防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

個人情報はいくらでどうやって売られているのか

生年月日、住所、電話から趣味趣向に至るまで、個人のプライベートな情報が金になるのは今や常識だ。拡販、個人調査など情報を購入する側の目的は様々だが、需要あるところに供給ありは、どの世界でも同じ。ここでは、個人情報をめぐる市場の実態について探ってみよう。
我々が個人情報の流出を身近に感じるのは、身に覚えのない会社からダイレクトメールが届いたときだろう。

「キャンペーン実施」「無料体験できます」などといった宣伝文句につられ封を開けると、肥満女性にはダイエット商品、受験生には予備校の勧誘や教材、お金に困っている人にはサラ金の案内と、なぜかニーズに一致しているから不思議。もちろん、それは偶然じゃない。一度でも通販で類似商品を購入すれば、関心アリとして企業の顧客名簿にデータ入力され、さらにそれが名簿屋を通じて他企業に流出、結果として本人にはワケのわからないDMが届けられる、という仕組みだ。

送られた側には気持ちのいい話じゃないし、中にはプライバシーの侵害だと憤慨する人もいるだろう。顧客リストなんてカワイイもん。私のところには、どんな名簿でも入ってくるというのは関西で名簿屋を営む田中征一氏(41才、仮名)だ。

何でも氏の元へは、豊胸剤ガルクルアを買った胸の小さな女性、多重債務に陥った25才未満の女性、年収2千万以上の社長夫人など、使い道は想像に難くないリストが次々に届けられているという。こちらから働きかけなくても集まるんですよ。長い間やってると信用もできるしね。ついさっきも通販会社を辞めた人間から1万2千人分の顧客リストの売り込みがあったよ。値段?そうねえ、ー人頭3円ぐらいか。田中氏は基本的に、名簿の買い取り価格を3段階に分類している。
学校の卒業名簿など入手がそれほど難しくないものがー人頭3円。

リゾートクラブ名簿などやや付加価値が付いたものでー人頭5円。

クレジットカードのうち、企業の社長などが持っているゴールドカードの顧客リストになると、ー人頭10-20円で買い取るらしい。

わかりやすく言えば、入手が困難でリスクを伴うリストほど高い。例えば、腎臓や肝臓などに疾患を持つ患者のリストだ。大半が病院関係者から持ち込まれ、冒い取り価格は明かせないものの、100人前後のリストで売りの相場がなんと500万。購入していくのは、これまた病院関係者、そして臓器フローカーと呼ばれる連中だという。

後者はまだしも、病院がなぜそんなリストを欲しがるのか疑間に思うが、氏によれば、3日おきに人工透析を受ける患者は同額のアガリ(治療費)が計算できる、病院にとっての上客。そこで、リストに載った患者たちに、今いる病院より安い治療費で面倒みますからウチに移りませんか、と営業をかけるというのだ。

あと高いのはVIP絡み。これなんかー冊100万円で売れるから。そう言って田中氏が見せてくれたのは、複数のSMクラブ名簿からVIP会社社長など社会的地位の高い人間ばかりを抜粋したリスト。全部で50名は載っているだろうか。

SMクラブってのは、ある程度危険なプレイになると、豊客に身分証明入りの承諾書を書かせることがあるんだよ。万が一プレイ中に死んじゃったらシャレにならないからね。」

外に出回るのは、そつしたリストだ。SMが好きな社長の名簿に、どんな価値があるのかは、聞くだげヤボといっもの。たとえ、それがユスリ、タカリに悪用されようと田中氏は「私には無関係なこと」という。

「とにかく、その手の名簿は高いよ。一つには、宗教団体の信者のリストとかしょっちゅう流れてくるけど、その中には、手術に失敗して患者を殺してしまったから、なんて入信の理由が書いてある医者が入ってることもあるんだよね。もちろん、それだけじゃ大したことないけど、他に反社会的な団体に所属しているVIPを合わせて何十人の名簿となれば価値は出る。これもー冊100万円で売れてった。
なかなか手に入らない多重債務の女性のリスト田中氏によると、名簿の売値は相場があってないようなものだという。

「切羽詰まった状況で、一刻も早く特定の名簿が欲しいと言ってくるような客には、買い取り価格の10倍以上で売りつけることもあるよ。」

まあ相手しだいだきとはいえ、名簿の売値が、鮮度によっても変わるだろうことは素人にも想像が付く。基本的に新しいものは古く、逆に古いもの、すなわちすでに何度も使われた名簿は価値も下がるはず。ところが、これも売り方しだいで、まったく新しい名簿に化けてしまう。「例えば、有名女子校の卒業アルバムを入手したとするわな。その子たちが20才になるころには成人リストとして使えるし、24、25才のころには一適齢期の女性リストとして再生できる。着物業者なんかにはヨダレが出そうなリストだよ」

こうして、田中氏は自分の会社に持ち込まれる名簿を系統ごとに分類、「カラオケ愛好家」「水商売の女性」「もうすぐ結婚」など、独自のリストを作り出し金にかえている。こうした特殊なリスト作りに重要な役割を果たすのが、街頭アンケートなどで取られた個人データだという。あれは、個人情報の収集が目的だよ。粗品をわたせば、住所や名前・年齢・電話・趣味、年収家族構成とか、何でも答える人がいるからね。それがウチにも流れてくる。まあこっちとしては、そこから生活パターンや経済状況まで覗けるから、ありがたいんだけどこの他モラルの薄い不動産業者から流れる賃貸契約・ビデオレンタル業者から持ち込まれるレンタル履歴付きの会員リストなども重宝するという。

例えば、レンタル履歴を見ながらAVばかり借りているユーザーを集めれば、それだけでリストが作り出せてしまう。実際、見も知らぬ裏ビデオ業者からDMが送られてきたりするのも、レンタル屋が流したリストが元になっている例も少なくないのだ。

「延滞したまま返さないビデオレンタル会員のリストなんてのも持ち込まれることがあるよ。こんなの、悪用しようと思えばいくらでもできる。」まさに、手に入らないリストはないといった田中氏だが、そんな彼にもなかなか入手できないものもあるとい、2多重債務に陥ったに若い女性のリストだ。

「借金だるまで風俗やAVで仕事しそうな女の名簿だよ。普通なら、ヤミ金あたりから流れてきても良さそつだと思っだろ。でも、これが簡単には手に入らない。っていうのは、ヤミ金業者自体が副業で風俗店を経営してるケースが多々あって、なかなか外に出さないんだよ。自分たちだけのシノギにしようってことなんだろな。だから、もしこの手の名簿があれば、1人頭200円以上は堅いだろうね」
個人情報のマーケットに出回るのは名簿ばかりではない。

以下、売買の対象とされるアイテムを順に見ていこう。

まずは「電話番号」。これは、スボーツ紙やタ刊紙などに「電話番号から住所・氏名割り出し」「携帯番号から名義人調査」といった三行広告がよく載っているから、ご存知の方も多いだうつ。そのカラクリが電話会社員の協力によるものということは今さら言うまでもなく、大半の業者が、直接電話会社にコネを持っている大元の業者に加盟料を支払っている。末端の業者になるほど仲介料が加算され料金が高くはなるが、調査内容に変わりはない。
興味のない人間には何の価値もないが、特定の個人にとっては重要な価値を持つ情報というものもある。関東在住の便利屋、太田博文氏(仮名、38才)は3年前、こんな調査依頼を受けた。

日本テレビの女子アナNについて、自宅の住所や電話を調べてほしいというんですよ。依頼してきたのは20代のサラリーマンで、それだけで50万円出すと。こりゃオイシイと思って、すぐ引き受けました。太田氏はまず、書店で売られているアナウンサー名鑑から彼女の出身大学と学部を調べ、知り合いの名簿屋から、その大学の卒業者名簿を入手した。
「名簿には、実家の住所と電話番号が載ってるでしょ。そこから当たろうと思ったんですよ」

首尾よく彼女の実家の番号を入手した太田氏は「同窓会を開きたいから」という口実を設け、女子アナの親から現在の住所、電話を聞き出すことにした。が、そんな怪しげな電話に、親が娘の情報を教えるわけがない。ましてや、彼女は当時、アイドル並のアナ。親も相当、敏感になっているはずだもちろん、それぐらいのことは太田氏もわかっている。そこで、彼はこう切り出した。

「私、大学でNさんの後輩だった××と申しますが、今回同窓会の件で私が担当になりまして、皆さんに連絡を取ってるんですが、実は皆さんの住所のリストなどの資料を私の不注意でなくしてしまいまして、お恥ずかしいんですが、今一軒ずつご実家の方に電話を差し上げてるんですよ。大変申し訳ないんですが、Nさんのご住所と電話を教えていただけないかと思いまして」

もっともらしい言い方だが、これで親が信用するとは思えない。
しかし、実は太田氏、このために恐るべき工作を。

「信用させるために会場や場所も言ったんですが、確認されてもいいようなあるホテルに大学名で予約しました。あと、人に確認を入れること。実家にかける前に他人にも同じ内容の電話をきこうとすれば、本人が怪しんで他のコに聞いたとしても、会が開かれるもんだと思うでしょ」

ところがその女子アナの母親は疑うこともなく、その場で住所、電話番号まで教えてしまったのだ。依頼人に数えたら55万円持ってきました。ところに供給と場合によっては、どんな個人情報でも大金に化ける。