防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

フィリピンパブで学ぶ客から金を引っ張る技術

ある日、たまたま入ったフィリピンパブで、大きな金鉱を発見したのである。行ったことのない人に説明するのは難しいのだが、フィリピンパブは他の飲み屋と完全に一線を画す。日本のコギャルや中国人、タイ人、はたまたロシア人のオネーチャンが相手をしてくれる店は、多少の差はあれ客はセックスすることを目的に出向くが、フィリピンパブの客は恋愛を求めて店に通うのである。

お国柄か、歴史的に培われた処世術なのかは知らないが、フィリピン人のホステスは全員が全員人なつこい。しかも、どうすれば日本の男が金を出すかを心得ていて、単なる客とホステスというよりは疑似恋愛に近い雰囲気を生み出すのだ。店に行けば、横に付いたコが携帯番号を聞いてきて、翌日から毎日、電話がかかってくる。それも、店に来いなんてあからさまな営業電話ではなく、「いま何してるの」なんて何気ないことばだったりするから、あれ、このコはオレに気があるのかなと勘違いし、気づけば店に通い詰めてしまう。彼女らにしてみればマニュアルどおりの営業方法なのだが、片言の日本語で無邪気な声で誘われると、遊び慣れてない男はどっぷりハマってしまうのだ。正直オレも最初はそのクチだった。無邪気に「私ジンさん好き」と言ってくるエキゾチ
ツクな璽立ちの彼女たちにゾッコンだったのである。
しかしオレはやはり女にのめり込むより先に、彼女たちの集金テクニックに目がいった。とにかくその金の引っ張り方たるや、半端じゃない。まず基本は、ハマった男を同伴に誘って食事をするだけでなぐ物をねだる。それも、服やバッグなど自分のモノではなく「家族へのお土産」という名目のテレビや炊飯器などだったりするから、客はついつい言っことを聞いてしまう。ふと寄ったコンビニでも、カツプラーメンからシャンプーまで日用品を大量に入れる。これが、いかにもお仕事でつきあってます的な態度ならムカツキもするが、黒目がちな目をウルウルさせて

「うれしい。アリガト」なんて言われれば、金を出さないワケにはいかない。そして客は勝手に思いこむ。このコは日本に来るのに借金もしただろうし、国の家族に仕送りもしなくちゃいけない。よし、オレが助けてやろ~と。

こうして男たちは、欧米人のホステスには絶対抱かないであろう庇護意識も手伝い、自分で借金をしてまで彼女たちに貢ぐようになるのである。圧巻は、目標の金を貯めたフィリピーナが国へ帰るときだ。カツプラーメンから家電製口叩まで、客に買ってもらった品を詰め込んだいくつものダンボールとともに飛行機に乗る彼女たち。航空券より税関に払う課税額の方が遥かに高いが、それも客の負担だ。その課税分の何十万かを、複数の客から巻き上げて帰っていくというのだから恐れ入る。わざわざ会社を休み、恋人気取りで空港に見送りに行った男たちは、そこで初めて自分と同じ立場の人間が何人もいたことに気づくのである。
ときどきニュースで、大手企業の部長が外国人クラブに会社の金を注ぎ込み一家心中を起こしたなどと報じられる。そういうときは必ずフィリピンパブで、聞遅っても韓国クラブではない。ここまでフィリピンパブに貢いで人生を狂わす男がいるなら、その金を少し分けてもらってもいいじゃないか。

最初のカモは向こうからやってきた。フィリピンパブの客は1人で来る場合が多く、客同士が話すことも少なくない。地元の店に顔を出すうち、2人の男がオレになついてきたのだ。店では、いかに遊び慣れているかでランク付けされる。自慢じゃないが、若いころに散々フーゾクで遊びまくった話を、トークで面白おかしくしゃべるオレは、どの店でも歓迎された。タナカ(32才)とコバヤシ(35才)は、そんなオレと一緒に遊びたがった。
「麻木さん、今度いつ店に行くんですか」

2人から携帯に頻繁に、同伴コールが入るようになった。タナカはペツトショツプの二代目で、コバヤシの方は百円ショツプの店長。2人とも仕事はできるようだが、お世辞にもモテるタイプではない。いまだ独身で、のほほんと暮らす世間知らずだ。あるとき、何の話題からそうなったのか忘れたが、タナカがサラ金に200万借りてることが判明した。ベンツを買ったはいいが、週2でフィリピンパブに通りローンの支払いが滞るようになったらしい。

「麻木さん、どうすればいいと思います?」

サラ金の支払いに詰まったタナカは、自分の頭で考えもせず、オレに相談を持ちかけてきた。ヤツが親と同居し、その家も土地も抵当ナシの物件であることは調査済み。あれを担保にすれば、デカイ金が引っ張れるはずだ。まずオレは、借入先と月々の利子を一覧表に書き出し説得にかかった。
「合わせて8万利子を毎月払うなんてバカらしいだろ。この土地を担保にまとまった金を借りたらどうだ。その方が月々の利子が安くなるからラクだぞ?1千万も借りればサラ金の借金をキレイにできるし、残った金で豪遊できるじゃん」

要点はこんなところだが、オレはヤツの目を見ながら、しつこいくらい何度も説明した。引っ張る額が大きくなるほど、真剣な顔と、多くのことばを費やせということだ。「そうだな」1時間後、タナカは力強くうなずいた。つまりこいつは、親に迷惑かけることより、自分が遊べる方を選択したのである。知り合いの金融屋に話を持ちかけると、あの土地なら3千万貸せますよと言ってきた。

「じゃあ、2千万借りちゃおうか。利子払うからオレにもそこから貸してよ」

もはやオレの言いなりだ。タナカは親に内緒で土地と家の保証書と実印を持ち出し、2千万円を借り出した。本人とオレが800万、コバヤシが400万取り、オレとコバヤシは毎月利子分を支払うという条件で又借りする形を取った。

こんな簡単にいくなら一度で済ますのはもったいない。と、同じ手口で他の金融屋からも500万引っ張ったら、さすがのタナカも、おかしいと気づき始めた。オレのいないところで「麻木さんと知り合って借金まみれになった」と、あちこちで言いふらすようになったのだっだが、オレにしてみれば願ってもない展開である。借用書なんか交わしてないのだから、悪口を言われたことを理由に付き合いを止めればいい。そうすりゃ利子分だって払わずに済む。この時点で、すでにコバヤシからも同様の手口で700万を引っ張っていた。半年足らずで懐に2千万弱が転がり込んだ。思った以上のシノギである。ちなみに、その後タナカの一家は土地と家を手放し、おまけに本人は脳溢血で倒れ半身不随になったそっだ。
この一件を機に、オレは本格的にパクってやろうと決心する。どう表現していいのか困るが、隙だらけの男たちがフィリピンパプにはうじゃうじゃいるのだ。仕事や家族より遊びを優先するものだから、大半がサラ金地獄にハマっている。そういう中から持ち家があり、オレの言いなりになりそうなヤツを選ぶ。
カヤマは、他の客や女のコたちが迷惑顔をしているのも気づかずへタな歌を何曲もがなりたてていた男で、一目見た瞬間に、カモだと悟った。さりげなく情報を集めると、自分で生命保険の代理店をやっており、見合い結婚した奥さんと2人暮らし。もうすぐ50になろうというのに、フィリピンの女性と結婚したいと真剣にいい回っているらしい。もちろん、ご多分に漏れずサラ金から300万ほどの借り入れがある。願ってもない相手だ。オレはヤツが熱を上げているマリーに接近、金を渡した上でオレを借金関係に詳しい金融アドバイザーと紹介してもらうことにした。

予想どおり、カヤマはすぐさまオレの話に乗ってきた。が現在の借金を返すことより、もっと金を貸してくれる業者を紹介してくれとさ。個人事業者とはいえ、保険の代理店は浮き沈みが激しいため、大手の金融機関はさほど貸してくれないらしい。まったく、この男の人生設計はどうなってんだと不思議に思うが、向こうがその気なら、話は手っ取り早い。とりあえずオレは現在の状況がどんなに厳しいモノなのかを大げさに嘆いてみせた。

アコムで30万しか借りられなかった?あんたの歳でそれじゃ、よそへ行っても絶対ムリだよ。もつと借りたいっていうけどいまの収入じゃ利子を払うだけで精一杯だろ。」ニコニコ笑っていたカヤマが、両手を膝の上に置いて真剣な顔つきになったところで、今度は甘い言葉をかける。

「オレの知り合いの金融屋に口をきけば借金分の300万ぐらいはなんとかなるよ。けど、それじゃつまんないよな。せっかくマリーといい感じになったとこなのに、平凡な毎日に戻るなんてできないでしょ」

こういって、その日はオレのおごりでパーと派手に飲み、マリーにもカヤマを買い物に連れ出すよう頼む。まとまった金がほしいと思わせるのだ。2週間後、カヤマの方から相談がきた。

「あんた、土地を持ってるじゃない。あれ、担保にすればサラ金よりグンと安い金利で金になる」

だが、土地も家も奥さん名義だから、すんなり承諾するとは思えないという。おっと、女子供の説得はオレの得意分野だ。そんなのは、あんたがオレ宛の借用書を書いてくれれば問題はない。貸出期日を分け、計1000万になるよう3枚の借用書を作りさっそくカヤマの家に乗り込む。

「奥さん、旦那さんが遊んでるのは薄々気づいてたと思うんですが、実は大変なことになっちゃってるんですよ」

オレは、店で知りあったカヤマに善意で金を貸した広告代理店の社長という設定。

「絶対、返せるっていうから無利息で金を貸したのに、旦那さんは返せないって言うじゃありませんか。3日後までに都合がつかないと私の方も困るんですよ。奥さんもお腹立ちとは思いますけど、なんとかしてもらえませんか」

念のため、横でうつむくカヤマに向かって奥さんを誉め倒す。

「あんた、こんないい奥さんがいるのにナニ外人娘にうつつぬかしてんの。借金をきれいに清算したら、奥さんのためにもーからやり直しなさいよ」

最初は渋ってた奥さんも、オレが

「あの金がないと私の会社の社員10人の家族が路頭に迷っちゃうんですよ」と涙を流しながら頭を下げ続ければ、「わかりました」と落ちた。その足で知り合いの金融屋に一緒に行ってカヤマに500渡し、オレは残り500を例によって又借りだ。

このカヤマには後日談がある。3カ月ほど経ったころ、ヤツがオレをファミレスに呼び出したのだ。口調からして、ナニかあるのはピンときた。案の定、指定された店に行くと、カヤマの隣にどこから見つけてきたのかヤクザ風の男が座っでいる。要は、貸した500万を返せと脅してきたわけだ。まったく、これだからカモはどこまでいってもカモなのだ。やることが見え透いでいる。ヤクザを出せばオレがビビるとでも思ったのだろうか。

日頃、暴力団との接点などないカヤマだ。このサノと名乗るヤクザは金が目当てで、カヤマへの義理などないに違いない。こうなったらこいつを使ってもっ一儲けするか。ヤクザ風と2人で話をしたいからとカヤマを帰し、計画を持ちかけた。

「オレを脅したって一銭も金はでないよ。それより、一緒にあいつから金を引っ張らないか」
金で動くヤツは、おいしい話を振れば簡単に寝返る。

「オレが500万の借用書を書くから、それを渡して返したってことにしなよ。礼は折半ってことになってるんだろ。けど、あいつのは他で借金してるし、100万がせいぜいだろう」

サノがハンコの押してない借用書をカヤマのところに持っていくと、ヤツは案の定パニクった。そして、恥知らずにもオレに泣きついてきた。お前のことなんか知らないよ、と突き放しつつも、あそこへいけば20万、ここへ行けば30万になるだるっと街金を紹介する。もちろん、紹介のマージンと、サノから分け前の30万が入ったのはいうまでもない。