりむしろカード詐欺かなにかの被害者の方なのではと思えてくる。とぼけ方にワザとらしさが感じられないのだ。

「あのね、鈴木さん。もしよかったらお会いできませんか。5分でいいんです。どこでも行きますから。お願いします」

「あのさ、おたくさん、さっき風俗営業の届け出をしてるヘルス業者とか何とか言ってたよね。そういう問題は警察行くのがいちばんなんじゃないの?」

うっ、痛いところを突いてくるヤツだ。
あってもらえないんでしょうかね。

「こっちだって相手がどこの誰だかわからないんじゃ話にならないですよ。警察行くってんならば、私も付きあいます」

「いやあ、そこまでは…」堂々とした態度に、結局最後はこっちの方がうろたえてしまった。この人、まずシ口と見て間違いないだろう。
個人名の登録者で最後に当たったのが、K山という男だ。

「あのそちらにお勤めでK山さんって人、いますか」

「K山君は、今、会社を休んでるんですよ」

「えl?K山さんって会社にいらっしゃるんですか?」「はい」

「休んでるってことは、じゃあ明日はいらっしゃると?」

「いや、詳しくはわからないけど病院通ってらしくてね。ここ何日もずっと会社に来てないんですよ」

「休んでるのはいつごろから?」

「はっきりとは覚えてないけど、10日くらいからですか」ハッとした。犯行日時の付近とピッタリ重なるのだ。入院?もしや岡田から食らった顔面バンチが原因か。

「あの、そのK山さんってのは、顔にケガとかしたりしてませんでした?」

「どうかなあ。そんな感じじゃなかったみたいですけど」

ケガはしていないとはいえ、ちょうど犯行期日が重なるあたり、怪し渦ぎる。私は思い切って、K山の上司を電話口に呼び出してもらい、事件のいきさつを聞いてもらうことにした。

「というわけで、私としてはK山さん本人に事情を聞きたいと思ってまして」

「いや、K山はそんなことできるヤツじゃないですよ。まあどっちかというと、気が小さい方の男なんじゃないかな。私生活とか趣味はよく知らないね。会社以外ではほとんど付き合わないからねえ」

こうなりゃ本人の堆構にかけてみるか。どうせつながらないか、人違いだろうが・・「もしもし」「あの、K山さんですか」「そうでですが」

な、なんと本人がいきなり出るじゃないか。予想よりも少しオヤジっぽい声。犯人にしては歳を取りすぎているような気もするり事情を説明した後、さっそく質間をぶつけてみる。

「どうして犯人の携帯にK山さんの番号が残っていたのか、心当たりありませんか」「いやあ、こっちが聞きたいくらいですよ。まあ私だって風俗なんかも行ったことないとは言わないし、こういう事件があってもおかしくはないと思いますよ。でもさ、それで私を疑うのもヘンじゃないですか?」

「うーん、お会いしてみないとそこまでは」

犯人の携帯から私の自宅の番号だってわかってるわけでしょ(メモリのもう片方の一般番号はK山の自宅だった)。そしたら、何だのソフト使えば、こっちの住所だって調べられますよ。K山によれば、自分は事件が起きた街のあたりにはほとんど行かないという。が、さっきの鈴木とは裏腹に彼の流ちょうな物言いにかえって不審な空気を感じないでもない。やはり、この男に何が何でもあってみるべきだろう。

「そしたらね、K山さん。一度会えませんか」

「ああ、構いませんよ。私はいつでもいいですからロほとんど失業しちゃってるから。K山は素っ気ない声で確かに、そう答えた。

★残念ながら現時点でいえるのはここまで。結局、K山ともいまだに会えていない。例の会社をヤメ、就職活動で忙しいといっ理由で先方の都合がつかなかったり、当の阿倍氏が体を壊したりして、うまくタイミングが合わなかったのだ。そんなわけで、追跡を続けていく所存だが、にしても恐るべきは犯人の周到ぶり奇人変人ぶりである。まさか忘れていった携帯1本でここまで人を翻弄してくれるとは。オマエいったい何者なのよ