防犯対策・詐欺の手口

実際にあった詐欺の手口や事件、犯罪者の告白です。防犯対策・防衛のための知識としてお読みいただければと思います。

他人の住民票を勝手に異動し国民健康保険証を交付させサラ金からキャッシングする詐欺事件

大阪でこんな事件があった。

中学時代の友人になりすました暴力団組員(28才)が勝手に住民票を異動し、国民健康保険証を取得。これを身分証明書としてサラ金から現金25万円を編し取り、大阪府警に逮捕された。アシがついたのは、この暴力団組員が自分の寝泊まりしているアパートを転出先として届け出ていたためだが、勝手に名義を使われた友人はそれまでまったく気付いていなかったという。

他人の住民票を勝手に異動、転出先の役所で国民健康保険証を交付させ、サラ金からキャッシングしまくる詐欺事件がー年ほど前から多発している。国民健康保険証が身分証明書として機能しているのに対し、発行する自治体のチェック体制が甘い点を突いた新手の犯罪である。知らない人も多いと思うが、住民票は氏名、生年月日、住所、本籍がわかってさえいれば、第三者でも用紙ー枚で簡単に異動可能だ。役所は疑うことなく手続きを進めてしまう。年齢の近いア力の他人に本人を装って申請されれば、役所側はそれこそお手上げなのだ。

こうした流れに、住民票異動の際に身分証明書の提示を求める自治体も出始めている。が、それは各自治体の判断に任され、国が指導しているわけでもなければ、それを理由に手続きを拒める法的根拠もない。つまり、役所は異動申請があれば結局受けざるを得ないのである。その結果、第三者が本人を装って別の自治体に転出し、そこで新たな国民健康保険証の交付を受け、他人名義で堂々とキャッシングするというマンガ的な詐欺が成立する。そして、それは本人が気つかない限り、まず発覚しない。
国民健康保険証取得とはいかなるものか。以下にその手口を詳しく見ていこう。まず役所に備え置かれている住民異動届に氏名、生年月日、いままでの住所\転居先の住所、本籍などを記入する。印鑑は三文判でも可。家族全員を異動するとなれば子供の生年月日なども必要だが、独身のー人住まいであれば問題ない。実際の多くは独身者が狙われている。異動届を窓口に提出すると、職員が記載事項などをチェック。該当の住民と登録内容が一致すれば、役所は転入先の自治体に提出する転出証明を発行する。こうして入手した、他人の「転出証明書」を新しい自治体の役所の窓口に提出、転入手続き(要領は転出時と同じ)を取れば、あとは保険年金課の窓口に行き国民健康保険証の交付申請をするだけ。この一連の作業で、何なく他人の保給証が取得できるのだ。と、ここで疑問に感じるのが、古い保険証の存在である。異動届を提出した際や、新しい保険証を交付する際に古い保険証の返却が義務づけられていれば、他人が勝手に住民票を異動することなと不可能のように思える。実状をいえば、役所も「転出証明書」を発行する際には古い国民健康保険証の返還を求める場合もある。が、「後日郵送する」「紛失して警察に届けた」などと言えばそれで通ってしまうのだ。一方、新保険証の交付時には、前の自治体で使用していた国民健康保険証が返還されているか、一切確認されないシステムになっているというかり驚きだ。役所の考え方としては、新たな自治体で国民健康保険証が交付されれば、自動的に前の国民健康保険証は使えなくなってしまうので、それに対して保険料がかかることもない。つまり“虚移転“によって取得された国民健康保険証こそが、その名義人の正規の保険証として機能し始めるため、紙キレ同然になった前の保険証など問題ではない、というわけだ。もっとも、役所側にしてみれば保険証が不正に取得されるなど、これまでは考えもしなかったことだろう。某自治体の住民課幹部は次のように言う。
「ほとんどの人は正規の手続きを取って国民健康保険証を取得するし’虚移転“なんて1万人に1人もいない。役所としては転出証明書さえ提出されれば、本人が正規の手続きを取ったものとして、受け付けてしまう。前の保険証を返したかという証明なんて求めないし、それを調べるような連動体制も整っていない。保険証の返還に関して役所は回収漏れの統計も取っていない。他人名義の国民健康保険証を取得する際に前の国民健康保険証を提出する義務がないのだから、本人の預かり知らぬところで勝手に新たな保険証を発行されても何ら不思議ではないのだ。
まだまだアマイ本人確認、役所の防御策としては、転出届を受け付ける際に本人か否かを確実に見破るしか手がないが、これに1番早く取り組んだのが神奈川県川崎市で、身分証明書の提示などを求める(本人確認)を実施。続いて横浜市も本人確認を導入している。この結果、横浜市都筑区役所では虚偽転入しようとした無職の男が職員に見破られ、現行犯逮捕されるなどの効果も出てきた。が、この無職男の場合、以前にも不正を働いた前歴があったにもかかわらず、性懲りもなく同じ区役所で別人の虚偽転入を申請したのか逮捕のきっかけ。もし、別の区役所に出向いたり、別の職員が受け付けていれは、何なく虚偽転入できたかもしれない。

というのも本人確認には免許証、保険証、パスポートなどの身分証の提示が求められるものの、それがないと書類が受理されないというわけではない。本人か「今日は持っていない」と言えば、よほど不審でもない限り、手続きは通常どおり進められてしまうのだ。と、このように本人確認を実施する自治体が現れはじめたとはいえ、そのチェック体制はまだまだ甘いが、こと名古屋においては、以前より不正防止のため厳しい本人確誌が行われている。異動届を受理する際に身分証明書の提示を求めることははもちろん、確認できなかった場合は、わざわざ職員が届出に記された住所まで出向き、もしそこに住人がいれば、転出届が出された旨の通知書をポストに投函。そこで、該当する住民から「そんなモノは出していない」と通知があれば、転入先の市町村住民課に連絡し、「〇〇という人間が行っても受け付けないでくれ」と要請する。また、転入してくる人間に対しても保険証は即日交付せず、転入先として届けられた住所にハカキを出し「このハガキを持参の上、役所まで取りにきてほしい」と通知。どうしてもその日に保険証が欲しいという人には、職員がその家まで行って力ギが開くかとか、表札や駐車場を見て本人であることを確認してから交付する徹底ぶりだ。確かに、ここまでやれば、防けるだろう。が、名古屋このやり方は例外中の例外。東京23区では、「一握りの悪人のために善良な市民まで疑うのはおかしい」との考え方か主流だし、大阪も「市民を信用する」とし、三文判で転出届を受理している。どちらの考え方が正解かはさておき、現状では本人確認はまだまだ徹底されていない。今後も不正に他人の保険証を取得し、サラ金をパクる輩が出現する可能性は十分あるだろう。