防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

身障者専用のステッカーの悪用にご注意

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まずは上のステッカーをご覧いただきたい。町中の駐車場やトイレなどでしばしば見かけるこの絵柄が、身障者専用という意味を持つことは誰でもご存知だろう。私がこのステッカーのアブない使い道を思いついたのは今から3年前、とあるデパートの駐車場でのことだった。その日、あいにく駐車場は満車状態で、空いていた場所は身障者専用の駐車スペースのみ。健常者の私には利用したくとも利用できない。そこへ1台のワゴン車が現れ、スンナリ空きスペースに駐車した。どうやら身障者が乗ってるらしい。ところが、ドアを開けて降りてきたのはどう見ても健常者の中年男性1人だけ。いったいどういうことだろう。首を傾げつつ目を凝らすと、窓ガラスに先のステッカーが貼られている。なるほど、あの男、ボランティア団体か養護施設か何かの関係者なのだろう。きっとデパート内の身障者を迎えに来たに違いない。と、思う一方でこうも考えた。

もしも仮にあの男が身障者と縁もゆかりもない人間だったとしたらどうだ。男はステッカー1枚によって身障者の関係者だと見なされているに過ぎない。ということは、あのステッカーさえ貼ってあれば、この私でも専用スペースに駐車が可能になるんじゃないか。他にも、例えば、駐禁の場所に路上駐車したとしよう。近所の住民も、このステッカーが貼られた車を警察には通報しにくいはず。キップを切られるケースは格段に減るに違いない。あのステッカー、どこで人手できるのだろうか。とりあえずボランティア関連の情報が集まっていそうな市の福祉課に連絡をとってみた。

「あれには何の法的効力もないんですよ」

「でもそのドライバーは堂々と車を停めていたし、駐車場の管理人も一言も注意しませんでしたよ」

「それは単に福祉に関して無知なだけですよ」

福祉課の男によれば、免除などの権利を得るためには、

「身障者駐車許可誕の取得が必要。が、一般人はそこまでの細かい法律を知らない。結果、あのステッカーに効力があると思い込んでしまうのだ」

という。ステッカー自体が無根拠なものなら、どれほど不正な利用の仕方をしても罪に問われることはない。むしろ私としてはその方が有り難いぐらいだ。

「で、ステッカーはそちらで発行してるんですか」

「いや、あれは公的機関のものじゃありませんから」

「どこで手に入ります」

「××福祉協議会という財団法人ですね」私がそれから間もなく、××福祉協議会の売店で身障ステッカーを購入したことはいうまでもない。ちなみに、値段は1枚200円だった。
身障ステッカーの効果は絶大だった。駐車禁止の標式を無視しても警察に通報されず、専用スペースにも車が止め放題。それまで駐車場に頭を悩ませていたのがウソのようだ。1カ月後、行きつけの飲み屋でこの自慢話をすると、みながみな口を揃えてき早つ。

「ゼヒ1枚わけてくれないか」「どこへ行けば買えるんだ」

予想以上の反響に、やがて頭の中にーつの企みが浮かんでくる。このステッカーを売れば結構な商売になるのではないか。もともと値段はー枚200円とタダ同然。売れなかったところで大して懐が痛むわけじゃない。試す価値は十分あるだろう。さっそく、私はブツを仕入れるために××福祉協議会へと赴いた。

「ステッカーを売って欲しいんですけど」「何枚でしょうか」「100枚ください」「えーそんなに?」「いや、実は僕ら自転車のツ―リングチームを作ってましてね。この絵柄がカッコイイから、チームのシンボルマークにしたいと考えているんですよ」

職員に疑いの視線を向けられながらも、どうにかこうにか購入に成功。あとはこれをどうやってさばくかだ。何か手頃な販売手段がないかと情報誌を読みあさっていたところ、××空港の近くで開催されるフリーマーケットの告知が目に止まった。まずはこの辺りで様子を見てみるか。

開催日当日、現地に到着すると、すでに100軒以上の店が並んでいた。主催者側によれば、約1万人の客が来る見込みらしい。私はステッカー1枚の値段を5千円に設定していた。売値が仕入れ値の25倍とは我ながら図々しいにもほどがあるが、そもそも値段などあってないようなシロモノ。いくらボッタくったところでかまいやしないだろう。ただし、その用途をポップなどで大々的に宣伝するわけにはいかない。使い方がヤバすぎるだけに、主催者側にバレたら追い出されてしまうのは必至。

多少売り上げが落ちても、興味を示した人問に口頭で説明するしかあるまい。ところが、実際にステッカーを売り始めてみると、客は怪評な顔で前を通り過ぎていくだけだった。足を止める人間など1人もいない。やはりこの売り方ではキビシイのだろうか。1時間ほどたったころ、サラリーマン風の男性が興味深そうな表情で声をかけてきた。「…あの、いったいこれ何に使うんですか」

「実はですね・・」

この男、30分以上も説明を聞いた後、ようやく納得した様子でステッカーを購入。が、この1枚に効果があった。男性がサクラの役割を果たしてくれたのか、背後に山のような人だかりができていたのだ。どうやらみな興味はあっても立ち止まりづらかったらしい。

「俺にも1枚くれよ」「私もください」これまでの不調がウソのようにステッカーが売れていく。結局、手持ちの100枚が3時間もしないうちに完売。私は1日にして50万もの現金を手に入れた。
これはボロイ、いや、ボロ過ぎる。本格的に商売を始めれば相当儲かるに違いない。ただ、もうフリーマーケツトは活用できないだろう。実は先日も主催者側に疑いの目を向けられていたのだ。第一、あんな風に公衆の面前で売ったりすればすぐにノウハウが知れ渡ってしまう。そこで、次に試したのがポスティングによる通信販売だ。

ノウハウ漏洩のリスクという意味では大差ないが、個人間の取り引きならどれほど儲かる商売なのかバレずに済むだろう。さっそく近所の印刷屋で投函用のチラシ5千枚を作成。文面は以下のとおりだ。

「どんな場所に車を止めてもキップを切られない夢のようなステッカーがあります。値段は1枚4800円。興味のある方は下記までご連絡ください」

客からの問い合わせを一々自分で受けるのもカッタルイ。受注はすべて電話代行業に任せることにした。

まず代行業者が購入希望者に商品の内容を詳しく説明。ステッカーは後日、代引き郵便で発送するというシステムだ。この方法なら郵便局員が自動的に料金を徴収してくれ、手間もハブける。あとは郵便口座に金が振り込まれるのを待つだけでいい。問題はその郵便口座だ。身元を明かさないためにも個人名ではなく法人名で入手したい。が、どうやって…。私は考えた挙げ句、郵便局の窓口にこう切り出した。

「私、ボランティア団体の代表の者なんですが、メンバーから会費を募るのにどうしても郵便口座が必要なんです」

「キチンと活動はしてますか」

「はい、もちろんです。私たちは身障者と共生できる社会を目指し、日夜活動に励んでます」ここであらかじめワープロ打ちしておいたデッチあげの活動報告と規約を提出。一か八かの賭けだったが、なんと局員は疑いもせずに郵便口座を作ってくれるではないか。

チラシを配布する地域は自宅付近だけに限定する必要はない。こうして、私は全国各地に50名のポスティング要員を確保。スタンバイOKだ。
問い合わせは、日が経つにつれ徐々に増加。3カ月後には、1日平均20件の注文が入るまでなった。ただ、ステッカーの仕入れには苦労を要した。なんせ購入は100枚単位だから、すぐに面が割れる。知人という知人を使い尽くし、しまいには親兄弟まで駆りだした。

しかも、バイト連中が勝手気ままにチラシを配るせいか、受注の波が恐ろしく激しい。50件60件と注文が入ることもあれば、問い合わせ自体がゼロなんて日も少なくなかった。調子よかったのも最初のうちだけ。あまりのクレームの多さに、代行業者の方がとうとう根を上げてしまったのだ。

「ふつうのお客さんはー日2、3本程度の電話が入るぐらいなんですよ。申し訳ありませんが、これ以上苦情が続くようだと、契約を解除させてもらいますからね」

そこへ追い打ちをかけるように、代行業者の元へ1通の手紙が送られてくる。

「貴社の広告は明らかに社会的道義に反しています。当方は改善を強く要求いたします」

テレビCMでお馴染みのJARO(日本広告機構)からの警告状である。本来なら法的権限を一切持たないこんな紙切れなど無視すりゃいいのだが、代行業者には絶好のチャンス。結局、契約は強引に打ち切られてしまった。

※この記事は防犯、防衛のための知識としてのフィクションです。読み物としてお読みください。実行されると罰せられるものもあります。