防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

貧乏画家の功名心を手玉に取る手口

私は油絵を専門に描く貧乏画家だ。みなさんには程遠い世界だろうが、この業界にも若者の功名心を手玉に取る人間というのがいる。その一例を紹介しよう。

以前、私の作品がとある美術雑誌に載ったところ、自宅にー通の手紙が届いた。差出人はA美術通信社。美術系の各種イベント開催や会報誌の発行などを行う、この世界ではそこそこ有名な団体である。

「国内外の美術評論家の協議の結果、評議会の会員にあなたが選ばれました」

手紙によると、特別に選ばれた私は、月々7千円の会費を払って会員になるだけで海外の展示会に優先的に参加でき、また世界で発行されている世界美術雑誌にも作品を掲載することができるという。画家にとって、海外での作品発表は非常に喜ばしい。

月々7千円で世界進出できるなら安いもんだと、私はすぐに会員になった。

すると

アメリカの同盟の理事長が、どうしても世界にあなたの作品を発表させたいと言っています。日本の美術界の新人であなたを省くわけにはいかないので」との話。彼らが言うのは、要するに20万ほどのお金を払ってその理事長にうまくしてもらいなさいということだ。長い下積みから少しでも早く抜け出たいという気持ちからOKしたところ、無事、雑誌には理事長が書いた評論が載ったのだった。これでハクが付いてなんとかなるのではと思っていると、今度は展示会出展の詰。

「本を見た外国の美術界の方から、是非わが国で発表してほしいとの依頼がきています。」

いろんな国で開かれるため、参加費用は全部で100万以上にもなるが、ここまで来れば後には引けない。私は借金で作った金を振り込んだ。すると後日、また翼肋が。「理事長が企画していてアメリカで発表したいとおっしゃっている。参加費用は25万円ですが、理事長のお墨付きをもらえるんだから安い買い物ですよ」

さすがに100万以上の出費があった後の25万はキビシイ金額。そこで私は理事長に直接お詫びのFAXを送ったのだった。

「せっかく、推薦していただいたのに申し訳ございません。25万円が用意できませんのでまたの機会にお願いします」

と理事長の返事は

「何のことでしょう。展示するだけなのにどうしてそんな費用が必要なのですか」と、さっばり事情が飲み込めていない様子だったのだ。評論も展示も、本来は何もしなくても実現したことだったのである。この世界は不透明なことが多い上、名を成すのは大変な苦労。さらに画家といっのは驚くほど純粋である。A美術通信社はそこをうまく突いていたのだ。