防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

ボッタクリ暴力バーに入ってしまったらどうすればいいか

ほろ酔い加減でホステスの隣に座った途端、「はい、4万円です」の声。

驚いて高すぎると反論すると、強面のお兄さんが出てきて

「払うまで帰さねえ。言葉どおり朝まで監禁されているうちに、いつのまにか4万か数十万円に釣り上がっていて、結局、全額脅し取られてしまう。こんな恐ろしい暴力バーが、墓呆・新宿の歌舞伎町で相次いで摘発された。抵抗した客が死亡する事件にまで発展することさえあるボッタクリの実態とは。

監禁のチャージ料も加えて35万
「社長、7千円ボッキリだよ」調子のいいポン引きの誘いに乗り34才の会社員が、その名も愛らしい店に入ったのは去年8月、終電も間近い午前0時のことだった。雑居ビル内の店のドア前で、「前金」と促すポン引きに約東の7千円を渡す。中に入るとソファとテーブルがそれぞれカーテンで仕切られており、ピンサ口を思わせる作り。照明もほとんどなく、いかにも怪しい雰囲気だ。入り口のドアが半分しか開かず、ボン引きと一緒に身体を斜めにしてすり抜けるように入ってきたが、考えてみればあれも何だかおかしい。しかし、そう思ったときにはすでに遅かった。隣に座った厚化粧のホステスはテーブルにウイスキーグラスを置くなり、こう言った。

「4万円です」酔いがいっぺんに覚めた。屋っただけで4万なんて」

「さっき7千円払ったばっかりじゃないか。オレ帰る」

精一杯反論を試みると、途端に見るからにヤクザ風の男2人が力ーテンを開けて入ってきた。

「ふざけんな。この店はこういうシステムなんだよ。金がねえだと。財布見せてみろ」2人が顔を近づけてきてすごむ。こうなっては、もうダメだ。五体満足で帰るには、言いなりになるしかない。客が弱気になると、男たちのボルテージはさらに上かる。
「払うまで帰さねえかりな」

「キャッシュカードがあるじゃねえか。銀行が開いたらこれで払え」

結局、この会社員が解放されたのは翌朝9時過ぎになってからだった。男2人に連れられ銀行のキャッシュコーナーに行き、開くと同時に飲食代35万円を支払わせられた。4万から金額が高くなっているのは、監禁状態だった9時間分のテーブルチャージ料か加算されたからだ。

この店では、大手都市銀行に勤める30代の幹部候補生も被害に遭っている。同僚と一杯やっていた銀行マンが、相棒が先に帰った後もー人残って歩いているうち、前述のポン引きの口車に引っかかってしまったのだ。

相棒の方は、翌朝、定時どおり出勤したが、一方はタ方になりもうろうとした状態でやってきた。呆けた表情の彼が言うことには財布かりキャッシュカードを抜き取られ、なんと80万も下ろされてしまったという。おまけに銀行員として分別がないと評価されたのか、哀れこの銀行員は地方に飛ばされてしまったのである。
これらの被害を生んだ店の経営者、H容疑者(37才)が恐喝の疑いで警視庁保安課に逮捕されたのは今年4月20日のこと。調べが進むに連れ驚くべき脅しの手口が次々と明らかになってきた。店が風俗営業法の営業許可を取ったのは一応「バー」という名目だが、最初からボッタクリが目的だったという。従業員は、男3人にホステスが7人。日曜が定休で、ー日平均30-50万円の売上があったそうだ。H容疑者は、従業員に徹底的に教育をしていた。契約のポン引きに「ネクタイをしているサラリーマンで、ー人で歩いている奴」をターゲットとするよう指示し、脅し役の従業員には「強く反発してくる客は所持金で払える分だけ。言いなりになった客からは翌朝、キャッシュカードで支払わせる」と伝えていた。全額取らず残高が30なら20、80あれば60万を下ろし武士の情けと恩を売る。
さらに、客には明細書を渡さないまでもテーブルチャージがいくら、サービス料がいくらと説明し、念を押す、形だけでも納得したとの言質を取り、客が警察沙汰にしにくいよう考えた。もちろん店のドアが半分しか開かないようにしたのも、いざという場合を想定してのことだった。それだけでなく、従業員はまず、姉妹店でボッタクリの訓練を積んでいたという。

「殴ると強盗になるので口で脅す」

「客に自分が口論のきっかけを作ったと思わせるため、最初から強い言葉を出さない。相手が反発したら初めて相手より大声を出す」

などなど、基本をマスターして初めて歌舞伎町の本店にデビューするシステムだった。こうした教育により、いかに効果的な脅しが行われていたかは客のビピリ方が物語っている。といっのも、警察手帳を示しながり警視庁の保安課員と新宿署の私服警官が踏み込んだとき、店内にいた4人の客はホッとするどころか、ますます硬直してしまったのだという。外に出なさいと言ってもお客は引きつっちゃって動こうとしないんだ。後で聞いたら、ヤクザが加勢に来たと思ったらしいな」客たちが恐る恐る店外に出たのは、制服の警察官が店に入ってきてからのことだった。
今年2月に摘発された歌舞伎町も、強引なことでは一歩も引けは取らない。マスターの容疑者(35)ら5人が逮捕されたが、こちらの逮捕容疑は恐喝ではなく強盗なのだ。調べによると、容疑者らは今年ー月中旬、やはりポン引きに連れられて来た21才の会社員かりキャッシュカートを奪い、15万円を勝手に下ろしてしまったという。5500円と言われ会社員が店に入るとホステスが4人つき、それぞれ力クテルを注文。会社員が梅酒を飲んだところで容疑者が登場、「入店した時点で会費3万、ホステスの飲み代を含めて料金は15万」と言い出した。

「オレ3万円しか持っていないよ」会社員がそう言って立ち上がろうとすると、襟首をつかんで強引に座らせる。そのころには目付きの悪いのがもう2人加わり「3万じゃ足らねえよ。こんなに遊んで金を払わないとはどういうことだ」などと大声を出し始めた。容疑者らは、「ふざけんな。金を払わないと帰さねえぞ」などと言いながら、会社員にはハサミを突き付け、足を蹴ったり顔面を平手打ちしたりと、もうムチャクチャだ。金でもキャッシュカードでも渡す他ない。暗証番号を聞かれて黙っていることなどできるはずもない。ようやく店外に出ても、交番に駆け込まないよう、すぐうしろを従業員が電車に乗るまでついて来る。これがこの店自慢の"アフターケア"で、客が強引に交番に駆け込もうとすると「さっきの金額は間違いだった」とひょう変、金を半分返していたという。朝の7時から店を開け、ターゲットにしていたのは夜どおし歌舞伎町で遊びフラフラになっている客だった。
しかも、ー日平均160万円もの荒稼ぎをしていたというのに被害届を出したのはたったの4、5人といつから驚きだ。通報して摘発のきっかけとなったこの会社員も、岩手県からの出張組で、仕事を終え飲み明かしていたのだという。朝の明るい光の中でもボッタクリは行われているのである。サービスを受けた客は被害届を出さない前記の2店は主として口と腕力にものを言わせていたが、もっと恐ろしいのは薬物を使う店だ。わざと濃い水割りを作って睡眠薬などを混入する。もともと酔っ払っているから少々味がおかしくてもさっぱりわからない。その上、ホステスがグラスに手を添え強引に飲ませたりする。前後不覚になってしまえば、後はやり放題。現金を抜き取り、キャッシュカードをあさり、ロレックスでもしていればそれも頂く。免許証や手帳を見てカートの暗証番号にしていそうな誕生日や電話番号などをいくつかメモれば本人に用はない。従業員が裏ロからお車に積み込み、人気のないところで放り投げ一丁上がりだ。

こういう店に引っかかったら、命があっただけで幸せと思わなければいけないかも知れない。実際、去年7月に摘発された店では、法外な料金請求に怒った43才の客が店内で殴られた上、駐車場でひき殺されるという事件が起きている。その他この店では、熟睡中に預金から1500万円を勝手に引き出された客もいた。

保安課によると、こうしたボッタクリ店は歌舞伎町に数店ある他、池袋、渋谷、上野などでも苦情や被害届が出ているという。いずれにせよ捜査の端緒は、大部分が被害に遭った客からの通報だ。が、被害の多さに対し、摘発に結び付くような被害届や110番通報は少ないのが現実だという。つまり、ほとんどの被害者が泣き寝入りしているのである。なぜ、こんなひとい目に遭っても黙ってしまうのか。まず最初に挙げられるのは、被害者自身が後ろめたさや恥ずかしさを感じている点だ。酔いが覚めれば「ああ、バ力なことをしてしまった」と、後悔で居たたまれないのが普通だろう。それを、わざわさ警察沙汰にして根掘り葉掘り蒸し返されるのは誰だって嫌だ。結局、高い授業料だったが、今度からは気をつけようと無理矢理納得してしまう。第二には、店の料金設定の問題もある。摘発された店の料金はべら棒だったからこそ摘発されたのだが、いくらボッタクリでもここまで吹っかける店はむしろ少ない。普通の良心的といつか、ずる賢い店は「30分で3万」とか「水割りー杯ー万」などといっ微妙な金額を言ってくる。その上、ホステスたちが超ミーースカートを少しめくってみたり、手を取って太ももに導乏らいのサービスもする。どうだろう。二度と来るもんかとは思っても、高すぎるから払わないとコトを荒立てる気までは起きにくい。

「まったくサービスを受けていない客は強気で、サービスの程度が上がるにつれて客は弱気になりオッパイを触った客は15万円ボラれても被害届は出さないよ」とは、捜査員の話だ。また、通報を受けた警察官が被害者とその店を探しに行っても、容易には見つからないという現実もある。客は酔ってる上、店も看板なと出してないからだ。

では暴力バーに入らないで済む方法はあるのだろうか。警視庁保安課によると、ボッタクリ店から身を守る最大にして唯一の方法はポン引きについて行かないことだという。ポン引きを雇っている店は要するに、黙っていては客が来ない店。だいたい6、7千円でいいコがいっぱいいれば繁盛していてポン引きなんか使わない。油断ならないのは、最近多い、可愛い顔したキャッチガールだ。彼女らの典型的な手口は、終電がなくなるころ歌舞伎町の入り口辺りでカモを物色「ヤダ、電車なくなっちゃった。ちょっと飲み直さない」と声をかける。突然のうれしい申し出に、とまどいつつ「じゃ行くか」などとニヤけたら一巻の終わり。

彼女のリクエストでボトルを入れれば、そのー本が10万。支払う段になってマスターともめるころには、彼女の姿はすでになく、店からもらった七、八千円を手にゲーセンで遊ぶというわけだ。

暴力バーに入ってしまったらどうすればいいか。実は妙案はない(被害を最小限にとどめることだけに集中し、解放されたら直ちに交番に駆け込むしかない。